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自筆証書遺言を作成するには、どのような点に注意したらよいでしょうか?

自筆証書遺言を作成するには、定められた方式の要件を満たすよう十分に注意するとともに、第三者による偽造等の防止にも配慮する必要があります。今回は、作成にあたっての注意点について解説します。

自筆証書遺言の方式の緩和

 今般の改正により、自筆証書遺言の本文に添付する相続財産の目録については、自書によることを要しないものとされました。
 これに対して、遺言書の本文日付氏名については、遺言者が自書する必要があります。
 相続財産の目録を添付する場合とあることから、遺言書本文と財産目録が一体となっている場合には、自書によらない目録によることが認められません。たとえば、自書された遺言書本文の用紙に第三者が相続財産を代筆して作成したものや、預貯金通帳等のコピーの余白部分に遺言者が、「当該財産を○○に相続させる」と自書して作成したものは、形式的な要件を満たさないことになります。

財産目録への署名押印

 自書によらない方法により財産目録を作成した場合には、その毎葉に、遺言者が署名押印しなければなりません。したがって、目録が複数枚にわたる場合には、それら全ての用紙に署名押印をすることになります。
 財産目録の「毎葉」とされていることから、相続財産の記載が用紙の片面のみである場合には、その裏面に署名押印がなされていても、形式上は有効であると判断されます。
 しかし、そのようにして作成された遺言書が後日発見された場合に、署名押印がされている裏面に第三者が加筆してしまうと、あたかも裏面こそが代筆等により作成された目録であって、本来の目録である表面については署名押印のない無効な頁であるかのように偽造されてしまうといったおそれがあります。遺言書を作成する際には、第三者による偽造を防ぐ観点から、目録の記載のあるページごとに署名押印を残すべきでしょう。

押印に用いる印鑑

 財産目録に押印する印鑑については、作成者の印であること以外に特段の要件はありません。したがって、遺言者の実印を押印することも、本文が記載された自筆証書に押された印鑑と同一の印を用いることも必要とはされていません。
 法改正の審議過程では、後日の偽造等の防止のために同一の印鑑を用いることを要件とすることも検討されましたが、財産目録に押印した印鑑を後で紛失した場合には、その後に追加した財産目録に別の印を押印すると当該追加部分が無効となってしまうなど、方式として厳格すぎることから要件にされませんでした。
 もっとも、後日の偽造等を防止するという観点からは、遺言者の実印を押印するか、全て同一の印を用いることが望ましいでしょう。

遺言書の一体性の確保

 財産目録を添付する場合であっても、遺言書本文と財産目録とを編綴し、契印することまで必要とはされていません。改正前でも、遺言書が複数枚にわたる場合に編綴することは要件とされておらず、これを新たに要件とすると、かえって方式違背の遺言が増えるおそれがあるからです。
 もっとも、自筆証書遺言の本文に添付する財産目録については自書が不要とされたことから、第三者が財産目録を偽造し、本来の目録と差し替えてしまうような方法による改ざんのリスクは以前より高まりました。そのため、遺言書の一定性を確保するための配慮が求められます。
 具体的な対応としては、法務局での遺言書保管制度を利用することが、今後は最も望ましいであろうと考えられます。遺言書保管制度を利用しない場合には、遺言書本文と財産目録の用紙を同一の封筒に入れて封かんしたり、遺言書の用紙を編綴して契印するなどして、一体性を確保するよう工夫する必要があります。

まとめ

 自筆証書遺言の方式が緩和されたことで、遺言者が遺言書を作成するうえでの負担は、ある程度軽減されましたが、それでもなお厳格な形式要件が定められており、その要件を満たさなければ、遺言者の最終意思が遺言書に反映されないことのリスクが存在します。
 また、必ずしも遺言書の内容について第三書のチェックを受けることが想定されていないことから、遺言書の記載内容が曖昧であると、その解釈をめぐって相続人間の争いにつながるおそれがあります。
 自筆証書遺言は、遺言者が手軽に作成できるという点では優れた方式ですが、内容、形式ともに不備がない遺言書を残すには、依然としてハードルの高い手続であるともいえます。そのためにも形式や内容に瑕疵のない遺言書を作成にあたっては、司法書士などの専門家に支援を受けることをお勧めします。当事務所は、当事務所は、相続や遺言に多くの実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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