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「法定相続情報証明制度」とはどのような制度ですか?

「法定相続情報証明制度」が2017年から始まり、これまで何度も戸籍謄本等を収集しなければならなかった相続手続きを効率よく進めることができるようになりました。今回は、この制度の内容とメリットなどについて解説します。

法定相続情報証明制度の内容

法定相続情報証明制度は、登記所(法務局)において、戸籍関係書類等一式を集めて提出してきた相続人からの申出に応じて、これらの戸籍の束に代替する書類を交付する制度です。
 具体的には、相続人は、相続人や被相続人の戸籍等を自ら集める必要はありますが、一旦それらを基に「法定相続情報一覧図」を作成して登記所に提出すれば、登記官が確認のうえ、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを必要な通数無料で交付します。
 被相続人の死亡後、相続登記のほか、金融機関等における預金の払戻手続や保険金請求手続など、様々な相続手続が必要となりますが、相続人は、様々な相続手続において、本証明書を提出することで、それぞれの手続をとる都度、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍等の束を何度も出し直す必要がなくなります。
 本制度の利用の申出ができるのは、被相続人の相続人です。また、申出について代理人となることができるのは、法定相続人、民法上の親族または資格代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理人及び行政書士に限られます。)です。
 なお、被相続人や相続人が日本国籍を有しない場合など、戸籍等を提出することができない場合は、本制度を利用することはできません。

法定相続情報証明制度を利用するために必要な書類及び手続

 本制度を利用するには、必要書類を集め、法定相続情報一覧図を作成し、これらとともに。「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記入のうえ、申出をすることができる登記所に提出する必要があります。

必要書類の準備

(1)必ず必要となる書
①被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍
 被相続人の本籍地の市区町村役場で取得します。
②被相続人の住民票の除票
 被相続人の最後の住所地の市区町村役場で取得します。なお、住民票の除票が市町村において廃棄されているなどして取得できない場合は、被相続人の本籍地の市区町村役場において被相続人の戸籍の附票を取得して提出します。
③法定相続人全員の現在の戸籍全部事項証明書または戸籍個人事項証明書
 各相続人の本籍地の市区町村役場で取得します。
④申出を行う人の氏名及び住所を確認できる公的書類
(例)運転免許証の写し、マイナンバーカードの写し、住民票の写しなど

(2)場合によって必要となる書類
①法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載することは任意ですが、これを記載する場合は、各相続人の住民票の写し
②委任による代理人が申出の手続する場合は、委任状。
あわせて、民法上の親族が代理人となる場合は、申し出る人と代理人が親族関係にあることが分かる戸籍全部事項証明書、資格者代理人が代理人となる場合は、資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等

法定相続情報一覧図の作成

 法定相続情報一覧図は、法定相続情報すなわち、保相続人の氏名、生年月日、最終の住所及び死亡の年月日、ならびに、相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄を記載した書面です。
法定相続情報一覧図においては、相続放棄をした相続人がいる場合も、氏名、生年月日及び続柄を記載する必要があり、他方で、推定相続人が廃除された場合は、その氏名、生年月日及び続柄の記載は要しません。
続柄については、戸籍に記載された続柄のほか、申出人の選択により、「子」と記載することも可能です。ただし、続柄を「子」と記載した場合は、相続税の申告等においては利用できなくなります。
 なお、被相続人の死亡後に子の認知があった場合、被相続人の死亡時に胎児であった者が出生した場合及び本証明書が交付された後に廃除があった場合など、被相続人の死亡時点に遡って相続人の範囲が変わるようなときは、当初の申出人は、再度、法定相続情報一覧図の保管等の申出を行うことができます。

登記所への申出

 「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記載のうえ、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出を行う人の住所地、または被相続人名義の不動産の所在地を管轄するいずれかの登記所に提出します。なお、申出は、郵送によることも可能です。
 法定相続情報一覧図は5年間保管され、この間は。本証明書の再交付を受けることができます。ただし、再交付の申出を行うことができるのは、当初の申出をした人に限られ、他の相続人が再交付の申出をする場合は、当初の申出をした人からの委任が必要となります。
 なお、本証明書は、あくまでも戸籍等の束を代替する書面であり、相続放棄された旨や、遺産分割協議の結果は記載されないため、相続手続においては、本証明書のほかに、遺産分割協議書等の提出が必要となります。

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法定相続情報聡明制度を利用するメリットがある場合

 被相続人所有の不動産や、同人名義の預金、有価証券、保険等が多数ある場合、本制度の創設前は、様々な相続手続に応じて、戸籍等の束を複数用意するか、提出と返還を繰り返す必要があり、費用や時間を要しました。
 法定相続情報一覧図は、発行手数料が無料で、5年間なら何度でも再発行が可能ですので、このような場合には、本制度を利用することにより、手続を同時に進めることができ、費用や時間を大幅に短縮できるというメリットがあります。
 また、海外に資産があり、相続によって取得したことを海外において戸籍等により証明するためには、個々の戸籍等について、外務省のアポスティーユ(「外国公文書の認証を不要とする条約」に基づく、付せん(アポスティーユ)による外務省の証明)が必要となりますが、本制度を利用すれば、本証明書1通にアポスティーユを付してもらえれば足りる場合があるため、海外資産がある場合にも本制度の利用価値が高いといわれています。
 他方で、本制度を利用するには、結局のところ被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍等を一度は用意する必要があるうえ、法定相続情報一覧図を作成したり、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書に記入したりする等の手間が別途発生することになります。
 したがって、相続財産が1つの不動産だけであったり、同人名義の預金口座が少数しかなかったりするような場合には、本制度を利用するメリットは少ないことになります。
そこで、被相続人の相続財産にどのようなものがあるかを確認し、本制度を利用するメリットがあるかどうかを確認して本制度を利用するか否かを決めることが必要です。

まとめ

 法定相続情報証明制度とは、登記所(法務局)において、戸籍関係書類等一式を提出した相続人からの申出に応じて、これらの戸籍等に代替する書面を交付する制度です。
 これまで不動産や株式の名義変更や銀行口座の解約などの相続手続を行う際には、亡くなった方や相続する方の戸除籍謄本等の束を何度も収集し、手続きのたびに提出する必要がありました。
 しかし、法定相続情報証明制度がスタートしたことで、法務局が発行する法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本の収集が必要なくなり、手続きを簡略化することができるようになりました。
 法定相続情報証明制度を利用するためには、必要書類を集め、法定相続情報一覧図を作成し、これらとともに、「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記入のうえ、申出をすることができる登記所に提出する必要があります。
 法定相続情報証明制度を利用するか否かを決める際には、利用するメリットがあるか否かを検討する。)この制度のメリットとして、戸籍謄本を申請する際の手数料がかかりますが、法定相続情報証明の発行手数が無料ですし、5年間なら何度でも証明書の再発行が可能です。
 また、法定相続情報証明制度では、登記官が戸籍の内容を確認してくれるので、自分で確認するより確実ですし、大きな時間短縮が期待されています。なお、申請は、代理人からの申請や郵送 でも可能です。
 デメリットとしては、一部の銀行では、従来通り戸籍の束が必要なことがありますし、申請する際、1度は、従来どおり戸籍を集める必要があります。したがって、相続手続きが1カ所だけ(銀行だけなど)の場合には、あまりメリットはないということになります。
 いずれにしましても、相続手続きをスムーズに進めるためには、早めに専門家である司法書士のサポートを受けることが大切です。当事務所は、相続や遺言に多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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