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被相続人の罰科金の債務は相続されるのでしょうか?

被相続人の罰科金の債務は相続されるのでしょうか。また、罰科金の債務の管理・承継に当たってどのような点に注意すべきでしょうか。今回はこのことについて解説します。

罰科金の債務の有無と内容の確認

被相続人が罰科金を納付する義務を負っていたかどうかについては、次のような方法で確認します。
①相続人、受遺者、被相続人の生前に被相続人の介護をしていた者等、被相続人の生活状況をよく知る者に面会し、事情聴取します。
②被相続人宛に届いた郵便物や、被相続人が保管していた書類を確認します。交通違反の場合には交通反則告知書及び納付書・領収証書や、検察庁からの納付告知書及び納付書、督促状等の書類により、罰科金を納付する義務を負っていたことが分かることがあります。
被相続人が罰科金を納付する義務を負っていたことが確認できた場合、この罰科金納付義務の内容を、検察庁、行政庁等に問い合わせて確認します。
なお、罰科金とは、罰金、科料及び過料をいいます。
罰金:刑法に定められた財産刑の一種。1万円以上。ただし、1万円未満に軽減可。完納することができないときは、1日以上2年以下の期間、労役場に留置する。
科料:刑法に定められた財産刑の一種。1,000円以上1万円未満。完納することができないときは、1日以上30日以下の期間、労役場に留置する。
過料:法律により定められた金銭罰の一種。

罰科金の債務の相続性

相続人は、被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に帰属した一切 の権利義務を承継します。
罰科金の債務については、被告人(被相続人)に対して一身専属的に及ぶものであることから、相続人に承継されません。

相続財産について執行される場合

刑事訴訟法491条は、「没収又は租税その他の公課若しくは専売に関する法令の規定により言い渡した罰金若しくは追徴は、刑の言渡を受けた者が判決の確定した後死亡した場合には、相続財産についてこれを執行することができる」と規定しています。租税その他の公課又は専売に関する法令の規定により言い渡した罰金刑は、課税等の公平を期し、不正に得た利得を剥奪することを目的とするものであり、国家財政の確保という側面もあることから、不正の利得を承継している相続財産に対し執行できるとされたものです。
租税に関する法令の規定により言い渡した罰金とは、所得税法、法人税法、相続税法、関税法等の違反について言い渡された罰金のことをいいます。
また、「公課」とは、国又は公共団体がその公の目的に課するもののうち租税以外のものをいい、公課に関する法令の規定により言い渡された罰金とは、例えば、健康保険法208条違反、厚生年金保険法102条違反等に係る罰金があります。
なお、専売に関する法令の規定により言い渡された罰金としては、旧塩専売法、旧アルコール専売法等の違反に対する罰金がありましたが、これらの法令は廃止されたため、現在はこれに該当するものは見当たりません。
上記の「刑事訴訟法491条で定める事由」に該当し、「刑の執行が免除されて」いない場合には、相続人に対し、被相続人に言い渡された罰金の納付が求められることになります。共同相続の場合には、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します。被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人が法定相続分に応じてこれを承継するものと解されていますので、各共同相続人には法定相続分に応じた罰金の納付が求められます。そして、相続人がこれに応じなかった場合には、相続財産について刑の執行がなされます。

刑の執行免除

罰金刑の場合、刑の言渡しが確定した後、3年その執行を受けないことにより、時効が完成します。時効により罰金刑の執行が免除されていることがありますので、注意が必要です。

まとめ

罰科金の債務の管理や承継にあたり次の点を注意します。
(1)被相続人が罰科金を納付する義務を負っていたかを確認し、負っていた場合はその内容を確認する。
(2)罰科金を納付する義務は、承継されない。
(3)特定の財産刑等につき刑の言渡しを受けた者が判決確定後に死亡した場合は、その相続財産について刑を執行されることがある。
今回は、罰科金の債務の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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