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遺産分割で動産の管理をするにあたってどのような点に注意すべきでしょうか。

遺言を執行する場合、動産の管理と承継をするにあたってどのような点に注意すべきでしょうか。今回は、動産の管理について解説します。

動産の管理権

被相続人の所有していた動産は、財産的価値のあるもの、財産的価値のないものを問わず全て相続財産になります。
遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するので、相続財産に属する動産の管理処分権についても、遺言執行者が有することになります。
 遺言執行者は遺産に属する動産の管理について善管注意義務を負うため、遺言執行開始後、速やかに動産を自らの管理下に移し、保管措置を講じる必要があります。
動産はその性質上散逸しやすく、保管措置が特に重要となるので注意が必要です。遺言執行者が選任されている場合、「相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」ため、共同相続人が動産の引渡しを拒絶する場合には、遺言執行者は共同相続人に対して引渡しを求めることができます。また、遺言執行者は、遺言執行上必要がある場合は、動産を占有している第三者に対して、その引渡しを求めることができます。
 遺言執行者が選任されていない場合は、共同相続人の共有物となり、共同相続人が管理処分権を有することになります。
 相続人不存在により相続財産管理人が選任されている場合は、相続財産管理人は、相続財産に属する動産について保存行為及び物または権利の性質を変えない範囲内において、その利用または改良を目的とする行為のみを行うことができるのが原則です。ただし、このような管理行為の範囲を超える行為についても、家庭裁判所の権限外行為許可を得て行うことができる場合があります。

動産の調査及び特定方法

管理の対象となる動産には、貴金属、宝飾品、書画骨とう、家財道具、什器備品、ペット、パソコンなそ、あらゆる動産が含まれます。
被相続人の住所地、過去または現在の居所、銀行の貸金庫、かばん等の身の回り品を精査し、相続人や関係者に聞き取りを行い、または遺言書の記載等を参照して、相続財産に属する動産の種類、数量、形状等を確認します。相続税の申告書を参照するものでしょう。
動産の種類、数量、形状等に応じて適切な保管方法、保管場所を選択して管理し、適時に目録を作成します。目録には、評価額、保管状況を記載し、必要に応じて、動産の入手経緯、入手時期、購入場所等も記載するとよいでしょう。電気機器についても、必要に応じて、種類、機種名、型式、型番、保証書等の付属品について記載します。衣類、家具、雑貨等、価値がない家財道具についてはまとめて「一式」と記載することも多いです。
貸金庫の有無については、貸金庫カードや貸金庫鍵を自宅内から発見した場合や、通帳を見て利用料が引き落とされていることから判明する可能性があります。金融機関の貸金庫の内容物の調査にあたっては、共同相続人が調査する場合は、トラブルを避けるために、事前に金融機関に相続が発生していることを通知した上で、共同相続人全員で開扉して調査すべきです。後日、トラブルになる可能性があるケースでは、公証人立会いのもと、公正証書を作成する方法もあります。
遺言執行者が選任されている場合は、速やかに貸金庫カード等を保管者から預かり、金融機関に対して遺言執行者以外の者から開扉に応じないよう通知することが必要です。
遺言執行者が貸金庫を回避する際は、共同相続人が立会いを求める場合があり、後日の紛争を避けるためには、全員の立会いにより開扉することが望ましいといえますが、金融機関によっては遺言執行者以外の者の立会いを拒否する場合がありますので金融機関に確認することが必要です。
また、動産は、遺産の中にお内容なものが複数ある可能性があるため、個別の動産を承継し、または遺産分割の対象とするためには、動産を特定することが必要となります。
特定の方法としては、①1個1個の動産をその形状等により個別に特定する方法と、②複数の動産類を包括して保管場所により特定する方法があります。個性が乏しい多数の動産を特定する場合は、②の方法によることを検討すべきです。(例えば「母屋桐箪笥内の着物類」等)ただし。保管場所内で対象物が変動しないように留意する必要があります。

動産の保管場所と保管方法

個々の動産の種類、数量、形状、性質等に応じた適切な保管場所を選択します。家財家具、衣類等は、滅失・毀損のおそれがない限り、それらの動産がもともと保管されていた場所にて保管する方法を選択することが多くあります。その場合、管理する相続人または遺言執行者は、建物について施錠等の防犯対策をとるように留意し、また、日照、雨漏り、湿度、乾燥、虫害等により動産が滅失・毀損しないように十分留意します。
パソコン等の電子機器については所在場所、種類、機種名、型式、保証書の有無等を確認した上で、付属品、説明書等と一緒に保管します。また、パスワードを設定しるなどのセキュリティ措置を講じます。貴金属、宝石等の高価品については、貸金庫を積極的に活用するなどして、厳重に管理することが適切です。また、書画骨とう、茶道具、高級ワイン等の温湿度管理を必要とするものは、専用の貸金庫、トランクルーム等の活用を検討します。保証書、鑑定書、箱書き等の付属品も含めて保管します。また、絵画、古書については、鑑定書、説明書等を確認し、または専門家に依頼して、作家名や作品名を調査します。保管方法についても専門家に相談します。

動産の評価方法

財産的価値のあるものと財産価値のないものを選別するために、財産の種類に応じて、貴金属買取業者、着物買取業者、家具・家電リサイクル業者、書画骨とう業者、画商、古美術商等に、評価額の査定を依頼します。対象となる動産にもよりますが、複数の業者に評価してもらうことが望ましいと考えられます。査定の結果、値段がつかず財産的価値がないことが判明した動産で、かつ遺言または遺贈の対象となっていないものについては、遺産分割、遺言執行の対象とせず、廃棄処分または形見分け行なうことを検討することになります。

まとめ

被相続人名義の動産は、財産的価値のあるもの、財産的価値のないものを問わず全て相続財産となる。
被相続人の住所、居所、銀行の貸金庫、かばん等の身の回り品を精査し、聞き取りを行い、遺言書の記載等を確認して、相続財産に属する動産の種類、数量、形状等を確認し、適切な保管方法、保管場所を選択して管理し、適時に目録を作成する。
動産を被相続人の自宅内にて保管する場合は、施錠等の防犯対策がとられているか、日照、雨漏り等により滅失毀損しないかに留意し、貴金属、宝石、絵画、骨とう等の高価品については、保証書、鑑定書、箱書き等の付属品も含めて保管し、貸金庫や倉庫等も活用する。
動産を査定して、財産的価値のあるものと財産的価値のないものを選別し、財産の種類に応じて、複数の買取業者、リサイクル業者、骨とう業者等に査定依頼し、相続税評価等も参考にする。
遺言を執行する場合、動産の管理と承継をするにあたっての注意点について、今回は、動産の管理について解説しました。遺言や遺産相続について、後日トラブルが起こらないよう専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、遺言や相続について、多数ご相談を受けておりますので、お気軽にご相談ください。

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