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相続発生前の対策として共有不動産の解消や地番の整備、境界の確定について

相続発生前の対策として共有不動産の解消や地番の整備、境界の確定について解説します。

共有不動産の解消や地番の整備、境界の確定について

相続財産の中に共有不動産が存在する場合、相続によりさらに共有関係が細分化するよりは、共有関係を解消しておくことが望ましいです。共有関係を解消することで不動産を譲渡しやすく、譲渡によって納税資金の対策とすることができ、遺産分割協議も行いやすくなります。また、一つの不動産を複数の共同相続人で相続する場合も、全員の共有名義にするよりも、共同相続人の1人の単独名義として遺産分割を行うことで将来の紛争を避けることになります。他にも、相続財産に不動産がある場合には、地番を整備したり、境界を確定したりして、不動産の範囲を明確にしておくことが相続・遺産分割の有効な対策となります。そこで、効果とリスクや注意点について解説します。

効果とリスク及び注意点

効果

(1)土地や建物を相続する場合、共有関係を解消し、地番の整備や境界の確定により土地を譲渡可能な状態にしておくことで、納税資金の対策となり、遺産分割協議を行いやすくすることができる。不動産を共有で相続することには、一定のリスクがあります。例えば、相続人の土地を兄弟で相続して共有名義にすると、兄弟の子、さらに、その子の代まで相続が続いていくと、不動産の所有者が多数に広がる可能性があります。このような場合に共有不動産を売却しようとしても、共有者全員の同意を得なければならず、売却が難しくなってしまうのです。その他にも、土地の範囲が明確でなく地番が整備されていない、隣地との境界か確定されていないといった場合には、相続の際に、相続財産を特定できずに困ることがあります。そこで、共有関係の解消、地番の整備、境界の確定をあらかじめしておく、または相続を機に整理しておくことが重要になります。

リスク

(1)手続をする場合、他の共有者や近隣の土地所有者の理解が得られない場合は紛争となるおそれがある。
(2)地番の整備について、分筆の方法による場合は、不動産譲渡税が課税される場合がある。共有土地を持分に応じて分割する場合、税務上は、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われています。そのため、持分に応じた分割であれば、それによる譲渡所得税が課されることはありません。しかしながら、地番の整備しようとして共有土地を分筆する場合は、必ずしも分筆後の各土地の価額の比が共有持分の割合に等しいとはいえず、原則として譲渡所得税が課される場合があります。そのため、共有物を分割する場合は、税務上の問題が生じないかどうか、慎重に対応する必要があります。

注意点

(1)共有不動産の共有関係を解消するには、共有物分割の手続をとる必要がある。共有不動産の共有関係を解消したい場合、各共有者は、いつでも共有物の分割の請求をすることができます。この請求により共有者間で共有物の分割の協議を行うことになりますが、協議が調わない場合も考えられます。そのような場合には、裁判所に共有物分割訴訟を提起することができます。
(2)地番の整備には、近隣の所有者との間での境界の確認書類が必要である。
(3)境界の確定には、筆界特定制度や境界確定訴訟の制度を利用しなければならない場合がある。土地の境界については、隣地所有者間で争いがなければ行政上の確定作業で足りますが、争いがある場合には境界確定訴訟又は筆界特定制度による必要があります。

共有不動産の法律関係

共有について

複数の人が1つの物に対して、一定の割合で所有権を持つことを共有といいます。そして、各共有者のもつ所有権の割合のことを持分といい、持分について各共有者が持つ権利を持分権といいます。例えば、共同相続が行われる結果、遺産の共有が生じることになります。

共有の法律関係について

持分権は、所有権と同じく、各共有者が自由に処分することができます。共有物それ自体については、まず、各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。次に、共有物の変更は、他の共有者の同意を得なければできません。例えば、共有の山林を伐採したり、共有の住居を事務所に改造したりすることが「変更」に当たります。
さらに、共有物の管理は、上記の「変更」に当たらない限り、各共有者の持分の価格に従う、その過半数で決定することになります。例えば、共有建物の賃貸のように収益を図る行為が「管理」に当たります。ただし、共有物の保存行為にとどまる場合は、各共有者が単独ですることができます。例えば、時効中断のための請求などが「保存行為」に当たります。以上のように、共有の法律関係では、持分所有の自由がある一方で、共有物の使用、管理、処分等について複雑な問題が生じることがあります。

共有不動産の解消の方法

共有物分割請求・協議

各共有者は、原則として、いつでも共有物の分割を請求することができます。複雑な共有関係を解消させるために自由な分割請求が認められています。共有物の分割は、協議による分割が原則で、協議が調わない場合には裁判上の分割が行われることになります。協議が調う場合の分割の方法としては、①現物での分割と、②共有者の1人が目的物全部の所有権を取得して他の共有者に対して代金を支払うという分割(価格分割)、③物を売却して代金を分けるという分割(代金分割)があります。なお、土地の場合、①現物分割の方法として、分筆登記により単独所有とすることができます。

共有物分割訴訟

共有物の分割について共有者間に協議が調わない場合、その分割を裁判所に請求することができます。このような裁判上の分割を共有物分割訴訟といいます。共有物分割訴訟では、判決により当然に共有物を分割させる効果が生じ、各共有者に直接的な利害関係があります。そこで、当事者となるのは、共有者全員であり、原告として訴訟を提起する共有者は、他の共有者全員を被告として訴える必要があります。
分割の方法は、原則、現物分割ですが、例外的に、現物分割ができないときや分割によって著しく価格を減少させるおそれがある場合には、競売をして、売却代金の分割という形での分割が認められています。それ以外にも、判例上、共有物の性質・形状、共有関係の発生原因、共有者の数、持分の割合、共有物の利用状況、分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を考慮して、共有物を共有者の1人に取得させるのが相当で、かっ、その価格が適正に評価され、共有物の取得者に支払能力があって、他の共有者にその持分の価格を取得させても共有者間の実質的公平を害しない特段の事情があるときは、共有物を1人の単独所有として、他の共有者に持分の価格を賠償させる全面的価格賠償の方法による分割も許されています。

地番の整備、境界の確定の手続

地番の整備

地番とは、法務局等の登記所において、一筆の土地ごとに付されている番号のことをいいます。地番は不動産登記簿で使用されるものなので、土地を所有している場合には地番を整備しておくことが重要です。地番を整備する際には、隣地所有者との間の境界の確認書類が必要になります。

境界の確定の手続

隣地所有者との間で境界に争いがある場合には、下記の手続を行う方法があります。
(1)筆界特定制度
筆界特定制度とは、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて、筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度をいいます。ただし、筆界特定により新たに筆界を決めるのではなく、実地調査や測量を含む様々な調査を行って、元々あった筆界を筆界特定登記官が明らかにするものです。この筆界特定制度を経ることなく、境界確定訴訟を提起することも可能です。また、筆界特定がなされた後に、境界確定訴訟の判決が確定した場合、その筆界特定は、判決と抵触する範囲において効力を失うことになります。
(2)境界確定訴訟
境界確定訴訟とは、相隣接する土地の境界線に争いがある場合に、訴訟手続によりこれを創設的に確定する訴えをいいます。明文上の根拠規定はありませんが、裁判実務上認められている訴訟形態です。

境界確定訴訟の活用例(隣地所有者との間で境界線に争いがある場合)

父親が所有する土地について、隣地の所有者との間ではその土地の境界線について言い分の食い違いがあり、境界が定まらず、地番も整備されていないままになっています。将来、土地を相続する際に、このまま争いが続くことについて不安に感じている。

境界の確定に関する手続

事例のような場合、できれば、相続が開始されるより前に、土地の境界を確定して、地番を整備しておきたいところです。取り得る方法としては、筆界特定制度または境界確定訴訟の提起があります。 直ちに裁判まではしたくないという場合、筆界特定制度を先行させ、隣地所有者との間で境界についての見解がまとまらないかどうか様子をみておくのもよいでしょう。本事例について次の対応があります。
(1)筆界特定制度
筆界特定制度を申し立て、実地調査等を行ってもらい、筆界特定登記官に筆界を特定してもらうことが考えられます。ただし、この筆界特定制度は境界の創設するものではなく、後で境界確定訴訟により覆されるおそれがあることには留意する必要があります。
(2)境界確定訴訟
境界確定訴訟を提起して、裁判での主張・立証を経て、裁判所において境界を創設的に確定する方法が考えられます。場合によっては、裁判官が現地で検証を行い、境界を判断する材料にすることもあります。
(3)地番の整備
隣地所有者との間で境界を確認した書類をもって、地番を整備してもらうことができます。

筆界特定制度の活用例

父の甲が所有する土地について、甲が数年前から、土地の東側に2mの幅の通路を作り使用していました。しかし、最近、隣地を購入した乙より、「前の所有者から使用道路については境界線を越境していると聞いており越境部分を取り除いてもらいたい」といわれ、お互いの境界の認識が違っていることか判明しました。お互いの認識が違う部分について、本来の境界が分かれば、どちらが正しいかがわかるため、相続対策として本来の境界を明らかにしたいと考えています。

境界を明らかにする資料の収集

本事例では、甲が設置、使用している通路に関し、境界を出ているかどうかが争いとなっており、時効取得の成立する場合を除いて、境界のうち公法上の筆界がどこにあるかを確定することが、紛争解決のポイントとなる事案です。まずは、可能な限り、公法上の筆界に関する資料を収集して、境界がどこにあるかを探っていくことが重要です。登記所において、地図、地図に準ずる図面、土地台帳附属地図、地積測量図、分筆申告書添付図面、土地台帳等の閲覧や証明書(写しの交付)を受け、国道事務所、土木事務所、市町村などで官民境界資料、地番図、換地確定図などを収集して、資料を総合して境界が明確となるかどうか調査しておく必要があります。調査には、資料収集だけでなく、資料を基に、土地家屋調査士による測量調査をしておくことも重要です。

筆界特定制度の利用

当事者が収集した資料や調査から境界の予測を基に、筆界特定制度の利用の対策をとることが可能です。筆界特定制度では、職権で資料収集や調査が行われ、法務局の筆界特定登記官が、土地家屋調査士などの専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、筆界を示されることになり、本事例における解決の基準としての正確な筆界の結論が得られる蓋然性が高く、紛争の前提に公法上の筆界の確定が必要な本事例に適している手続であるといえます。使用道路が自己の土地で境界内であることが示された場合はその旨を確認することで紛争が解決でき、越境が明らかになれば、その後の利用関係や撤去方法を協定する流れとなります。

まとめ

(1)共有関係を解消し、地番の整備や境界の確定により遺産分割協議を行いやすくする。
(2)共有不動産の共有関係を解消するには、共有物分割の手続をとる必要がある。
(3)協議が調わない場合には、裁判所に共有物分割訴訟を提起することができる。
(4)地番の整備には、近隣の所有者との間での境界の確認書類が必要である。
(5)土地の境界については、隣地所有者間で争いがなければ行政上の確定作業で可能。
(6)境界の確定には、筆界特定制度や境界確定訴訟の制度を利用するこができる。
今回は、相続発生前の対策として共有不動産の解消や地番の整備、境界の確定について解説しました。当事務所は、相続や遺言について、多数の実績がありますのでお気軽にご相談ください。

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