相続財産の中に有料老人ホームの入居一時金返還請求権がある場合には、管理や承継にあたりどのような点に注意すべきでしようか。今回はこのことについて解説します。
有料老人ホームの入居一時金
介護一時金、協力金、管理費、入会金その他いかなる名称であるかを問わず、有料老人ホーム事業者が、家賃又は施設の利用料並びに介護、食事の提供及びその他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として収受する費用の前払金を入居一時金ということがあります。
入居一時金は、利用者が日常的に受けるサービスの対価と位置付けられますので日々償却されますが、もし死亡退去時において、償却後の残額かあるのであれば、事業者は相続人等に残額を返還しなければなりません。この点、入居一時金は、本人が支出することもありますし、関係者が支出するケースもありますが、いずれにしても、死亡退去時に、契約書で指定された返還先に返還されることになります。
具体的な償却期間や償却率は有料老人ホームによって様々ですが、事業者側の自由な期間設定は認められておらず、前払金の償却年数は、入居者の終身にわたる居住が平均的な余命等を勘案して想定される期間とすることとされており、償却期間が著しく短い場合や、初期償却率が著しく高い場合等は、消費者契約法9条1号及び10条により無効となる場合もあり得ます。
また、有料老人ホームの設置者は、前払金を受領する場合においては、当該有料老人ホームに入居した日から90日以内に、入居契約が解除又は入居者の死亡により終了した場合には当該前払金の額から一定額を控除した金額を返還する旨の契約を締結しなければならないとされておりますので、入居から90日以内に死亡退去した場合には、相続人等は事業者に対し入居一時金全額の返還を求めることができます。
さらに、平成18年4月1日以降に設置された有料老人ホームにおいては、入居一時金等の名目で前払金を受領する場合には、当該前払金の保全措置を講じなければならないとされています。具体的には、平成18年4月1日以降に開設される有料老人ホーム等では、入居一時金の未償却残高の最低500万円は確実に入居者に戻るような保全措置か義務付けられています。
なお、入居一時金を有料老人ホームに預託する場合、重要事項説明書や入居契約書などに償却の条件などが明示されるのが通常です。
入居一時金は、利用者が日常的に受けるサービスの対価と位置付けられますので日々償却されますが、もし死亡退去時において、償却後の残額かあるのであれば、事業者は相続人等に残額を返還しなければなりません。この点、入居一時金は、本人が支出することもありますし、関係者が支出するケースもありますが、いずれにしても、死亡退去時に、契約書で指定された返還先に返還されることになります。
具体的な償却期間や償却率は有料老人ホームによって様々ですが、事業者側の自由な期間設定は認められておらず、前払金の償却年数は、入居者の終身にわたる居住が平均的な余命等を勘案して想定される期間とすることとされており、償却期間が著しく短い場合や、初期償却率が著しく高い場合等は、消費者契約法9条1号及び10条により無効となる場合もあり得ます。
また、有料老人ホームの設置者は、前払金を受領する場合においては、当該有料老人ホームに入居した日から90日以内に、入居契約が解除又は入居者の死亡により終了した場合には当該前払金の額から一定額を控除した金額を返還する旨の契約を締結しなければならないとされておりますので、入居から90日以内に死亡退去した場合には、相続人等は事業者に対し入居一時金全額の返還を求めることができます。
さらに、平成18年4月1日以降に設置された有料老人ホームにおいては、入居一時金等の名目で前払金を受領する場合には、当該前払金の保全措置を講じなければならないとされています。具体的には、平成18年4月1日以降に開設される有料老人ホーム等では、入居一時金の未償却残高の最低500万円は確実に入居者に戻るような保全措置か義務付けられています。
なお、入居一時金を有料老人ホームに預託する場合、重要事項説明書や入居契約書などに償却の条件などが明示されるのが通常です。
入居一時金返還請求権等の相続財産該当性
有料老人ホームに入居後、入居者が死亡し相続が開始した場合は、上記のとおり、償却後の残額があるとき等には、入居一時金が返還されることになります。
遺産を管理する者としては、この有料老人ホームの入居一時金返還請求権に関する老人ホームとの契約書類、約款等の書類を収集して、入居一時金返還請求権の存在を確認します。また、相続人や老人ホーム担当者に面会をして、入居一時金返還請求権の存否、内容を調査します。入居一時金返還請求権は、相続財産か、指定受取人の固有の権利かどうかの判断が分かれますが、一般的には、相続財産とされています。
すなわち、一般的な有料老人ホームの入居契約の各条項によれば、入居一時金の返還金は、入居契約の解除又は終了に伴う原状回復又は不当利得として返還されるものであり、受領すべき者は入居契約の当事者であると解されます。入居一時金の返還を受ける受取人が定められているとしても、それは、事業者の返還事務の便宜のために、入居者死亡の場合に備えて受取人が指定されたものにすぎず、受取人に当然に返還金全額を帰属させる趣旨ではありません。したがって、入居一時金返還請求権は被相続人の相続財産であると考えられます。
そこで、まずは有料老人ホームとの契約内容を確認し、入居一時金を特定の相続人が出捐しているといった特別の事情がなければ、入居一時金返還請求権は相続財産と考えるべきです。
遺産を管理する者としては、この有料老人ホームの入居一時金返還請求権に関する老人ホームとの契約書類、約款等の書類を収集して、入居一時金返還請求権の存在を確認します。また、相続人や老人ホーム担当者に面会をして、入居一時金返還請求権の存否、内容を調査します。入居一時金返還請求権は、相続財産か、指定受取人の固有の権利かどうかの判断が分かれますが、一般的には、相続財産とされています。
すなわち、一般的な有料老人ホームの入居契約の各条項によれば、入居一時金の返還金は、入居契約の解除又は終了に伴う原状回復又は不当利得として返還されるものであり、受領すべき者は入居契約の当事者であると解されます。入居一時金の返還を受ける受取人が定められているとしても、それは、事業者の返還事務の便宜のために、入居者死亡の場合に備えて受取人が指定されたものにすぎず、受取人に当然に返還金全額を帰属させる趣旨ではありません。したがって、入居一時金返還請求権は被相続人の相続財産であると考えられます。
そこで、まずは有料老人ホームとの契約内容を確認し、入居一時金を特定の相続人が出捐しているといった特別の事情がなければ、入居一時金返還請求権は相続財産と考えるべきです。
関係書類等の保管
遺産を管理する者は、承継の対象となる債権の存在を確認したら、その承継が終わるまで債権を管理する必要があります。入居一時金返還請求権の場合は、その存在を裏付ける有料老人ホームとの契約書等の書類を保管することによって管理します。個々の相続人がこれらの書類を保管している場合には、遺産を管理する者は、その相続人に対しその書類の引渡しを求めます。
入居-時金返還請求権の承継
入居一時金返還請求権は、上記のとおり、一般的には、金銭債権として相続財産に該当します。そして、金銭債権のような可分債権は、遺言があればその内容に従い、 遺言がなければ相続開始によって相続分の割合に応じて当然に分割され、各相続人に承継されます。
ただし、相続人間の合意で遺産分割の対象として扱うことも可能ですので、その場合は、遺産分割協議の結果に基づいて相続されることになります。
ただし、相続人間の合意で遺産分割の対象として扱うことも可能ですので、その場合は、遺産分割協議の結果に基づいて相続されることになります。
入居一時金返還請求権の承継における対抗要件
入居一時金返還請求権について、特定の相続人等に承継させる遺言がある場合、若しくは法定相続分とは異なる遺産分割を行う場合には、取得者は、債務者である有料老人ホーム事業者に通知する等の方法により、速やかに対抗要件を具備しなければなりません。
入居一時金返還請求権等の金銭債権を相続承継した場合の対抗要件について、改正前の民法においては、相続させる旨の遺言及び遺言による相続分の指定の場合には、不動産の場合と同様に、法定相続分を超える部分についても対抗要件なくして第三者に対抗できると解されています。これに対し、特定遺贈(たとえば、「債務者に対する100万円の債権を相続人Aに遺贈する」旨の遺言)の場合には、民法467条に定める対抗要件を具備しなければ債務者又は債務者以外の第三者に対抗できないと解されています。
しかしながら、改正後の民法では、遺産の分割及び遺言の場合を含めて、法定相続分を超える承継については全て対抗要件主義を採用することとします。
すなわち、民法899条の2第1項は、債権の承継を含む権利の承継は、遺産の分割及び遺言の場合を含め、法定相続分を超える部分については、登記、登録、その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないことを定めています。したがって、法定相続分を超える部分については、民法467条に定める対抗要件を備える必要があります。具体的には、被相続人の地位を包括承継した共同相続人全員による債務者への通知又は債務者の承諾が必要であり、さらに、債務者以外の第三者にも対抗するためには、当該通知及び承諾は確定日付ある証書によって行うことが必要となります。
民法899条の2第2項では、法定の相続分を超えて債権の承継をした受益相続人が、単独で通知することでも、民法899条の2第1項に定める対抗要件を具備する旨を定めています。受益相続人が単独で通知をする場合、遺言の内容を明らかにすることが必要とされています。具体的には、債務者が、客観的に遺言や遺産分割の有無などその内容を判断できるような方法(例えば、受益相続人が遺言書の原本、遺産分割協議書等の原本を提示し、債務者の求めに応じて、債権の承継の記載部分について写しを交付する方法)をもって通知することで足りるものと考えられます。
入居一時金返還請求権等の金銭債権を相続承継した場合の対抗要件について、改正前の民法においては、相続させる旨の遺言及び遺言による相続分の指定の場合には、不動産の場合と同様に、法定相続分を超える部分についても対抗要件なくして第三者に対抗できると解されています。これに対し、特定遺贈(たとえば、「債務者に対する100万円の債権を相続人Aに遺贈する」旨の遺言)の場合には、民法467条に定める対抗要件を具備しなければ債務者又は債務者以外の第三者に対抗できないと解されています。
しかしながら、改正後の民法では、遺産の分割及び遺言の場合を含めて、法定相続分を超える承継については全て対抗要件主義を採用することとします。
すなわち、民法899条の2第1項は、債権の承継を含む権利の承継は、遺産の分割及び遺言の場合を含め、法定相続分を超える部分については、登記、登録、その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないことを定めています。したがって、法定相続分を超える部分については、民法467条に定める対抗要件を備える必要があります。具体的には、被相続人の地位を包括承継した共同相続人全員による債務者への通知又は債務者の承諾が必要であり、さらに、債務者以外の第三者にも対抗するためには、当該通知及び承諾は確定日付ある証書によって行うことが必要となります。
民法899条の2第2項では、法定の相続分を超えて債権の承継をした受益相続人が、単独で通知することでも、民法899条の2第1項に定める対抗要件を具備する旨を定めています。受益相続人が単独で通知をする場合、遺言の内容を明らかにすることが必要とされています。具体的には、債務者が、客観的に遺言や遺産分割の有無などその内容を判断できるような方法(例えば、受益相続人が遺言書の原本、遺産分割協議書等の原本を提示し、債務者の求めに応じて、債権の承継の記載部分について写しを交付する方法)をもって通知することで足りるものと考えられます。
まとめ
相続人の有料老人ホームの入居一時金返還請求権について、管理や承継するにあたり管理や承継は次の点を注意します。
(1)死亡退去時において有料老人ホームの入居一時金の償却後の残額があるとき等は、事業者はあらかじめ指定されている返還金受取人若しくは相続人等に入居一時金を返還する。
(2)資料収集したり、関係者と面会したりするなどして、入居一時金返還請求権が相続財産に該当するかどうかを確認する。
(3)入居一時金返還請求権が相続財産に該当する場合、関係書類等を保管する。
(4)入居一時金返還請求権は、請求額すなわち償却後残額が評価額となる。
(5)入居一時金返還請求権は、原則として相続開始によって相続分の割合に応じて当然に分割され、各相続人に承継される。
(6)遺言や遺産分割により法定相続分を超える入居一時金返還請求権を承継した旨を債務者に対抗するためには、相続人が承継した旨を債務者に通知するか、債務者の承諾を得る必要がある。
今回は、有料老人ホームの入居一時金返還請求権の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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(1)死亡退去時において有料老人ホームの入居一時金の償却後の残額があるとき等は、事業者はあらかじめ指定されている返還金受取人若しくは相続人等に入居一時金を返還する。
(2)資料収集したり、関係者と面会したりするなどして、入居一時金返還請求権が相続財産に該当するかどうかを確認する。
(3)入居一時金返還請求権が相続財産に該当する場合、関係書類等を保管する。
(4)入居一時金返還請求権は、請求額すなわち償却後残額が評価額となる。
(5)入居一時金返還請求権は、原則として相続開始によって相続分の割合に応じて当然に分割され、各相続人に承継される。
(6)遺言や遺産分割により法定相続分を超える入居一時金返還請求権を承継した旨を債務者に対抗するためには、相続人が承継した旨を債務者に通知するか、債務者の承諾を得る必要がある。
今回は、有料老人ホームの入居一時金返還請求権の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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