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遺産分割で動産の承継をするにあたってどのような点に注意すべきでしょうか。

遺言を執行する場合、動産の管理と承継をするにあたってどのような点に注意すべきでしょうか。今回は、動産の承継について解説します。

動産の承継

遺言者の死亡により相続が発生すると、共同相続人は、相続財産に属する動産を法定相続分に応じて共有します。
もっとも共同相続人間で遺産分割協議が成立したり、遺産分割審判がなされたり、特定財産承継遺言(相続させる遺言)があったことにより、法定相続分とは異なった割合で共同相続人が遺産を承継することがあります。法定相続分を超える部分について、民法899条の2第1項は、共同相続人は対抗要件を具備しなければ承継後の第三者に対抗できない旨を規定します。
よって、動産の場合の対抗要件である引渡しを備える必要があり、引渡しには、現実の引渡し、簡易の引渡し、占有改定、指図による占有移転があります。なお、車両や船舶等については、引渡しではなく、別個の対抗要件が定められています。(例えば自動車の場合は登録が対抗要件)
また、「〇〇倉庫内の米〇俵」といった不特定物の遺贈については、遺言執行者が遺言の趣旨に適合した目的物を特定した時に初めてその遺贈の目的物の所有権移転の効果が生じ、受遺者は限定種類債権を有するとされます。

遺産分割の遡及効と第三者保護

民法909条は、「遺産の分割は、相続開始の時に遡ってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することができない。」とし、遺産分割に遡及効を認める一方で、遺産分割前に権利を取得した第三者の保護を行っています。
これは、相続開始から遺産分割前までの間に、第三者が当該遺産について利害関係を有することが少ないことから、遺産分割前に理解関係を有するに至った第三者を保護しようという趣旨です。
ここで、「第三者」とは、遺産分割前に共同相続人からその持分を譲り受けた者などをいいます。また、民法909条ただし書による保護を受けるためには、「第三者」の善意・悪意は問わないが、権利保護資格要件としての対抗要件を備えることが必要であると解されています。
以上を前提にすると、共同相続人の1人が、遺産分割前に自分の持分を第三者に処分し、第三者が対抗要件を具備した場合には、かかる第三者は、民法909条ただし書により保護されることになります。

法定相続分を超える持分取得と対抗要件

法定相続分を超えて財産を承継した共同相続人は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらす、法定相続分を超える部分について第三者に対抗するためには、対抗要件を備える必要がある旨が明文で規定されました。なお、民法899条の2第1項の規定は、各共同相続人が法定相続分の規定に従い有する持分については、対抗要件を備えなくても、当然に第三者に自己の権利を主張できることを前提としている点に注意が必要です。
遺言執行者が選任されている場合、相続人が相続財産を第三者に譲渡する等の処分を行うことはできません。これに反した相続人の処分は、無効となります。
しかし、例えば相続人が相続財産に属する動産を勝手に第三者に譲渡した場合、遺言執行者は、常に第三者に動産の引渡しを求めることができるとは限らず、第三者が遺言の存在や遺言の内容を知らずに動産を譲り受け、対抗要件としての引渡しも受けた場合、民法1013条2項ただし書にいう善意の第三者にあたり、遺言執行者は第三者に動産の引渡しを求めることはできないことになります。また、平成30年に改正された民法1014条2項では、遺言執行者が、特定財産承継遺言の遺言執行としては、受遺者への対抗要件具備に必要な行為をすることができる旨の規定が設けられました。
遺言執行者が対抗要件具備のためにどのような行為をすべきは、目的物の性質、相続発生当時の占有状態等の具体的状況によりますが、遺言執行者が何か対抗要件具備のための行為をしない場合、第三者が目的の動産を確定的に取得して遺言の内容が実現不能になってしまうおそれがありますので、注意が必要です。

まとめ

車両、船舶等、特別の対抗要件が定められているものを除き、動産の権利移転は、引渡しが対抗要件となります。
遺産分割には遡及効があるが、遺産分割前の第三者は民法909条ただし書により保護される場合があります。また、法定相続分を超える持分を取得した相続人は、遺産分割によるものかどうかにかかわらず、対抗要件なくして遺産分割後の第三者に対抗できず、遺言執行者が選任されている場合、遺言執行者は、受遺者への対抗要件具備を行う権限があります。
遺言や遺産相続について、後日トラブルが起こらないよう専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、遺言や相続について、多数ご相談を受けておりますので、お気軽にご相談ください。

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