相続にあたり、遺体や遺骨は相続の対象となるのでしょうか?今回はこのことについて解説します。
遺体・遺骨の所有権
遺体・遺骨の管理や承継を考えるに当たり、そもそも遺体・遺骨は所有権の客体になるかについて議論があります。遺骨は所有権の対象及び相続の対象にならない旨を判示した裁判例もありますが、遺体や遺骨も法律上は有体物に当たるといえ、所有権を観念することができると解されています。ただし、遺体や遺骨について有体物として所有権の対象となり得るとしても、その性質は通常の物とは異なるので、その所有権は、埋葬管理、祭祀供養等の目的の範囲でしか認められないと解されています。
遺体・遺骨の管理
遺体や遺骨が所有権の対象となるとしても、相続財産と区別されるかが問題となります。この点、被相続人の遺体・遺骨は、被相続人の死亡時に被相続人の財産に属する一切の権利義務とはいえず、相続財産には含まれないと解されています。
判例も、遺骨は遺産分割の対象とはならず、祭祀主宰者に帰属すると判示しています。
よって、遺体・遺骨は、遺産分割や形見分けの対象となる動産とは区別して管理すべきこととなります。
判例も、遺骨は遺産分割の対象とはならず、祭祀主宰者に帰属すると判示しています。
よって、遺体・遺骨は、遺産分割や形見分けの対象となる動産とは区別して管理すべきこととなります。
遺体・遺骨の埋葬又は火葬までの管理
火葬・埋葬までの期間中に被相続人の遺体を保管する場合は、遺体の損傷を防ぐために葬儀業者に安置を依頼することが一般的です。
遺体をそのまま土葬することを「埋葬」といい、遺体を葬るために焼くことを「火葬」といいます。火葬・埋葬は「墓地、埋葬等に関する法律」に従って執り行わなければならず、遺体・遺骨の保管や葬り方について同法に違反した場合は罰則の対象となりますので、十分に注意すべきです。すなわち、埋葬・火葬は、死亡後24 時間を経過した後でなければ行ってはならないとされます。埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならず、火葬は、火葬場以外の施設でこれを行ってはならないとされます。さらに埋葬、火葬・改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市区町村長の許可を受けなければならないとされます。市区町村長が、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならないとされ、焼骨を墳墓に葬るには火葬許可証が必要となります。
遺体をそのまま土葬することを「埋葬」といい、遺体を葬るために焼くことを「火葬」といいます。火葬・埋葬は「墓地、埋葬等に関する法律」に従って執り行わなければならず、遺体・遺骨の保管や葬り方について同法に違反した場合は罰則の対象となりますので、十分に注意すべきです。すなわち、埋葬・火葬は、死亡後24 時間を経過した後でなければ行ってはならないとされます。埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならず、火葬は、火葬場以外の施設でこれを行ってはならないとされます。さらに埋葬、火葬・改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市区町村長の許可を受けなければならないとされます。市区町村長が、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならないとされ、焼骨を墳墓に葬るには火葬許可証が必要となります。
墳墓に納められる前の火葬・埋葬前の遺体・遺骨の承継
墳墓に納められる前の遺体や遺骨の承継については議論がありますが、この点について最高裁判決は、宗教団体主宰者である被相続人夫婦の遺骨の所有権をめぐって、最期まで同居して世話をした信者と、被相続人の養子で先祖の墓を維持管理している者との間で埋葬前の遺骨をめぐって争いが生じ、養子が、信者に対して遺骨の引渡しを求めたという事案において、火葬・埋葬前の遺骨について、「原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件遺骨は慣習に従って祭祀を主宰すべき者である被上告人(養子)に帰属したものとした原審の判断は、正当として是認することができ」ると判示しています。
墳墓に納められている遺体・遺骨
既に墳墓に納められている遺体・遺骨(祖先の遺体・遺骨を含みます。)は、民法897 条の祭祀財産のうちの「墳墓」と一体的に扱われるものと考えられています。この考え方によれば、このような遺体や遺骨は祭祀財産に準じて扱うのが相当であり、被相続人による指定があればそれに従い、次に慣習があればそれに従い、指定又は慣習いずれも存在しない場合には、民法897条2項を準用して、家庭裁判所が遺骨の承継者を指定することができると解することになります。
改葬・分骨
改葬とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいいます。分骨と異なり、死体や遺骨の全部を他の墳墓に移すものです。これに対して分骨とは、遺骨の一部を他の墳墓又は納骨堂に分けて納骨することをいいます。なお、焼骨を墳墓から取り出して自宅に移すことは改葬には該当しません。
改葬を行う例としては、墓地使用者である遺族が新たに墓地を購入したため、死亡者の遺骨を新しい墓地へ改葬する場合、相続財産管理人が被相続人及びその一族の遺骨を公営墓地から民営の永代供養墓地へ改葬する場合、現在の墓地管理者が無断埋葬された遺骨を新規墓地へ改葬する場合等、様々であり、幅広い利害関係の者が「改葬を行おうとする者」に含まれる可能性があります。
改葬を行おうとする者は、①死亡者の本籍、住所、氏名及び性別、②死亡年月日、③埋葬又は火葬の場所、④埋葬又は火葬の年月日、⑤改葬の理由、⑥改葬の場所、⑦ 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者との関係等の事項を記載した許可申請書を、死体又は焼骨の現に存する地の市区町村長に提出して、許可を受ける必要があります。また、許可申請書には、墓地又は納骨堂の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面等を添付する必要があります。
市区町村長が改葬を許可する場合には「改葬許可証」を交付し、遺族らは、現在、遺骨かある墓地又は納骨堂の管理者に改葬許可証を提示して遺骨を受け取り、そして、遺骨の移動先の墓地又は納骨堂の管理者に改葬許可証を提出して遺骨を納骨します。
分骨には、①既に埋蔵又は収蔵してある遺骨の一部を分骨する場合と、②火葬場で埋蔵又は収蔵する前に分骨する場合の2種類があります。
①の場合には、墓地や納骨堂の管理者に分骨証明書を発行してもらい、墓石から分骨する遺骨の一部を取り出します。そして、分骨先の墓地の管理者や納骨堂の管理者に分骨証明書を提出し、納骨をします。他方、②の場合には、火葬場の管理者から火葬の証明書の発行を受ける必要があります。そ して、この火葬証明書を新たな墓地の管理者や納骨堂の管理者に提出をして、納骨をすることになります。
改葬を行う例としては、墓地使用者である遺族が新たに墓地を購入したため、死亡者の遺骨を新しい墓地へ改葬する場合、相続財産管理人が被相続人及びその一族の遺骨を公営墓地から民営の永代供養墓地へ改葬する場合、現在の墓地管理者が無断埋葬された遺骨を新規墓地へ改葬する場合等、様々であり、幅広い利害関係の者が「改葬を行おうとする者」に含まれる可能性があります。
改葬を行おうとする者は、①死亡者の本籍、住所、氏名及び性別、②死亡年月日、③埋葬又は火葬の場所、④埋葬又は火葬の年月日、⑤改葬の理由、⑥改葬の場所、⑦ 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者との関係等の事項を記載した許可申請書を、死体又は焼骨の現に存する地の市区町村長に提出して、許可を受ける必要があります。また、許可申請書には、墓地又は納骨堂の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面等を添付する必要があります。
市区町村長が改葬を許可する場合には「改葬許可証」を交付し、遺族らは、現在、遺骨かある墓地又は納骨堂の管理者に改葬許可証を提示して遺骨を受け取り、そして、遺骨の移動先の墓地又は納骨堂の管理者に改葬許可証を提出して遺骨を納骨します。
分骨には、①既に埋蔵又は収蔵してある遺骨の一部を分骨する場合と、②火葬場で埋蔵又は収蔵する前に分骨する場合の2種類があります。
①の場合には、墓地や納骨堂の管理者に分骨証明書を発行してもらい、墓石から分骨する遺骨の一部を取り出します。そして、分骨先の墓地の管理者や納骨堂の管理者に分骨証明書を提出し、納骨をします。他方、②の場合には、火葬場の管理者から火葬の証明書の発行を受ける必要があります。そ して、この火葬証明書を新たな墓地の管理者や納骨堂の管理者に提出をして、納骨をすることになります。
まとめ
遺体・遺骨の管理や承継にあたっては、次の点に注意しましょう。
(1)遺体・遺骨にも所有権を観念し得るが、埋葬管理、祭祀供養等の目的の範囲でしか認められない。
(2)遺体・遺骨は相続財産に含まれず、遺産分割の対象とならない。
(3)遺体・遺骨の埋葬又は央葬は、「墓地、埋葬等に関する法律」に従って行わなければならない。
(4)埋葬・埋葬前の遺体・遺骨は、祭祀を主宰すべき者に承継される。
(5)墳墓に納められている遺体・遺骨は、民法897条の「墳墓」と一体的と解され、祭祀財産に準じて承継される。
(6)改葬は、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を他の墳墓又は納骨堂に移すことを意味し、分骨は、遺骨の一部を他の墳墓又は納骨堂に分けて納骨することを意味する。
今回は、遺体・遺骨の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください
(1)遺体・遺骨にも所有権を観念し得るが、埋葬管理、祭祀供養等の目的の範囲でしか認められない。
(2)遺体・遺骨は相続財産に含まれず、遺産分割の対象とならない。
(3)遺体・遺骨の埋葬又は央葬は、「墓地、埋葬等に関する法律」に従って行わなければならない。
(4)埋葬・埋葬前の遺体・遺骨は、祭祀を主宰すべき者に承継される。
(5)墳墓に納められている遺体・遺骨は、民法897条の「墳墓」と一体的と解され、祭祀財産に準じて承継される。
(6)改葬は、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を他の墳墓又は納骨堂に移すことを意味し、分骨は、遺骨の一部を他の墳墓又は納骨堂に分けて納骨することを意味する。
今回は、遺体・遺骨の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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