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相続財産の中に未受給の国民年金がある場合、管理や承継はどのようにしたらよいでしょうか?

相続財産の中に未受給の国民年金がある場合、管理・承継にあたってどのような点に注意すべきでしょうか。また、遺族年金については相続財産になるのでしょう。今回は、未受給の国民年金や遺族年金の請求権の管理や承継について解説します。

未受給の国民年金、厚生年金、共済年金の相続財産性

国民年金法に基づく年金給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6 期に、それぞれの前月までの分が支払われます。例えば、被相続人が9月20日に死亡した場合、10月に支払われる8月分と9月分の年金が未受給となります。
そして、年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支払うべき年金給付でまだその者に支払っていなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支払を請求することができます。なお、未受給の国民年金を受けるべき同順位の遺族が2人以上いる場合であって、そのうち1人がした未受給の年金の請求は、全員のためにその全額についてしたものとみなされます。また、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法にも同趣旨の規定かあります。
このような未受給の国民年金、厚生年金、共済年金が相続財産に該当するのか否かが問題となりますが、判例は、未受給の国民年金の事案で、死亡した受給権者が有していた年金給付に係る請求権が別途相続の対象となるものではないと判示し、相続財産性を否定しています。

遺族年金(遺族給付)の相続財産性

遺族給付(国民年金法、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法等の社会保障関係の特別法によって親族に対してなされる給付で、遺族年金、弔慰金、葬祭料等が含まれます。)は、被保険者又は被保険者であった者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とするものであり、受給権者の固有の権利と解されていますので、被相続人の相続財産には含まれません。この点、判例は、厚生年金保険法58条にいう被保険者の死亡による遺族年金は、相続法とは別個の立場から受給権者と支給方法を定めたものとみられ、被相続人の配偶者が支給を受けた遺族年金は同人の固有の権利に基づくもので被相続人の遺産ではないと判示しています。

未受給の国民年金等及び遺族年金の調査方法

未受給の国民年金等や遺族年金の有無を調査するには、まず、被相続人が国民年金や厚生年金等に加入していたか否か、国民年金や厚生年金等の受給を受けていたのかを把握する必要があります。そして、その把握の仕方としては、①被相続人の預貯金の通帳から保険料の支払をしていた形跡、国民年金等の受給を受けている形跡かあるか否かを確認することが考えられます。また、②被相続人宛ての郵便物等を調査し、被相続人か国民年金等に加入していたか、国民年金等の受給を受けていたかを把握することも可能な場合があると思われます。さらには、③被相続人の国民年金等の加入や受給については、日本年金機構に問合せをすることも考えられます。
なお、年金受給者が死亡した場合、年金の受給権が消減するので、国民年金については死亡から14日以内に、厚生年金については死亡から10日以内に年金事務所等に年金受給権者死亡届を提出することも必要です。実務上、年金受給権者死亡届の提出が遅れる等により死亡後の年金が指定の口座に振り込まれてしまう場合がありますが、その場合には返金の手続が必要になりますので、留意が必要です。

未受給の国民年金等の受給を受ける方法

死亡した受給権者が有していた年金給付に係る請求権が別途相続の対象とならないこと、国民年金法上、未受給年金を受け取る者が定められていることは上記のとおりです。
なお、このことは、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法においても同様です。
未受給年金を受給できる者は、年金事務所等に以下の書類を提出して未受給年金等を請求します。
①未支給年金・未支払給付金請求書
②被相続人の年金手帳、年金証書又は基礎年金番号通知書
③被相続人と請求者の身分関係が確認できる書類(戸籍謄本等)
④被相続人と請求者が生計を同じくしていたことが分かる書類(被相続人の住民票(除票)及び請求者の世帯全員の住民票)
⑤受取りを希望する金融機関の通帳
⑥被相続人と請求者が別世帯の場合は「生計同一についての別紙の様式」

未受給の国民年金に係る相続税の課税関係

判例は、未受給の年金請求権の相続性を否定していますので、未受給の年金請求権については、死亡した受給権者に係る遺族が、未受給の年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。もっとも、遺族が受給を受けた当該未受給の年金は、当該遺族の一時所得に該当しますので、留意が必要です。

まとめ

相続財産の中に未受給の国民年金がある場合、管理や承継は次の点を注意します。
(1)未受給の国民年金、厚生年金、共済年金は相続財産にならない。
(2)遺族年金(遺族給付)は相続財産にならない。
(3)未受給の国民年金、厚生年金、共済年金や遺族年金の有無を把握するためには、被相続人の通帳や郵便物を調べたり、役所へ問い合わせたりする。
(4)未受給の国民年金等を遺族が請求するためには、請求書等所定の書類を年金機構等に提出する必要がある。
(5)未受給の国民年金については、被相続人に係る相続税の課税対象にはならない。
今回は、被相続人が利用していた未受給の国民年金や遺族年金の請求権の管理や承継電子データの管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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