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農地について遺留分を主張するにはどうしたらよいでしょうか?

農地について遺留分を主張することについて解説します。

今回の事例

甲の遺産は農地しかなく、その農地は甲ともに農業に従事していた長男丙に遺贈されています。そのため二男の丁の相続分がありません。丁が遺留分の権利を主張するには、どのように行えばようでしょうか。(妻乙は甲が死亡する前に死亡しています。)

遺留分侵害額請求権

被相続人甲の子である丁には遺留分が存在します。遺留分とは、被相続人の相続財産のうち一定の割合を相続人に与えるようにした制度をいいます。事例では相続人が被相続人の子供二人ですから、2分の1が相続人の全員の遺留分となり、あなたの遺留分は、その2分の1で遺産の4分の1になります。
しかし、遺留分という制度があっても当然にその権利を確保できるというわけではありません。被相続人が、遺贈または贈与を行った結果、遺留分権利者である相続人の受ける相続財産の価額が遺留分とされる額に満たないことになると、遺留分の侵害を生ずるので、その相続人は、遺留分の額に達するまで、相続財産上の利益を留保または回復して、遺留分を保全することができます。遺留分権利者は、遺留分を侵害する遺贈または贈与について遺留分の保全に必要な限度で侵害額請求することができる権利「遺留分侵害額請求権」が認められているにとどまります。遺留分侵害額請求権を行使するか否かは遺留分権利者の自由な意思にゆだねられています。

遺留分侵害額請求権の行使方法

遺留分侵害額請求権は、丙に対する意思表示によって行います。遺留分侵害額請求をするにあたっては、後日の証拠とするため内容証明郵便で行われることが一般的です。遺留分侵害額請求権の法的性格の理解については、学説上、争いがありますが、遺留分侵害額請求権が行使されると、遺留分侵害行為の効力は消滅し、目的物上の権利は当然に遺留分権利者に復帰すると解する立場が一般的です。この立場によれば、遺留分侵害額請求権を行使すれば、遺留分を侵害している部分については、絶対に効力を失うから、相続人は処分の目的財産か遺贈・贈与の相手方に給付されていない場合には、相手方からの請求を拒むことができます。すでに、相手方に給付されてしまった場合には、目的物を返還するよう求めることができます。

遺留分の算定基準

遺留分の算定の基礎となる相続財産には、被相続人死亡時に残っていた財産の他に次の4つの贈与を合わせたものから被相続人の負債を差し引くことによって算定されます。
①相続開始前の1年間の間になされたすべての贈与
②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは相続開始の1年以上前にしたもの
③受遺者が相続人である場合に婚姻や生計の資本として特に被相続人から贈与を受けていた場合(特別受益)
④当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って不相当な対価をもってした有償行為(たとえば時価よりも著しく低い価額で売却された場合には、その価格と時価との差額を遺留分算定の基礎となる贈与とみなしています。) これらを客観的に評価して各自の遺留分の割合が算出されます。

遺留分侵害額の順序と特別受益

遺留分侵害額については順序があり遺贈を侵害額請求した後でなければ、贈与を侵害額請求することはできませんし、贈与の侵害額請求については後の贈与から始め、順次に前の贈与に及ぶと規定されています。遺留分侵害額請求は新しいものから順番に行われていくことになります。
事例では、被相続人甲の遺産は農地だけで、それがすべて丙に遺贈されているわけですから、原則として遺留分侵害額請求の対象となると考えられます。
ただし、例えば丙が高校を出てすぐ甲の農業を手伝っているのに対して、丁は大学を出て会社員になっているような場合、大学卒業までの学資等が特別受益であると判断され、その価額が算出された遺留分の価額を上回っている場合には、そもそも遺留分の侵害がないので侵害額請求は認められません。
具体的にいえば、農地の評価が 1 , 500万円で、学資が500万円の場合遺留分の基礎は、1 , 500万円+ 500万円= 2 , 000万円で、遺留分はその4分の1 の500万円ですが、既に500万円の特別受益かあるので、遺留分の侵害がないということです。

遺留分侵害額請求権の消減時効

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始および侵害額請求すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから、1年間行わないときは時効によって消滅してしまいますから注意してください。

まとめ

(1)遺留分の保全に必要な限度で侵害額請求することができる。
(2)遺留分侵害額請求権が行使されると、遺留分侵害行為の効力は消滅する。
(3)被相続人死亡時に残っていた財産に贈与を合わせ、被相続人の負債を差し引いて算定する。
(4)遺贈を侵害額請求した後でなければ、贈与を侵害額請求することはできない。
(5)贈与の侵害額請求については後の贈与から始め、順次に前の贈与に及ぶ。
(5)遺留分侵害額請求は新しいものから順番に行われていく。
今回は、農地について遺留分を主張することについて解説しました。当事務所は、農地の相続や遺言について、多数の実績がありますのでお気軽にご相談ください。

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