被相続人が負っていた治療費や入院費等の診療費について、相続開始後に、消滅時効期間が経過しました。この診療費の管理や承継について、どのような点に注意すべきでしょうか?今回はこのことについて解説します。
治療費・入院費等の診療費の消滅時効期間の確認
被相続人が亡くなる前に病院に通院又は入院していた場合、未払の治療費・入院費等の診療費があるケースが多いです。未払の治療費・入院費等の診療費が高額である場合もあります。この治療費・入院費等の診療費についても、一定の期間が経過すると、時効によって消滅しますので、未払の診療費が時効により消滅していないか、消滅時効期間を確認します。
診療費の消滅時効期間についても、平成29年の債権法改正における消滅時効に関する改正により、債権の発生時期によって消滅時効期間が異なりますので、注意してください。
診療費の消滅時効期間についても、平成29年の債権法改正における消滅時効に関する改正により、債権の発生時期によって消滅時効期間が異なりますので、注意してください。
令和2年3月31日以前に発生したものである場合
治療費・入院費等の医師の診療に関する債権は、3年間行使しないときは、時効により消滅します。
公立病院の診療に関する債権の消減時効期間については、公法上の債権であるとして地方自治法により5年となるのか、改正前の民法により3年となるのかという問題がありました。この点については、判例により、公立病院において行われる診療は、私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく、その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきであるとして、公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間は、平成29年法律必号改正前の民法170条1号により3年になると解されています。
公立病院の診療に関する債権の消減時効期間については、公法上の債権であるとして地方自治法により5年となるのか、改正前の民法により3年となるのかという問題がありました。この点については、判例により、公立病院において行われる診療は、私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく、その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきであるとして、公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間は、平成29年法律必号改正前の民法170条1号により3年になると解されています。
令和2年4月1日以後に発生したものである場合
債権法改正により、職業別の短期消滅時効の制度が廃止されました。したがって、治療費・入院費等の医師の診療に関する債権についても、他の一般的な債権と同じように、債権者である医師等が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときのいずれか早い時期に、時効により消滅します。
時効の更新・完成猶予(旧法では時効の中断・停止)事由の有無の調査
消滅時効期間を確認した後は、時効の更新・完成猶予事由の有無を調査します。
消滅時効期間が経過しているように思われる場合であっても、時効の更新・完成猶予により時効が完成していないことがあります。
特に、相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません。被相続人が負っていた治療費・入院費等の診療費について、相続開始後に消滅時効期間が経過したときには、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6か月を経過していないと時効は完成しませんので、6か月経過したことを忘れずに確認するようにしてください。
消滅時効期間が経過しているように思われる場合であっても、時効の更新・完成猶予により時効が完成していないことがあります。
特に、相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません。被相続人が負っていた治療費・入院費等の診療費について、相続開始後に消滅時効期間が経過したときには、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6か月を経過していないと時効は完成しませんので、6か月経過したことを忘れずに確認するようにしてください。
消滅時効の援用
消滅時効期間が経過していることを確認の上、消滅時効を援用することとした場合には、相続人は、債権者である医師等に対し、時効を援用する旨を通知する文書を内容証明郵便で送付し、時効の援用の手続を行います。消滅時効が完成していた場合には、時効の援用により、治療費・入院費等の診療費の支払義務がなくなります。
なお、時効の援用の手続を行う場合には、仮に時効の援用が認められなかったとしても相続財産を処分したと判断される可能性があり、相続の放棄や限定承認ができなくなるおそれがありますので、これも踏まえて、時効の援用をするか否かを慎重に検討してください。
なお、時効の援用の手続を行う場合には、仮に時効の援用が認められなかったとしても相続財産を処分したと判断される可能性があり、相続の放棄や限定承認ができなくなるおそれがありますので、これも踏まえて、時効の援用をするか否かを慎重に検討してください。
まとめ
消滅時効期間が経過した治療費や入院費等の診療費の管理や承継について、どのような点に注意すべきことは次のとおりです。
(1)消滅時効に関する改正により、債権の発生時期によって消滅時効期間が異なります。
(2)令和2年3月31日以前に発生した債権は、3年間行使しないときは、時効により消滅する。
(3)令和2年4月1日以後に発生した債権は、債権者である医師等が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときのいずれか早い時期に、時効により消滅する。
(4)消滅時効期間を確認した後は、時効の更新・完成猶予事由の有無を調査します。
(5)相続人が消滅時効を援用する場合には、時効を援用する旨を通知する文書を内容証明郵便で送付する。
今回は、消滅時効期間が経過した治療費や入院費等の診療費の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください
(1)消滅時効に関する改正により、債権の発生時期によって消滅時効期間が異なります。
(2)令和2年3月31日以前に発生した債権は、3年間行使しないときは、時効により消滅する。
(3)令和2年4月1日以後に発生した債権は、債権者である医師等が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときのいずれか早い時期に、時効により消滅する。
(4)消滅時効期間を確認した後は、時効の更新・完成猶予事由の有無を調査します。
(5)相続人が消滅時効を援用する場合には、時効を援用する旨を通知する文書を内容証明郵便で送付する。
今回は、消滅時効期間が経過した治療費や入院費等の診療費の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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