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相続財産に関する費用の管理や承継に当たってどのような点に注意すべきでしょうか?

相続財産に関する費用の管理や承継に当たってどのような点に注意すべきでしょうか?今回はこのことについて解説します。

相続開始の前後による区別

相続財産に関する費用については、相続開始の前後によって性質が異なります。相続が開始する前に、被相続人の有する財産の管理や処分について生じた費用については、可分債務として、相続開始によって法定相続分の割合に応じて当然に分割され、各相続人に承継されますので、相続財産に関する費用として相続財産の中から支出されることはありません。相続が開始した後に、相続財産の管理・処分について生じた費用が、相続財産に関する費用として、相続財産の中から支出されることになります。

相続開始後の相続財産に関する費用

相続開始後の相続財産に関する費用は、相続財産の中から支出されます。この相続財産に関する費用とは、相続財産の管理や清算に必要な費用を意味します。例えば、相続人・相続財産管理人等が相続財産についてなすべき一切の管理・処分に必要な費用のことをいい、具体的には相続財産である土地建物の固定資産税などの公租公課、相続財産である建物の修理費・改築費、建物を賃借しているときの賃料、火災保険料等です。
葬式費用が相続財産に関する費用に含まれるか否かについては、相続財産に関する費用に含まれるという考え方と、相続財産に関する費用に含まれないという考え方の2つの考え方があり、裁判例も分かれています。

相続開始前に生じた費用の承継

相続が開始する前に、被相続人の有する財産の管理や処分について生じた費用については、可分債務として、相続開始によって法定相続分の割合に応じて当然に分割され、各相続人に承継されます。全ての相続人の合意により遺産分割において特定の相続人に承継者を決めたり、遺言において承継者が指定されている場合に当該指定者が負担することは可能ですが、債権者に対抗することはできません。

相続財産に関する費用の負担・清算

相続財産の中から相続財産に関する費用を支出できない場合

相続財産の中に現金や預貯金がない場合、相続人間に争いがあり、相続財産から支出することが難しい場合など、相続財産から相続財産に関する費用を支出することができない場合は、各相続人が法定相続分割合による共有持分に応じて負担すべきと解されています。
裁判例においても、相続財産に関する費用が遺産分割審判でも審判の対象とされず残存していたときは、当該費用の本来の性質が各相続人の固有の債務であるから、各相続人がその相続分に応じて負担すべきであり、最終的には地方裁判所での訴訟手続によって解決すべきものであるとされています。

相続財産の管理費用を遺産分割手続において清算することの可否

相続財産に関する費用は、その財産の中から支出されますが、その清算を、遺産分割手続において行うのか、遺産分割手続とは別に民事訴訟で行うのかについては、裁判例が一致しておらず、学説も見解が分かれています。
まず、相続財産の管理費用は、相続財産に関する費用に当たるので、相続財産の負担として、遺産分割手続に際して清算されるべきであり、遺産分割の対象になるとする積極説があります。
この説とは反対に、相続財産の管理費用は、相続開始後に生じたものであり、相続財産とは別個のものであるから、遺産分割の対象とはならないとする消極説があります。
そして、これらの折衷説として、相続財産の管理費用は、相続財産とは別個の性質のものであるが、共同相続人が遺産分割の対象とすることに合意した場合には、遺産分割の対象としてもよいとする説があります。
実務においては、折衷説に従った運用がされています。共同相続人が相続財産の管理費用を遺産分割の手続の中で清算することについて合意した場合には、遺産分割の対象とすることができますが、共同相続人間で調整することができない場合には、民事訴訟手続により解決されることになります。
なお、遺産分割審判においては、相続財産の管理費用は相続財産ではないことから、審判の対象とはなりません。

相続財産に関する費用として相続財産から支出できない場合

相続人の過失によって支出した相続財産に関する費用は、相続財産の中から支出することができません。したがって、相続人の過失によって生じた相続財産に関する費用は、その相続人の固有の債務となります。

まとめ

(1)相続開始前に生じた費用と相続開始後に生した費用を区別し、相続開始後に生した費用が相続財産に関する費用となる。
(2)相続財産に関する費用は、相続財産の中から支出される。
(3)相続開始前に生じた費用については、法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人に承継される。
(4)相続財産の中から相続財産に関する費用を支出できない場合には、各相続人が法定相続分割合による共有持分に応じて負担すると解されている。
今回は、相続財産に関する費用の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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