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相続財産のなかに田・畑の管理や承継はどのようにすればよいか?

相続にあたり、相続財産のなかに田・畑がある場合、相続までの間の管理や承継にあたってどのような点に注意すればよいのでしょう。今回は、田・畑の管理や承継について解説します。

農地の調査

農地法では、「農地」とは、工作の目的に供される土地と定義されています。これは、登記簿上の地目を基準に判断されるものではなく、その土地の状況によって判断されます。そのため、相続財産に農地が含まれている可能性がある場合には、単に相続不動産を、登記事項証明書や固定資産税評価証明書等で調べるだけでなく、これに加えて、関係者から事情を聴いたり、現地を見分したり、市町村の農業委員会に当該土地の利用状況について確認したりする必要があります。農地法が改正されて農業委員会の農地台帳が法定化されたことに伴い、平成27年4月1日から農地の地目や面積、貸借などの情報が容易に閲覧できるようになっています。なお、閲覧は、インターネットで全国農業会議所が提供する「全国農地ナビ」にてすることができます。

農地の管理

 相続財産の中に農地がある場合としては、様々なケースが考えられます。典型例としては、被相続人自身が農業を営んでおり、相続開始時に農地が相続財産のなかにあることが明らかな場合に、遺贈等によって当該農地を相続することが考えられます。
 農地は通常の土地と異なり、田畑として、農作物の収穫を予定するために、管理として、適切な時期に草刈りや耕運、栽培、収穫などの様々な農作業が必要です。このような場合には従前より被相続人と一緒に農業を営んでいた親族や知人、共同経営者等がいれば、その人物に費用を支払うなどして暫定的に農地を管理してもらうことが考えられます。もし、そのような人物が存在しない場合には、第三者に農地の維持や管理を依頼する必要が生じます。

現状が農地でない場合

 農地法の適用対象である「農地」とは、耕作の目的に供される土地と定義されており、その土地の現況によって判断されます。
土地の登記簿上の地目が「田」または「畑」となっているものの、現況が「宅地」等で、農地法の許可を要しない場合で一定の条件を満たす場合には、農業委員会で発行する「非農地証明」等を添付して、不動産登記の地目変更を行うことが可能です。
非農地証明書の発行は、市町村農業委員会の裁量判断ですので、あらかじめ市町村農業委員会の基準や非農地証明書を取得のための申請書類等を確認しておくのがよいでしょう。

農地の評価

農地の評価については、一般的には相続税評価額を基準するケースが多いようです。農地の相続税評価は、転用が制限されているなどの事情を考慮して、宅地とは異なる方法で行います。
ちなみに、相続税の納税のために農地を処分すれば、農産物を生み出す農地が減少してしまうことから、農業の継続を支援し農地の有効活用を図るため、一定の要件のもと相続税の納税猶予の特例が定められています。
制度上は納税の猶予ですが、農業を継続しているとそのまま免除されることがほとんどです。
農地を相続する際には、猶予や免除等の制度が利用できないかについても検討します。
【農地の相続税評価】
純農地及び中間農地:倍率方式(※1)
市街地周辺農地  :市街地農地であるとして評価した金額の80%
市街地農地    :宅地比準方式(※2)又は倍率方式
 ※1 倍率方式とは、農地の固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率をかけて評価する方法。    
 ※2 宅地比準方式とは、宅地であると仮定して評価した金額から、農地を宅地に転用する場合の造成費を差し引いて評価する方法。1㎡当たりの造成費は地域ごとに定められた数値を使用する。 
 ※ 詳細は国税庁タックスアンサー№4623「農地の評価」を参照してください。

相続による農地の承継

 農地の譲渡については、原則として農業委員会の許可が必要とされていますが、相続によって農地を承継する場合は農業委員会の許可は不要です。相続人は農地を相続により取得した後、遅滞なく、農業委員会に届出をしなければなりません。この届出を怠ると10万円以下の過料に処せられると規定されていますので、注意が必要です。なお、相続によって承継した農地について農地転用をする場合には当該農地の種類や広さ、地域によって転用の難易がありますので個別の検討が必要です。
 この点、農地を相続したけれども、遠方に住んでいるために実際の管理はできないというケースも多くあります。管理がなされていない耕作放棄地は、再び耕作農地として利用することができるようになるまでに、大きな労力と費用がかかることが多く、また雑草や害虫の増加等による周辺農地の環境への悪影響なども考えられます。このような事態を回避するために、届出のなかで農業委員会による「あっせん」を希望する旨の意思表示をすることができます。農業委員会による「あっせん制度」は、農業委員会が農用地等を「売りたい、買いたい」「借りたい、貸したい」「交換したい」という農家の間に立ってあっせんし、農用地等の移動を農業経営の発展に結びつくようにしようという制度です。
 耕作放棄が問題となってきたことから平成21年農地法改正の際に導入され、税務上の優遇措置等があります。これ以外にも、地元の営農組合や農地の維持管理サービスを提供する会社等に農地の維持管理を依頼するという方法等が考えられます。

現状が農地でない場合の承継手続き

 現状が農地でない場合、農地から農地以外への不動産登記の地目変更登記は、「非農地証明」等と添付し申請します。かかる地目変更登記は保存行為として、共同相続人のうちの1人が単独で行うことができますが手続きの詳細は各地の農業委員会に確認するのが良いでしょう。
 また、地目変更後の各相続人への権利を承継させる登記については、通常の土地を相続する場合と同様の方法によります。

果実の承継

 被相続人が農地で耕作をしていた場合、収穫する作物は「果実」となります。天然果実は、物である農地の用法に従い、収受する産出物を指します。
 それでは、収穫された作物(天然果実)の承継はどのようにされるのでしょうか。
参考となるものとして、法定果実における裁判例があります。賃貸借契約における賃料は、物の使用対価として受けるべき金銭であり、法定果実については、遺産とは別個の財産であることから、各共同相続人がその相続分に応じて分割され、単独債権として確定的に取得することになり、後にされた遺産分割の影響は受けないと判断されました。
この判例が天然果実に及ぶと考えられるかは見解の分かれるところですが、天然果実に及ぶと考えた場合は、収穫された作物は、遺産分割協議が成立するまで、各共同相続人が相続分に応じて取得することとなります。実際は賃料とは異なり、作物は長期間保存が難しいため、適宜の時点で売ることが想定され、その売買代金について法定相続分で帰属することになるのでしょう。 なお、果実は遺産分割の対象とはなりませんが、共同相続人全員の合意によって遺産分割の対象とすることは可能です。

まとめ

 農地は通常の土地と異なり、田畑として、農作物の収穫を予定するため、適切な時期の草刈りや耕運、栽培、収穫など様々な農作業が必要となります。
 現況が農地でなく一定の条件を満たす場合には、農業委員会で発行する「非農地証明」等を添付して、不動産登記の地目変更を行うことが可能です。
 農地の評価は、一般的には相続税評価額を基準とするケースが多く、相続によって農地を承継する場合、農業委員会の許可は不要ですが、相続人は農地を相続により取得した後、遅滞なく、農業委員会に届出をしなければなりません。
 また、現状が農地でない場合、農地から農地以外への地目変更登記は、保存行為として共同相続人のうちの1人が単独で行うことができます。このように農地の相続には、農地法上の手続が必要になりますので、専門家である司法書士や行政書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、農地の相続や農地法の手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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