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被相続人が開設していたSNSの管理や承継はどうしたらよいのでしょうか?

被相続人が開設していたSNSのアカウントがあります。これについて、相続人はどのように対応したらよいでしょうか。今回は、SNSの管理や承継について解説します。

SNSの種類・内容などの調査

SNSはSocial Networking Service (ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の略で、インターネットを介して人間関係を構築できるスマートフォンやパソコン用の Webサービスの総称です。SNSは、本来個人間のコミュニケーションの円滑化・活性化が主たる目的ですが、近年では、各国の企業や政府機関など多々な分野においてその利用が進み、代表的なSNSであるFacebook、Twitterなどは、情報発信ツールとして、地域における情報格差の解消等々のためにも利用されています。
SNSの会員であった被相続人のアカウント上には、一般的に写真やメッセージ等、多くの情報が残されているため、アカウント自体や写真、メッセージ等も遺産として相続の対象になるかが問題となります。パソコンのハードディスクやUSBメモリーなどの記録媒体に保存されている写真やメッセージ等は、実体のある手紙などと同じで、相続財産として認められます。しかし、SNSのアカウント上にのみ存在する写真やメッセージ等は、SNS運営者と第三者たる通信相手も関与しており、また通信の秘密や第三者の権利等から、これら全てが直ちに相続財産といえるかは十分な検討が必要です。なお、写真やメッセージの著作権等の問題にも注意が必要です。
また、被相続人の一身に専属する権利義務は相続できないため、アカウント上に残ったコンテンツの内容等や故人の意思、SINSの規約等を基準に一身専属性の有無について、別途検討することも必要です。
これらを判断すると、まず、被相続人がSNSのアカウントを持っていたかどうか、また、持っていたとしてそのSNSの種類や内容などについて確認することが必要であるため、被相続人のパソコンやスマートフォンを確認し、また、友人や家族に対してヒャリング調査をします。

SNSの種類や利用規約の確認

一般的にSNSのビジネスモデルは、インターネット広告により収益を得るモデルや、ユーザーに課金するモデル、さらには、SNS内での広告収入や課金収入に頼るのではなく、自社・他社問わず他のサイトに誘導、あるいは連動させることにより得られる相乗効果に課金する等のモデルがあります。
このようにSNSには様々な種類・モデルがあるので、SNSの利用を開始するためのアカウント作成時点で、ユーザー側で上記SNSの有償、無償その他SNS側から提供されるサービスを選択し、当該SNSの利用規約の内容を承諾することか必要となっています。そのため、相続開始時点でのアカウントの存続やアカウント上に存在する写真やメール等々の取扱いや承継可能性等については、原則として規約の内容を前提に判断することとなります。
SNSは、通常、アカウントを登録したユーザー本人のみがアクセスを許されており、自分や身内に万が一の事があったとき、これらの重要な情報がどのように扱われるかについて、規約に記載されていることが多いので、被相続人が利用していたSNSの種類や、その規約を調べ、アカウントの取扱いについて確認することが必要です。これから、一般的なSNSである、Facebook (フェイスブック)、Twitter (ツィッター)、 Instagram (インスタグラム)を例に挙げ、これらのアカウントの扱いについて検討します。

一般的なSNSの運用

Facebook、Twitter、Instagramは、無償で利用することができるサービスです。そしてこれらの各規約上は、アカウントはその保有者の一身に専属し、死亡後は、原則削除されるか、又は、追悼アカウントの仕組みを設けている場合は、追悼アカウントによって制限的に管理運用されることとなっています。

Facebook

Facebookの規約では、アカウント保有者が、生前、自分が死亡した場合、追悼アカウント管理人を指名して追悼アカウントの管理を任せるか、Facebookからアカウントを完全に削除するかのいずれかを選ぶことができます。同人が後者を選択した場合は、アカウント上に残っていたコンテンツも含め、アカウントが削除されます。アカウント保有者が前者を選択した場合、アカウントは追悼アカウントに移行し、写真や投稿などコンテンツはFacebookにそのまま残り、シェアしていた者は、追悼アカウント管理人の管理下で、引き続きそのコンテンツを見ることができます。
追悼アカウント管理人は、プロフィール写真やカバー写真を更新したり、アカウントの削除をリクエストすることができますが、アカウントにログインしたり、メッセージを読んだり、友達を削除、追加等することはできません。なお、生前にアカウント保有者が選択していれば、追悼アカウント管理人がFacebookでシェアしたコンテンツのコピーをダウンロードできますが、あくまでこれらは、元のアカウント保有者の意思によるものです。
なお、アカウント保有者が、生前何らの選択もしていなかった場合、死亡の事実を Facebookが認識した時点で、自動的に追悼アカウントに移行され、従前シェアしていた者のみがアカウント上のコンテンツを見ることができます。

Twitter

Twitterでは家族や正式な代理人からの請求で故人のアカウントを停止することができます。リクエストページで故人のアカウント削除のリクエストを選択し、名前、申請者の名前や連絡先、故人との関係を記入して送信し、その後Twitter側の指定する必要な書類(申請者の身元が確認できる書類、故人の死亡通知書等)等を提出してアカウントの削除を行います。

Instagram

Instagramは、Facebookと同様に、家族や代理人の申請により追悼アカウントへ移行し、ユーザーのページをそのまま保存したり、アカウント削除を依頼したりできます。

運用上の注意事項

SNSの規約上の扱いでは、アカウント上のコンテンツを含め、当該アカウントを運用、管理する一切の権利義務は、その保有者の一身に専属するものであり、同人が死亡した場合、相続人であっても、権利義務は包括的に承継せず、アカウントは削除されるか、追悼アカウントの仕組みを設けている場合は、追悼アカウントとして制限的に管理運用されることとなっています。
SNSの扱いは、それぞれのSNSによって異なるため、いずれにしても被相続人が利用していたSNSの規約を確認することが必要です。

SNS運営者へのアカウント保有者が死亡した事実の通知

アカウント保有者が亡くなったままの状態でアカウントが放置されると、第三者がアカウント上に虚偽の情報等を投稿する等、不適切に変更される危険があるため、相続人としては、SNS運営者にアカウント保有者が死亡した事実を通知する必要があります。なお、同時にアカウント保有者が死亡時のアカウントに対する意向を表明しているか否かを確認し、その意向に沿って適宜手続を進めることが肝要です。

アカウントの削除、追悼アカウントへの移行手続

被相続人が、自分が死亡した時点でアカウントの削除を希望するか、追悼アカウント管理人を指定している場合は、特段の事情がない限り、その意向に従って対応するべきです。仮に、故人が何らの意思を示していなかった場合、若しくは追悼アカウント管理人が指定されていたとしても、同人が追悼アカウントの管理を引き受けないといった事情がある場合には、当該アカウントについて、相続人間で協議し、追悼アカウントとして維持するか、又は削除するかを決定します。

追悼アカウントに対するアクセスのSNS運営者への請求

相続人が、アカウントの存在を把握したとしても、何らかの事情で、アカウントが既に削除されてしまっていた場合、又は既に追悼アカウントに移行されてしまっているような場合には、相続人は、追悼アカウントにアクセスする権利を有している場合を除き、被相続人のアカウント上のコンテンツや情報にアクセスできないことになります。相続人として、被相続人のアカウントにアクセスして、同アカウント上の情報を確認する必要がある場合などは、SNS運営者に連絡をしてアカウント上のコンテンツにアクセスできるよう依頼することが考えられます。
しかし、SNS運営者側としては、被相続人の意思、データ保護理念、通信の秘密などの理由から安易に認めることはできないとする対応が大勢です。
ちなみにFacebookの規約では、例外的に、正式な代理人である証明と裁判所からの命令等を提出すれば、追加のアカウント情報やコンテンツへのアクセスについて検討することもあるとしています。故人のアカウントへのアクセス請求権が相続人に帰属するか否かについて、ドイツの裁判所は、相続に基づく包括承継を理由にこれを肯定しています。

まとめ

被相続人が開設していたSNSの管理や承継は、次の点を注意します。
(1)被相続人のSNSのアカウントの有無を調査する。
(2)アカウントがあるSNSの種類や利用規約を確認する。
(3)SNS運営者にアカウント保有者が死亡した事実を通知するとともに、同人のアカウントについての意向を確認する。
(4)被相続人の意向に従い、アカウント削除、若しくは追悼アカウント移行の手続を行う。
(5)追悼アカウントに移行しアカウントにアクセスできない場合は、必要に応じて、アカウントに対するアクセスをSNS運営者に請求する。
今回は、被相続人が開設していたSNSの管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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