被相続人の財産に生命保険契約の満期保険金がある場合、遺産分割の対象となるのでしようか。また、管理・承継に当たってどのような点に注意すべきか解説します。
満期保険金の相続財産性
養老保険などの貯蓄型の保険では、被保険者が保険期間内に死亡したときは生命保険金が、保険期間満了時まで生存していたときは満期保険金が各支払われ、保険契約者は保険金の受取人を指定や変更することができる内容のものがあります。
満期保険金の受取人が被相続人と指定されており、満期到来後に被相続人(受取人) が満期保険金を請求しないまま死亡した場合、その満期保険金請求権は、被相続人に帰属していた財産に当たるため、相続財産となります。
満期保険金の受取人が被相続人と指定されており、満期到来後に被相続人(受取人) が満期保険金を請求しないまま死亡した場合、その満期保険金請求権は、被相続人に帰属していた財産に当たるため、相続財産となります。
満期保険金請求権の消減時効
満期保険金請求権は、「保険給付を請求する権利」に該当するため、保険法95条1項により、「行使することができる時から3年間」で消滅時効にかかります。満期保険金は、保険期間満了により行使することができますので、消滅時効の起算点は、約款に別の定めがない限り、保険期間満了日の翌日と考えられます。したがって、被相続人が満期保険金を請求していなかった場合、相続人は、被相続人死亡時ではなく、保険期間満了から3年以内に請求する必要がありますので注意が必要です。
満期保険金請求権の評価
満期保険金請求権の評価は、保険契約により定められた満期保険金の請求金額となります。保険金が一時金の場合には、その一時金の額となりますが、定期金の場合は、相続税における評価方法(相続税法29条では(1)有期定期金、(2)無期定期金、(3)終身定期金に分け評価することとしている)等を参考に評価することになります。
満期保険金請求権の承継
満期保険金請求権は、被相続人が有していた財産(債権)ですから、相続財産になります。そして、満期保険金請求権は、金銭債権(可分債権)なので、相続人が複数人の場合は、当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継取得し、 遺産分割の対象にはなりません。もっとも、相続人全員の合意により、遺産分割の対象に含めることは可能です。
これに対し、満期保険金の受取人である被相続人が、満期保険金請求権について遺贈又は特定財産承継遺言(相続させる遺言)を作成していた場合は、当該遺言に従って満期保険金が承継されます。
これに対し、満期保険金の受取人である被相続人が、満期保険金請求権について遺贈又は特定財産承継遺言(相続させる遺言)を作成していた場合は、当該遺言に従って満期保険金が承継されます。
共同相続人の一部による満期保険金の請求
満期保険金請求権は、相続分に応じて当然に分割承継され、相続人全員の合意がない限り、遺産分割の対象とならないと考えられます。したがって、共同相続人の1人が遺産分割協議を経ずに、自己の相続分に応じて満期保険金を保険会社に請求することは可能ということになります。
もっとも、保険約款では、被相続人の相続人が複数いる場合、代表者1名を定め、その者が相続人全員を代理して請求することを定めていることが通例です。この場合に、共同相続人の1人が、遺産分割協議を経ずに、自己の相続分に応じた満期保険金を請求することができるか、問題となることがあります。
遺産分割協議又は代表者の選定が困難な事情がある場合には、共同相続人は、自己の相続分を戸籍等で証明して、分割された満期保険金を請求することができます。もっとも、保険会社の対応としては、約款に基づき、個別の請求には応じないことが予想されますので、まずは遺産分割協議又は代表者の選定を試み、協議の成立や代表者の選定が困難な事情がある場合に、個別の請求を検討することになると思われます。
もっとも、保険約款では、被相続人の相続人が複数いる場合、代表者1名を定め、その者が相続人全員を代理して請求することを定めていることが通例です。この場合に、共同相続人の1人が、遺産分割協議を経ずに、自己の相続分に応じた満期保険金を請求することができるか、問題となることがあります。
遺産分割協議又は代表者の選定が困難な事情がある場合には、共同相続人は、自己の相続分を戸籍等で証明して、分割された満期保険金を請求することができます。もっとも、保険会社の対応としては、約款に基づき、個別の請求には応じないことが予想されますので、まずは遺産分割協議又は代表者の選定を試み、協議の成立や代表者の選定が困難な事情がある場合に、個別の請求を検討することになると思われます。
まとめ
被相続人の財産に生命保険契約の満期保険金がある場合、遺産分割の対象となりますが、この管理・承継に当たって次の点を注意します。
(1)満期保険金請求権は、被相続人に帰属していた財産(金銭債権)に当たるため、相続財産となる。
(2)満期保険金請求権は、「保険給付を請求する権利」に含まれるため、保険法95条1項により、行使することができる時から3年間で消滅時効にかかる。
(3)満期保険金請求権の評価は、保険契約により定められた満期保険金の請求金額となる。
(4)遺言がなければ、生命保険契約の満期保険金は相続分に応じて当然分割承継されるが、相続人全員の合意で遺産分割の対象に含めることはできる。
(5)共同相続人の一部による満期保険金の請求は、約款により制限されているが、自己の相続分の限度で請求することは可能である。
今回は、相続財産の中に生命保険契約の満期保険金がある場合の管理・承継について、解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください
(1)満期保険金請求権は、被相続人に帰属していた財産(金銭債権)に当たるため、相続財産となる。
(2)満期保険金請求権は、「保険給付を請求する権利」に含まれるため、保険法95条1項により、行使することができる時から3年間で消滅時効にかかる。
(3)満期保険金請求権の評価は、保険契約により定められた満期保険金の請求金額となる。
(4)遺言がなければ、生命保険契約の満期保険金は相続分に応じて当然分割承継されるが、相続人全員の合意で遺産分割の対象に含めることはできる。
(5)共同相続人の一部による満期保険金の請求は、約款により制限されているが、自己の相続分の限度で請求することは可能である。
今回は、相続財産の中に生命保険契約の満期保険金がある場合の管理・承継について、解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください