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秘密証書遺言の作成

秘密証書遺言では、本文の自書は要求されておらず、ワープロ等による作成や代筆による作成も可能です。遺言者が署名押印さえできれば、文章を自書できない者でも遺言書を作成できます。今回は、秘密証書遺言の作成について解説します。

秘密証書遺言について

遺言の方式の一つに、秘密証書遺言があります。秘密証書遺言は、遺言者が作成し封印した遺言書を公証人及び証人に提出することによって、内容を秘密にしながら、公証人が遺言の存在を明らかにする遺言となります。秘密証書遺言は、全文の自書が要件とされておらず、遺言者が自書できない場合でも署名押印さえできれば、ワープロでの作成や第三者の代筆でも可能となります。また、公正証書と比較すれば費用が定額で安いことが特徴です。
①秘密証書遺言では、本文の自書は要求されておらず、ワープロ、パソコン、タイプライターによる作成や代筆による作成も可能です。遺言者が署名押印さえできれば、文章を自書できない者でも遺言書を作成できます。
②秘密証書遺言の作成は、①遺言者が遺言書の署名、押印すること、②遺言者が遺言書を封じ、証書に用いた印章でこれに封印すること、③遺言者が公証人1人及び証人2人以上の前で封印した証書を自己の遺言書である旨を表示してその筆者の住所氏名を申述すること、④公証人が提出された日付及び遺言者の申述を封紙に記載してその後、遺言者及び証人とともに署名押印することが必要となります。
③秘密証書遺言の作成費用は、1万1 , 000円の定額とされています。
④遺言内容の加除訂正については、その訂正箇所を指定し、訂正した旨を付記し、署名押印することが必要です。
⑤未成年者、遺言の内容に直接利害関係を有する推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人を証人欠格事由と定めています。

実務解説

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言者が作成し封印した遺言書を公証人及び証人に提出することによって、内容を秘密にしながら、公証人が遺言の存在を明らかにする遺言のことをいいます。
秘密証書遺言は、遺言書の存在については明らかにしつつ、遺言内容を他者に秘密にして保管することができることが最大の特徴です。
遺言内容については公証人が関与しないため、内容の有効性について問題があった場合、遺言書の有効性が争われたり、遺言について公証役場で保管しないために紛失や改ざんのおそれがある点がデメリットといえます。

秘密証書遺言の要件

秘密証書遺言の要件は次のとおりです。
要件を欠く秘密証書遺言は原則として無効となりますが、遺言が自筆証書遺言の方式を備える場合、自筆証書遺言の効力を有するとされています。
①遺言者が遺言書の署名、押印をすること
秘密証書遺言の場合、遺言者の署名押印は必要ですが、本文の自書は要求されておりません。ワープロ、パソコン、タイプライターによる作成も可能で、代筆も可能です。署名さえできれば、文字を書くこともできない者でも遺言書の作成が可能です。
署名押印については、遺言者自身が行う必要があり、他人に代わってもらうことは許されません。印は実印であっても認印であってもよいとされています。
②遣言者が遺言書を封じ、証書に用いた印章でこれに封印すること
封入、封印は遺言者自身がこれを行う必要があります。ただし、証書の封入、封印を第三者が行っても、第三者が遺言者の面前で封入、封印をした場合は許されるものとされています。
封印は、遺言書本体への押印に使用したものと同一の印章を用いて封印しなければならず、異なる印章を用いた場合は、秘密証書遺言としては無効となるとされています。
③遺言者が公証人1人及び証人2人以上の前で封印した証書を自己の遺言書である旨を申述してその筆者の住所氏名を申述すること
秘密証書遺言では、筆者の申述をしなければなりません。口がきけない者が秘密証書遺言をする場合には、通訳人の通訳により申述するか、封紙に自書して申述に代えることができます。
なお、遺言者以外の者がワープロを操作して表題、本文、遺言者の住所等を印字して作成した場合の筆者は、ワープロを操作した者となり、この者の氏名、住所を公証人に対し申述する必要があります。この場合、遺言者を筆者として申述しても無効となります。
④公証人が提出された日付及び遺言者の申述を封紙に記載してその後、遺言者及び証人とともに署名押印すること
公正証書の場合と異なり、遺言者みずから署名することが必要で、公証人による口述によって署名に代えることはできません。

秘密証書遺言の活用例(交際相手に内密に遺贈する場合)

Aは法定相続人の他に、交際を続けているDがおり、その者に財産の一部を残したいと考えています。
相続人でないDに財産を残すためには、残したい財産を遺贈する遺言書を作成する必要があります。もっとも、妻B及び長男C には内密にしている関係を続けているため、Dに財産を残す内容の遺言を作成したことが判明すると不都合なため、できるだけ秘密にしておきたいとの希望を持っています。
Aは、自書で文書を作成することが困難となっていますので、自筆証書遺言を作成するのは難しく、公正証書遺言か秘密証書遺言を作成することとなります。
本事例における対応としては、公正証書遺言、秘密証書遺言どちらでも有効な遺言を作成することは可能と思われます。
遺言内容を秘密にしたいという趣旨を全うするのであれば、秘密証書遺言が最も適しているのではないかと思われます。公正証書遺言においては、公証人及び証人2名の関与が不可欠であるため、これらの者に遺言の存在及び内容を知られることとなります。証人の選定によっては、遺言書の作成内容の漏えいのリスクが存在することとなる一方、秘密証書遺言では、遺言内容が証人に明らかにされることはないので、漏えいのリスクはさらに低くなるからです。

まとめ

秘密証書遺言の作成について次の点に注意が必要です。
(1)争族の防止に役立つ。
(2)署名さえできれば、文字を書くこともできない者でも遺言書の作成が可能。
(3)遺言書の存在を明確にしつつ、内容は秘密にすることができる。
(4)作成手続に手間がかかる。
(5)作成費用がかかる。
(6)遺言内容の加除訂正方法に注意しなければならない。
(7)証人の欠格事由に注意しなければならない。
(8)家庭裁判所での検認手続が必要であり、誤って勝手に開封すると過料などに処せられる。
(9)公証人は遺言内容のチェックをしないため、法律知識のない者が遺言書を作成した場合には、遺言の効力をめぐって争いになることがある。
(10)公証役場で保管するわけではないので、紛失するおそれがある。
今回は、秘密証書遺言の作成について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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