
農業に従事しない者に対して農地の譲与が可能かについて解説します。
今回の事例

乙は会社員で農業は全く行っていない。乙の父親甲は乙に農地を贈与したいと言っている。乙は農地の贈与を受けることはできるでしょうか。
農業に従事していない者の農地譲受の可否
乙は、現在、会社員であり、今後とも会社員を続けて、農業を行うつもりはないという前提で解説します。乙が甲から贈与によって農地の所有権を取得しようとする場合、農地法3条により原則として農業委員会の許可が必要となります。この、農地法の許可がないと甲と乙が贈与契約を締結しても農地の所有権移転という効果は発生しません。農地を取得しようとする者またはその世帯員等が取得後において耕作または養畜の事業に供すべき農地のすべてについて耕作または養畜の事業を行うと認められない場合には農地法3条の許可はできないことになっています。したがって、乙のように会社員を続けて農業を行うつもりのない方は農地譲受適格がないため農地法3条の許可は得られません。
贈与契約の効力
農地法3条の許可は法律が特別に規定した必要条件ですから、この許可がない限り所有権移転の効力は発生しません。しかし、贈与を受ける側(受贈者)に農地譲受適格がないために農地法3条の許可が得られない場合であっても、甲と乙との贈与契約が法律上無効となるわけではありません。
したがって、仮に甲と乙との間で贈与契約が締結された場合には、贈与した側(贈与者)は受贈者に対して、農地法3条の許可を受けて農地の所有権を移転する義務を負うことになります。乙は甲に対して、「農地法3条の許可を得て贈与の対象となった農地の所有権を移転せよ」という権利を有することになります。
そして、乙はこの契約上の権利を第三者に売却することも可能になるという下級審の判例もあります。
将来、乙が会社員を辞めて、甲の後継者になるなどして農地の取得適格を備えた場合には契約の履行を求めることになるのでしょう。ただし、この権利は、10年の消滅時効にかかるという判例があります。
したがって、仮に甲と乙との間で贈与契約が締結された場合には、贈与した側(贈与者)は受贈者に対して、農地法3条の許可を受けて農地の所有権を移転する義務を負うことになります。乙は甲に対して、「農地法3条の許可を得て贈与の対象となった農地の所有権を移転せよ」という権利を有することになります。
そして、乙はこの契約上の権利を第三者に売却することも可能になるという下級審の判例もあります。
将来、乙が会社員を辞めて、甲の後継者になるなどして農地の取得適格を備えた場合には契約の履行を求めることになるのでしょう。ただし、この権利は、10年の消滅時効にかかるという判例があります。
相続について
乙が会社員であっても甲から農地を相続することはできます。相続については、「農地を相続するときに農地法の許可は必要か」をご参照ください。
まとめ

(1)農地法の許可がないと贈与契約を締結しても農地の所有権移転という効果は発生しない。
(2)農地法3条の許可は法律が特別に規定した必要条件
(3)農地を取得しようとする者が取得後において耕作または養畜の事業を行うと認められない場合は農地法3条の許可はできない。
(4)農地の取得適格を備えた場合には契約の履行を求めることができる。
今回は、農業に従事しない者に対して農地の譲与が可能かについて解説しました。当事務所は、農地の相続や遺言について、多数の実績がありますのでお気軽にご相談ください。
具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください
(2)農地法3条の許可は法律が特別に規定した必要条件
(3)農地を取得しようとする者が取得後において耕作または養畜の事業を行うと認められない場合は農地法3条の許可はできない。
(4)農地の取得適格を備えた場合には契約の履行を求めることができる。
今回は、農業に従事しない者に対して農地の譲与が可能かについて解説しました。当事務所は、農地の相続や遺言について、多数の実績がありますのでお気軽にご相談ください。
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