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被相続人が、生前に第三者に対して貸し付けた金銭がったあった場合はどうしたらよいでしようか?

被相続人が、生前に第三者に対して貸し付けた金銭がったあった場合、どのような点を注意したらよいでしようか。今回は、貸金債権の管理と承継について解説します。

貸金債権が存在することの確認

遺産を管理する者(遺言執行者や相続人等)は、貸金債権に関する金銭消費貸借契約、借用書、一部返済がされていれば領収書の控え、これまでの請求書面、預金通帳、確定申告書等の書類を収集して、貸金債権の存在を確認します。また、必要に応じて、相続人や債務者に面会して、貸金債権の存在、内容等について調査します。

債権が存在することを証する資料の管理、保管

遺産を管理する者は、承継の対象となった貸金債権の存在を確認したら、その承継 が終わるまで債権を管理する必要があります。貸金債権の場合は、その存在を裏付ける金銭消費貸借契約、領収書等の書類を保管することによって管理します。個々の相続人がこの書類を保管している場合には、遺産を管理する者は当該相続人に対しその書類の引渡しを求めます。

相続の対象となる貸金債権の管理

貸金債権は、可分債権として法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継しますので、貸金債権の弁済期が到来している場合には、原則として、各相続人が支払を受け、受領した金員を管理等するのが原則です。ただし、貸金債権は、相続人全員の合意により遺産分割の対象とすることができますので、遺産を管理する相続人が、相続人全員の合意に基づき、債務者に対して弁済を求め、受領した金員を管理する等、貸金債権を保全・実現することができます。
また、貸金債権は、発生してから10年で消滅時効にかかります。そのため、貸金債権を管理する場合には、管理している期間中に消滅時効が完成して、債務者により援用されることを防がなければ、債権の時効消滅により相続財産を減少させることになりますので、注意が必要です。
なお、貸金債権が令和2年4月1日以降に契約された金銭消費貸借契約に基づき発生したものである場合には、平成29年法律号改正後の民法の消滅時効の規定が適用されますので、①債権者が権利を行使することかできることを知った時から5年間行使しないとき、②権利を行使することができる時から10年間行使しないときに時効により消減します。
貸金債権について、裁判上の請求、支払督促、和解・調停、破産手続参加等、強制 執行、担保権の実行等の事由がある場合には、当該事由が終了するまでの間、時効の完成は猶予されます。また、仮差押え、仮処分の事由がある場合は当該事由が終了した時から6か月を経過するまでの間、催告があったときはその時から 6か月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます。さらに、債務者との間で、貸金債権についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、一定期間、時効の完成が猶予されます。そして、確定判決等によって権利が確定したとき、強制執行等が終了したとき、権利の承認があったときには、時効は更新され、新たにゼロから時効期間がスタートすることになります。そのため、遺産を管理している間に、時効期間を経過する可能性がある場合には、上記の方法により時効の完成を猶予させるか更新させる必要があります。

貸金債権の承継

金銭債権のような可分債権は、遺言があればその内容に従い、遺言がなければ相続開始によって相続分の割合に応じて当然に分割され、各相続人に承継されます。
ただし、相続人間の合意で遺産分割の対象として扱うことも可能ですので、その場合は、遺産分割協議の結果に基づいて相続されることになります。

貸金債権の承継における対抗要件

貸金債権等の金銭債権を相続承継した場合の対抗要件について、平成30年改正前の民法においては、特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)及び遺言による相続分の指定の場合には、不動産の場合と同様に、法定相続分を超える部分についても対抗要件なくして第三者に対抗できると解されています。また、特定遺贈(例えば、「債務者に対する100万円の債権を相続人Aに遺贈する」旨の遺言)の場合には、民法 467条に定める対抗要件を具備しなければ債務者又は債務者以外の第三者に対抗できないと解されています。
しかしながら、改正後の民法では、遺産の分割及び遺言の場合を含めて、法定相続分を超える承継については全て対抗要件主義を採用することとしました。
すなわち、民法899条の2第1項は、債権の承継を含む権利の承継は、遺産の分割及び遺言の場合を含め、法定相続分を超える部分については、登記、登録、その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないことを定めています。したがって、法定相続分を超える部分については、民法467条に定める対抗要件を備える必要があります。具体的には、被相続人の地位を包括承継した共同相続人全員による債務者への通知又は債務者の承諾が必要であり、さらに、債務者以外の第二者にも対抗するためには、当該通知及び承諾は確定日付ある証書によって行うことが必要となります。そしてさらに、民法899条の2第2項では、法定の相続分を超えて債権の承継をした受益相続人(遺言や遺産分割により相続財産を取得した者)が、単独で通知することでも、民法899条の2第1項に定める対抗要件を具備する旨を定めています。そして、受益相続人が単独で通知をする場合、遺言の内容を明らかにすることが必要とされています。具体的には、債務者が、客観的に遺言や遺産分割の有無、その内容を判断できるような方法をもって通知することで足りるものと考えられます。

まとめ

被相続人が、生前に第三者に対して貸し付けた金銭がったあった場合、次の点を注意します。
(1)貸金債権に関する金銭消費貸借契約、借用書、一部返済がされていれば領収書の控え、これまでの請求書面等の書類を収集して、貸金債権の存在を確認する。
(2)貸金債権の場合、その存在を裏付ける金銭消費貸借契約、領収書等の書類を保管することによって管理する。
(3)必要に応じて催告をするなどして貸金債権が時効消滅することを防ぐ。
(4)貸金債権は原則として相続開始によって相続分の割合に応じて当然に分割され、各相続人に承継される。
(5)法定相続分を超える貸金債権を承継した旨を債務者に対抗するためには、相続人が承継した旨を債務者に通知するか、債務者の承諾を得る必要がある。
今回は、貸金債権の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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