BLOG ブログ

行方不明の共同相続人がいるときの遺産分割はどうしたらよいのでしょうか?

行方不明の共同相続人がいるときの遺産分割はどのようにするか解説します。

今回の事例

被相続人甲から農地を丙丁戊3人で相続することになりましたが、丙は数年前に家を出たまま行方不明となっています。この農地を丁と戊で分割することはできないでしょうか。なお、乙は甲の相続前に死亡しています。

共同相続人の1人の行方不明

丙が行方不明であっても、丙は法定相続人3人のうちの1人ですから、丁と戊だけで遺産分割をすることはできません。丙は、数年間行方不明のため家庭裁判所に不在者の財産管理人を選任するよう請求し、その財産管理人との間で遺産分割の協議をすることになります。また、遺産分割協議が成立しない場合には、家庭裁判所に調停・審判を求めることになります。

遺産分割協議の必要性

丙が行方不明になっていたとしても、甲の子であり、丁や戊と同様に甲の法定相続人の1人であることにはかわりません。遺産分割をするためには、共同相続人の協議が必要ですから、丙を無視して丁と戊とで遺産分割をすることはできません。丙を除いて遺産分割協議をしてもそのような協議は無効とされるでしょう。
しかし、丙は行方不明になっているわけですから、現実には丙と遺産分割についての協議をすることはできません。法律はこのような場合に備えて、不在者の財産管理という制度を規定しています。

不在者の財産管理制度

丙が行方不明のためいつまでたっても遺産分割ができないとする と、売却もできないまま遺産を放置することになってしまうことになり、遺産の目的物の価額が低下する可能性もあるので明らかに不合理です。そこで、不在者の財産管理をするための制度が必要になります。それが、不在者の財産管理人の選任の申立です。この制度は、行方不明となってしまった者が財産を残している場合に利害関係人・検察官が家庭裁判所に対して財産管理人の選任を求めることができるというものです。「不在者」とは従来の住所や居所から立ち去ってしまった者をいいます。不在者の財産管理制度は不在者が残していった財産について適正に管理することを目的とする制度です。
不在者の財産管理とは別に、失踪宣告という制度もあります。失踪宣告とは7年間生死不明になっている人間について死亡したものとみなす制度です。しかし、不在者の財産管理と失踪宣告とは制度の性質を異にしていますから、「不在者」といえるためには行方不明になっている者が生死不明である必要はありません。丙がどこかで生きてはいても、何処にいるのか分からない場合であっても「不在者」ということができます。そして、丁と戊は不在者である丙と遺産分割協議をしなければなら ないわけですから、法律上の「利害関係人」にあたります。したがって、丁と戊は家庭裁判所に対して、不在者の財産管理人の選任を請求することができます。
具体的には、丙の住所地を管轄する家庭裁判所に財産管理人の選任を求めることになります。もし、住所がわからないときは居所が、住所も居所もわからない場合には、最後の住所地の家庭裁判所に財産管理人の選任を求めることになります。
財産管理人の権限は、原則として、不在者の財産についての保存行為、利用または改良行為を行うことですが、裁判所の許可を得れば遺産分割協議のように財産を処分する行為を行うことも可能になります。

財産管理人との分割協議

不在者の財産管理人が遺産について分割協議をする方法として、①財産管理人が分割協議の内容についてあらかじめ家庭裁判所の許可をとってから丁と戊の3人で分割協議書を作成する方法、②財産管理人との間であらかじめ分割協議書を作成しておいて、その内容について財産管理人か家庭裁判所の許可を求めるという方法があります。

分割協議がまとまらなかった場合

遺産分割の協議がまとまらなかった場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停または審判を求めることになります。調停というのは話合いの手続ですから、財産管理人との間で調停を成立させる場合には、遺産分割協議と同様に裁判所の許可が必要になりますが、審判の場合は、家庭裁判所が判断を行う「裁判」の一種ですから、財産管理人の行為についてあらためて家庭裁判所の許可は必要ではありません。

まとめ

(1)家庭裁判所に不在者の財産管理人を選任するよう請求し、財産管理人との間で遺産分割の協議をする。
(2)遺産分割協議が成立しない場合には、家庭裁判所に調停・審判を求める。
(3)財産管理人は裁判所の許可を得れば遺産分割協議のように財産を処分する行為を行うことも可能。
今回は、行方不明の共同相続人がいるときの遺産分割について解説しました。当事務所は、農地の相続や遺言について、多数の実績がありますのでお気軽にご相談ください。

具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください

CONTACT
お問い合わせ

ご相談は無料です。
お気軽にお問い合わせください。