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一般危急時遺言について

遺言の特別方式として、疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が証人3人以上の立会いのもと、その1人に遺言の趣旨を口授して行う一般危急時遺言があります。今回は一般危急時遺言について解説します。

一般危急時遺言とは

遺言の特別方式の一つとして、疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる一般危急時遺言が定められています。
この場合、その口授を受けた者がこれを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、押印するとされ、遺言者は、口頭で遺言をすることが可能となります。
一方、遺言者が口頭で行う一般危急時遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の1又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければならず、家庭裁判所は、一般危急時遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ確認することができないとされています。

一般危急時遺言の要件

一般危急時遺言を作成する場合には、以下の要件を満たす必要があります。

(1)遺言者が死亡の危急に迫られていること

一般危急時遺言を作成するためには、遺言者が疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者でなければなりません。余命いくばくもない病気や事故等で生命の危険が差し迫っている状況で、すぐに遺言を作成しなければ亡くなってしまう危険がある状況が必要で、遺言者が何等の事由もないのに単にその生命の危険を空想し、又は漠然と予想するだけでは足りません
死亡の危急に迫られていたかどうかは、通常は医師の診断を基に判断されることになるでしょう。しかし、必ずしも客観的に死亡の危急に切迫していることを必要とせず、疾病その他相当な事由がある場合、遺言者自から自己の死亡の危急に迫っているものと自覚してなされることで足りるとした裁判例があります。

(2)証人3人以上の立会い

証人欠格事由である未成年者、遺言の内容に直接利害関係を有する推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人以外の者を3人証人としなければなりません。

(3)遺言者が証人の1人に遺言の趣旨を口授すること

遺言者が、遺言事項を証人のうち1人に口頭で伝えることが必要です。口がきけない者も、口授に代えて、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述することで作成することができます。

(4)口授を受けた証人によるその内容の筆記

口授を受けた証人は、口授の内容を筆記し、その内容を書面化します。

(5)筆記した内容を遺言者と他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させること

証人が筆記した遺言書が遺言者の口授した内容を正確に反映しているかどうかを確認するため、遺言者と他の証人に、読み聞かせるか、閲覧させることが必要です。
遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、読み聞かせに代えることができます。

(6)証人全員の署名押印

筆記が正確であることを確認した後、証人全員の署名押印が必要となります。

(7)家庭裁判所による確認

一般危急時遺言を作成した日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人が、家庭裁判所に対して、遺言確認の審判の申立てをする必要があります。期限までに確認の請求がなされなければ一般危急時遺言の効力は発生しません。
遺言確認の審判は、遺言者が生存中は、遺言者の住所地の家庭裁判所に申立てをし、遺言者が死亡後は相続開始地の家庭裁判所に申立てを行います。
家庭裁判所は、一般危急時遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ確認することができないとされており、家庭裁判所では、遺言書に記載されたロ述内容が遺言者の真意に基づくものであるかについて、調査されます。調査は、調査官が証人等から聴取を行うなどの方法により、遺言書の作成に至る経緯、作成時の状況等を確認されます。裁判所が確認をするには、当該遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得る必要がありますが、心証の程度について、いわゆる確信の程度に及ぶ必要はなく、当該遺言が一応遺言者の真意に適うと判断される程度の緩和された心証で足りるとするのが裁判例の傾向です。
家庭裁判所は、遺言書に記載された内容が遺言者の真意によるものであるとの心証を得たときには、遺言確認の審判を行い、家庭裁判所によって確認された遺言書は、遺言作成時に遡って効力が生じます。

一般危急時遺言の効力

遺言者が普通の方式による遺言をすることができるようになった時から6か月間生存するときは効力を生じなくなります
特別方式の遺言にも、自筆証書遺言の加除・変更、成年後見人の遺言、証人・立合人の欠格事由、共同遺言の禁止が準用されています。

まとめ

一般危急時遺言について、次の点に注意が必要です。
(1)死亡の危急に迫った重篤な状態にある者であっても、 自署することなく口頭で遺言を残すことができる。
(2)欠格事由のない3名の証人が必要である。
(3)口授、筆記、読み聞かせ・閲覧等の特別の方式を遵守して行わなければならない。
(4)遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
(5)遺言の執行をするためには、遺言者が死亡し、相続が開始した後に家庭裁判所に検認の申立てをする必要がある。
(6)普通方式の遺言をすることが可能となった場合、その時から6か月間生存しているときは遺言が失効する。
(7)方式を満たした場合でも遺言内容が不合理な場合は、遺言無効確認訴訟等の紛争となる可能性がある。
今回は、一般危急時遺言について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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