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葬儀費用は誰が負担すべきでしょうか?

葬儀費用は葬儀の主宰者が負担すべきでしょうか、それとも共同相続人全員の負担とすべきでしょうか。葬儀費用の負担者について、関係者間で意見の対立がある場合、どのような手続により解決すべきでしょうか。今回はこのことについて解説します。

葬儀費用

葬儀費用とは、葬式を執り行うに当たり直接必要となり得る費用をいいます。葬儀費用には、寺社や教会などへ支払う戒名料や読経料、火葬や納骨にかかる費用、死体や遺骨の運搬にかかった費用、式場設営費などが含まれると考えられます。他方で、香典返しのためにかかった費用、墓地の借入料や墓碑や位牌の購入費、四十九日や一周忌の法要にかかる費用などは葬儀費用には含まれないと解されています。

葬儀費用の負担者

葬儀費用について誰を負担者とすべきかについては見解が分かれています。例えば、「共同相続人全員の負担とするのが相当」とする見解、「葬儀費用は民法885条の相続財産に関する費用」とする見解、「その地方又は死者の属する親族団体内における慣習若しくは条理に従って決するとする見解などがあります。もっとも近年では、葬儀費用は喪主が負担すべきであるとする見解が有力です。
東京地裁判決は、「葬式費用は、特段の事情がない限り、葬式を実施した者が負担すると解するのが相当であるというべきである。そして、葬式を実施した者とは、葬式を主宰した者、すなわち、一般的には、喪主を指すというべきであるが、単に、遺族等の意向を受けて、喪主の席に座っただけの形式的なそれではなく、自己の責任と計算において、葬式を準備し、手配等して挙行した実質的な葬式主宰者を指すというのが自然であり、一般の社会観念にも合致するというべきである。したがって、喪主が形式的なものにすぎない場合は、実質的な葬式主宰者が自己の債務として、葬式費用を負担するというべきである。」と判示しています。
名古屋高裁判決も、葬儀費用の負担についての合意がない場合は、儀式を主宰する者が費用を負担するのが相当であると判示しています。
ただし、葬儀費用を負担すべき儀式の主宰者であるかは、実質的に判断されており、例えば東京地裁判決は、「葬儀費用を負担する責任を負う喪主とは、その葬儀を開催するか、また、その規模や費用について自らの責任において判断した者を指すのであり、当該葬儀において形式的に喪主として取り扱われたり、振る舞っていたりしたことのみから直ちにその葬儀費用の全部を負担させることはできない」として、「葬儀費用の負担割合については、原告及び被告が、相続財産を取得する割合に応じて、その葬儀費用も負担するのが原告及び被告の家族における慣習を考慮して条理に照らし相当である」と判示して、法定相続分2分の1ずつを有する相続人らの葬儀費用の負担割合は2分の1ずつであると判断しました。
なお、葬儀費用の負担者、精算を巡る紛争については、葬儀費用が共同相続人の負担となるため相続財産から精算される可能性があることを前提として、相続財産の範囲、権利関係等に争いがある場合と捉えて、遺産に関する紛争調整調停を申し立てる方法があり得ます。また、遺相産分割調停において事実上協議する方法も考えられますが、遺産分割の付随問題と考えられるため、直接的には遺産分割審判の審判対象事項にはならないと考えられますので、注意が必要です。

まとめ

1)葬儀費用は葬儀の主宰者が負担すべきであるとする見解が有力です。
(2)喪主が形式的なものにすぎない場合は、実質的な葬式主宰者が自己の債務として、葬式費用を負担するというべきである。
(3)葬儀費用の負担割合については、相続財産を取得する割合に応じて共同相続人全員の負担となる。
(4)関係者間で意見の対立がある場合、「遺産に関する紛争調整調停」を申し立てる方法があり得ます。
今回は、葬儀費用の負担者について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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