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相続財産の賃貸不動産はどのように管理や承継すればよいのでしょうか?

相続財産の中に賃貸不動産がある場合、管理や承継にあたってどのような点に注意すればよいのでしょうか?今回はこのことについて解説します。

賃貸不動産に関する調査

相続財産の中に賃貸不動産が存在するかどうか、存在する場合にはその契約の内容を調査します。
賃貸不動産については、賃貸借契約の内容等を把握するために、賃貸借契約書が存在しないかどうかを確認します。賃借人や仲介した不動産業者・管理業者が分かっている場合には、それらの者に確認をすることが考えられます。また、被相続人が生前に賃貸収入を得ていた場合には、賃貸収入について確定申告をしている可能性があります。被相続人が確定申告をしていた場合には、確定申告書の控えが確認できれば、「不動産所得の収入の内訳」として、不動産の所在地、賃借人の住所・氏名、賃貸契約期間、賃貸料などが記載されているはずです。

相続開始後に発生する賃料収入の管理

相続財産に賃貸不動産が存在することが分かった場合には、相続開始後に発生する賃料収入をどのように管理するかを検討する必要があります。
この点、相続開始から遺産分割までの賃料は、相続人間で特に別段の合意がない限り、各相続人がその法定相続分に応じて分割単独債権として取得することになるとされてきました。したがって、法律上は、各相続人がそれぞれ、賃借人に対して、自己の法定相続分に応じた賃料を支払うよう請求することができるということになります。もっとも、各相続人が賃借人にそれぞれ請求する場合には、煩雑ですし、新賃貸人同士あるいは新賃貸人と賃借人との間で混乱やトラブルが発生することも考えられます。
そこで、実務上は、そのような事態を避けるために、全相続人が合意して、賃料の請求と受領を行う代表者を決め、その代表者から賃借人に対して、相続が発生したために以後は代表者名義の指定口座に賃料の振込みをするよう通知する方法等が考えられます。
なお、賃料の振込みを指定する口座は、賃料と代表者の財産とを区別し、賃料の滞納がないか等の確認をしやすくするために、代表者において新たに作成した方がよいでしよう。
ところで、判例では、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期預金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるとしました。
相続開始後に被相続人名義の預貯金口座に入金が行われた場合、その残高が増加した分を含めた残高全体が遺産分割の対象となると述べられています。そのため、従前から被相続人名義の口座が振込先として指定されていた場合に、相続開始後も振込先口座を変更しないでいたために、当該口座に賃料が振り込まれることがあります。
実務上の取扱いは明確に定まっていませんが、このような場合、賃料に相当する部分の払戻しが制限される可能性等がありますので、注意が必要です。

敷金、預かり保証金の管理

賃貸不動産について、敷金や預かり保証金がある場合は、賃貸人は、賃借人との関係で、賃貸借契約の内容に応じて、賃貸借契約の終了後、賃貸不動産の明渡しの際に、敷金や預かり保証金の返還債務を負うことが考えられます。この点、敷金については、賃貸借終了後、家屋明渡しまでに生ずる賃料相当額の損害金その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得する一切の権利を担保するものであるとされています。保証金についても、基本的に同様に考えられます。そのため、相続開始後遺産分割までの間には、敷金や預かり保証金について、賃借人に返還すべき金額が確定していない、ということがあり得ます。
したがって、そのような場合には、敷金や預かり保証金については、将来賃借人に返還することに備えて、それに相当する金額を、相続財産から分離して確保しておきます。

敷金・預かり保証金の引継ぎ

遺産分割により賃貸不動産の帰属が決まれば、これを取得した相続人が賃貸人たる地位を引き継ぐことになります。したがって、敷金・預かり保証金返還義務についても、当該相続人(新賃貸人)に引き継がれます。賃貸不動産の賃貸借契約理が終了し、賃借人から新賃貸人に対して賃貸不動産が明け渡された時に、新賃貸人から賃借人に対して、敷金や預かり保証金の精算(返還)が行われます。

まとめ

相続財産の中に賃貸不動産がある場合、管理や承継にあたっては、次の点に注意してください。。
(1)相続財産の中に負貸不動産が存在するかどうかを調査し、存在する場合には、負貸借契約の内容を把握する。
(2)相続財産に貨貸不動産が存在する場合、相続開始後に発生する負料収入をどのように管理するかを検討する。
(3)相続開始前に発生した負料で、相続開始時点において滞納していたものがある場合、その賃料は、未払賃料債権として相続財産となり、遺言がなければ、各相続人の法定相続分に応じて分割されることになる。
(4)管理の費用が生した場合には、各相続人は、その持分に応じて支払う。
(5)負貸不動産を相続人の誰が取得するかについて、遺産分割によって決める。
(6)遺産分割協議により負貸不動産を取得する相続人が決まれば、以後の賃料については、その相続人が取得するが、相続開始後、遺産分割までに発生した賃料については、相続人全員が相続財産に含めるなどといった合意をしている場合を除いて、遺産分割の対象には含まれないので注意する。
(7)遺産分割協議により質貸不動産の帰属が決まれば、これを取得した一人が貨貸人の地位を引き継くことになり、敷金・預かり保証金についても、同様に引き継がれる。
今回は、相続財産の中に賃貸不動産がある場合の管理や承継について解説しました。
わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談も多数お受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

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