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財産分与・慰謝料請求権がある場合、相続はどのようにしたらよいでしょうか?

被相続人が離婚しており、元配偶者に対する財産分与請求権及び慰謝料請求権がある場合、管理・承継に当たってどのような点に注意すべきしようか。

離婚に伴う財産分与請求権及び慰謝料請求権

離婚の財産上の効果として、離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます。
また、相手方が有責配偶者である場合における離婚においては、当該有責配偶者が不法行為の要件を満たせば、他方配偶者は有責配偶者に対して慰謝料の請求ができます。
これらの離婚に伴う財産分与請求権や慰謝料請求権を被相続人が有しているか否かは、例えば、相続人の確定の際に除籍謄本等を確認した際に、被相続人が最近離婚していることが分かった場合などに問題となります。
なお、相続開始時に離婚が成立していない場合には、離婚に伴う財産分与請求権や離婚に伴う慰謝料請求権は生じていないことになりますので、相続財産とはなり得ません。この点、離婚調停中に死亡した夫の相続人らが、妻に対し財産分与を求めた事件において、離婚が成立するより前に夫婦の一方が死亡した場合には、離婚が成立する余地はないから、財産分与請求権も発生することはなく、そのことは、夫婦の一方の死亡前に、その者から離婚調停が申し立てられ、財産分与を求める趣旨が明確にされていた場合でも同様であるから、死亡した夫の妻に対する財産分与請求権は発生せず、夫の相続人らがこれを相続により取得することはできないとした裁判例があります。

離婚に伴う財産分与請求権及び慰謝料請求権の調査方法

被相続人か元配偶者に対して離婚に伴う財産分与請求権や慰謝料請求権を有しているかを調査する方法は、財産分与請求権や慰謝料請求権が具体化しているか否かによって異なります。
調停や訴訟手続を経て被相続人の離婚が成立している場合には、当該離婚に伴って、財産分与や慰謝料の内容が定められている可能性があります。
そこで、被相続人の自宅に当該裁判記録がないか確認したり、当該訴訟を担当していた弁護士がいれば、担当の弁護士に問合せをしたりすることが考えられます。他方で、いまだ財産分与請求権や慰謝料請求権が具体化していない場合、例えば、協議離婚だけが成立しており、財産分与や慰謝料をめぐって交渉中であった請求権者 が死亡した場合、相続人としては、当該交渉に係る記録等を確認して、担当の弁護士 が就任していれば、担当の弁護士に問合せをすること等が考えられます。

請求の可否の検討

損害の賠償は相続性を認めるのが最高裁判所の考えです。したがって、財産分与請求権の3つの要素に鑑みると、財産分与請求権の一定要素については相続性が肯定されると解されます。
この点、裁判例は、基本的抽象的な財産分与請求権は相続の対象とならないが、財産分与の権利者が財産分与の具体的内容を確定させる前に死亡してしまった場合であっても、財産分与の意思が表示された後の財産分与請求権は普通の財産権と化しており、相続性が認められるとしています。
慰謝料請求権の相続性について、交通事故の判例ではありますが、被害者の慰謝料請求権は、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となり得ないと解すべき法的根拠はなく、その相続人が当然に慰謝料請求権を相続すると判示しました。
なお、既に財産分与がなされた場合においても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解されないか、又は、その額及び方法において分与請求者の精神的苦痛を慰謝するに足りないと認められるものであるときは、相手方の不法行為を理由として離婚による慰謝料請求が認められています。

離婚に伴う財産分与請求権及び慰謝料請求権の除斥期間

財産分与の請求を調停や審判で行う場合には、離婚の時から2年以内に請求しなければなりません。この2年間は除斥期間とされていますので、注意が必要です。
また、慰謝料請求権は、不法行為に基づく損害賠償請求権として、離婚した時から3年間経過すると時効にかかり、時効援用がなされる可能性があります。

離婚に伴う財産分与請求権等の評価の方法等

財産分与請求権等を相続する場合、その評価は、金銭であればその金額、不動産であれば不動産の評価額とすることが一般的です。

請求する場合の方法

被相続人の離婚に伴う財産分与請求権や慰謝料請求権を相続した相続人は、被相続人の元配偶者に対して請求をしていくこととなります。具体的には、まずは協議を行い、財産分与についての協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができます。 ここで、処分とは審判手続をいいますが、通常は、調停を経るのが一般的です。

まとめ

相続財産の中に、財産分与・慰謝料請求権がある場合、管理や承継は次の点を注意します。
(1)離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与や慰謝料を請求する権利を有することがある。
(2)裁判記録の確認や担当弁護士等に問合せをして、財産分与請求権や慰謝料請求権の有無を確認する。
(3)財産分与請求権及び慰謝料請求権は相続の対象となる。
(4)財産分与の請求を調停や審判で行う場合には、離婚の時から2年という除斥期間がある。また、離婚の時から2年以内に、離婚に伴う慰謝料請求は離婚から3年以内に請求をしないと時効の援用がなされる可能性がある。
(5)財産分与請求権の評価は金額・不動産評価額等を勘案して評価を行う。
(6)財産分与や慰謝料についての協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができる。
今回は、相続財産の中に、財産分与・慰謝料請求権の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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