「〇〇を美術館に寄付する。具体的な遺贈先の選定は、遺言執行者に任せる。」という遺言がある場合、遺言執行者は、どのように業務を行えばよいのでしょうか。
遺言の解釈
遺言の執行に当たり、遺言の解釈が問題となることがありますが、その時点では遺言者は死亡しておりその真意を確認することはできません。
そこで、遺言の解釈に当たっては、遺言に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきですが、可能な限りこれを有効とするように解釈することが遺言者の意思に沿うこととなります。そのためには、遺言を解釈するに当たって遺言の文言を前提にしながらも、遺言者が遺言作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許されるものというべきであるとされています
したがって、「〇〇を美術館に寄付する」という遺言についても、遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮して解釈することになります。
そこで、遺言の解釈に当たっては、遺言に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきですが、可能な限りこれを有効とするように解釈することが遺言者の意思に沿うこととなります。そのためには、遺言を解釈するに当たって遺言の文言を前提にしながらも、遺言者が遺言作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許されるものというべきであるとされています
したがって、「〇〇を美術館に寄付する」という遺言についても、遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮して解釈することになります。
受遺者の選定を遺言執行者に委託する内容の遺言
内容を確定できない遺言は無効となります。
受遺者の選定を遺言執行者に委託する内容の遺言については、かつては、受遺者が具体的に選定されておらず、無効とした裁判例もありましたが、上記最高裁平成5年1月19日判決は、「全部を公共に寄付する」とし、受遺者の選定については遺言執行者に委託した遺言について、「本件においては、遺産の利用目的が公益目的に限定されている上、被選定者の範囲も前記の団体等に限定され、そのいずれが受遺者として選定されても遺言者の意思と離れることはなく、したがって、選定者における選定権濫用の危険も認められないのであるから、本件遺言は、その効力を否定するいわれはないものというべきである。」と判時し、当該遺言を有効としました。
このように、被選定者である受遺者の範囲が限定されており、選定者である遺言執行者における選定権濫用の危険が認められない場合には、受遺者の選定を遺言執行者に委託する内容の遺言も有効であると考えられます。
「〇〇を美術館に寄付する。具体的な遺贈先の選定は、遺言執行者に任せる。」という遺言については、受遺者は具体的に特定されていませんが、受遺者の範囲は「美術館」に限定されており、遺言執行者による受遺者選定権の濫用の危険は認められないと考えられます。
したがって、かかる遺言がある場合、遺言執行者はかかる遺言は有効であることを前提に、自らの裁量により遺贈先としてふさわしい美術館を選定し、受託意思を確認の上、寄付を行うことになります。
受遺者の選定を遺言執行者に委託する内容の遺言については、かつては、受遺者が具体的に選定されておらず、無効とした裁判例もありましたが、上記最高裁平成5年1月19日判決は、「全部を公共に寄付する」とし、受遺者の選定については遺言執行者に委託した遺言について、「本件においては、遺産の利用目的が公益目的に限定されている上、被選定者の範囲も前記の団体等に限定され、そのいずれが受遺者として選定されても遺言者の意思と離れることはなく、したがって、選定者における選定権濫用の危険も認められないのであるから、本件遺言は、その効力を否定するいわれはないものというべきである。」と判時し、当該遺言を有効としました。
このように、被選定者である受遺者の範囲が限定されており、選定者である遺言執行者における選定権濫用の危険が認められない場合には、受遺者の選定を遺言執行者に委託する内容の遺言も有効であると考えられます。
「〇〇を美術館に寄付する。具体的な遺贈先の選定は、遺言執行者に任せる。」という遺言については、受遺者は具体的に特定されていませんが、受遺者の範囲は「美術館」に限定されており、遺言執行者による受遺者選定権の濫用の危険は認められないと考えられます。
したがって、かかる遺言がある場合、遺言執行者はかかる遺言は有効であることを前提に、自らの裁量により遺贈先としてふさわしい美術館を選定し、受託意思を確認の上、寄付を行うことになります。
参考事例
「全部を公共に寄付する」旨の自筆証書遺言について、遺言書の文言全体の趣旨及び遺言書作成時の遺言者の置かれた状況からすると、遺言者としては、自らの遺産を法定相続人に取得させず、これを全て公益の目的のために役立てたいという意思を有していたことが明らかであり、遺言者が、遺言書において、あえて「公共に寄付する」として、遺産の帰属すべき主体を明示することなく、遺産が公共のために利用されるべき旨の文言を用いていることからすると、本件遺言は、かかる目的を達成することのできる団体等にその遺産の全部を包括遺贈する趣旨であると解し、有効とされた事例(最判平5・1・19)
まとめ
遺言の解釈にあたっては、遺言の文言を前提としながらも、遺言者が遺言作成に至った経緯及び置かれた状況を考慮することも許されます。そのため、受遺者の選定を遺言執行者に委託する遺言も、被選定者である受遺者の範囲が限定されており、選定者である遺言執行者における選定権濫用の危険が認められない場合には有効と考えられます。遺言の執行についてが、専門家である司法書士などへ相談されることをお勧めします。当事務所は、相続や遺言など多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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