
相続発生前の対策として借入れによる賃貸建物の建築について解説します。
今回の事例

甲は相続発生前の対策として、所有している土地に賃貸建物を建築しようと考えています。土地の有効活用として、主に節税対策を目的とした賃貸建物の建築が挙げられます。しかし、賃貸建物の建築がどのような場合にでも効果的な節税に繋がるとは限らないため各々のケースを慎重に検討して、資産運用を決定する必要があります。そこで、効果とリスクや注意点について解説します。
(なお、この解説は制度を説明するものであり個別の事案に対応できるかは専門家にご相談ください。)
(なお、この解説は制度を説明するものであり個別の事案に対応できるかは専門家にご相談ください。)
効果とリスク、注意点
効果
(1)甲が借人れをして賃貸建物を建てることで、土地は貸家建付地となって評価額が下がり、建物は建築価格に比べて低く評価され、借人金は債務控除の対象となって他の相続財産から差し引けるため、課税対象額が減少します。
土地を更地で保有していれば自用地としての評価となりますが、その土地にアパートやマンションなどの賃貸物件を建てた場合には、貸家建付地の評価となり評価額が下がります。また、そのアパートやマンションの建物の相続税評価額は、建築に要した金額ではなく固定資産税評価額で評価され、更に人に貸している場合は、貸家の評価として減額されます。このように、賃貸物件を建てることで、大きな節税効果が期待できます。これは、自己資金で行った場合でも、借入金で行った場合でも同様の効果が得られます。
(2)甲が所有する土地に子の乙が賃貸建物を建てた場合、家賃収人が乙のものとなり、不動産所得分の現金を乙に移転する効果がある。
(3)賃貸建物があることにより、小規模宅地などの減額特例の適用がある。
土地を更地で保有していれば自用地としての評価となりますが、その土地にアパートやマンションなどの賃貸物件を建てた場合には、貸家建付地の評価となり評価額が下がります。また、そのアパートやマンションの建物の相続税評価額は、建築に要した金額ではなく固定資産税評価額で評価され、更に人に貸している場合は、貸家の評価として減額されます。このように、賃貸物件を建てることで、大きな節税効果が期待できます。これは、自己資金で行った場合でも、借入金で行った場合でも同様の効果が得られます。
(2)甲が所有する土地に子の乙が賃貸建物を建てた場合、家賃収人が乙のものとなり、不動産所得分の現金を乙に移転する効果がある。
(3)賃貸建物があることにより、小規模宅地などの減額特例の適用がある。
リスク
(1)借入れによる金利負担が発生する。
(2)空室対応、貨料引下げ、滞納、修繕費用などの賃貸経営が難しい。
(3)地価の下落、金利の見直しなどのリスクがある。
(4)建物完成前に相続が発生すると、貸家建付地の評価減は適用できない。
(5)甲が建てた場合、家貨収入により相続財産が増加する。
(2)空室対応、貨料引下げ、滞納、修繕費用などの賃貸経営が難しい。
(3)地価の下落、金利の見直しなどのリスクがある。
(4)建物完成前に相続が発生すると、貸家建付地の評価減は適用できない。
(5)甲が建てた場合、家貨収入により相続財産が増加する。
注意
(1)当該土地は物納予定地ではないことを確認しなければならない。収益性が十分に見込めるか慎重に検討する必要がある。
(2)建築資本だけではなく、所有している土地も含めて投資を算出し、その投資に対する収益力を検討しなければなりません。
(2)建築資本だけではなく、所有している土地も含めて投資を算出し、その投資に対する収益力を検討しなければなりません。
建物賃貸後の経営法務、管理の問題点

賃貸建物を建築することが税金対策に効果的なケースもあります。しかし、税金対策として賃貸建物を建てて相続税対策をしたのはいいけれども、その後の建物賃貸経営において、賃貸割合の低下、賃料引下げ、滞納、修繕維持費、地価の下落などの様々な問題点が浮上する場合があります。そのため目先の税金対策にとらわれるのではなく、自らが行う資産運用を総合的に判断して、果たして本当にその資産運用が自らのプラスになるのかどうかを判断する必要があります。
借入れによる債務控除と賃貸建物の建築による資産の圧縮
負債が増加したとしても、それに伴い増加する資産を圧縮することで節税効果が生まれることになります。そして、その圧縮方法の一つとして、賃貸建物の建築が挙げられます。
土地の相続税評価額の圧縮
土地を更地のまま相続すると、自用地として評価されるため相続税は高くなります。しかし、その土地に賃貸建物を建てることて、当該土地は貸家建付地として扱われ、次の計算式に則り相続税評価額が下がることになるので、節税対策になります。
相続税評価額 = 自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
例えば、自用地評価額1億円の土地に賃貸建物を建てた場合、その土地の相続税評価額は、以下のようになります(借地権割合:70 %、借家権割合:30 %、賃貸割合:100 %とします。)
1億円×(1-0.7×0.3×1)= 7,900万円
よって、相続税評価額は(1億円 - 7,900万円)= 2,100万円減となり、節税対策となります。
このように、更地に賃貸建物を建てた場合、その土地の相続税評価額は、貸家建付地の評価により減額が可能です。
相続税評価額 = 自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
例えば、自用地評価額1億円の土地に賃貸建物を建てた場合、その土地の相続税評価額は、以下のようになります(借地権割合:70 %、借家権割合:30 %、賃貸割合:100 %とします。)
1億円×(1-0.7×0.3×1)= 7,900万円
よって、相続税評価額は(1億円 - 7,900万円)= 2,100万円減となり、節税対策となります。
このように、更地に賃貸建物を建てた場合、その土地の相続税評価額は、貸家建付地の評価により減額が可能です。
建物の相続税評価額の圧縮
建物の相続税評価額は実際にかかった建築価格ではなく、市区町村の定める固定資産税評価額で決まります。この固定資産税評価額は、通常、建築価格の約60 %程度となるケースが多く見受けられます。そして、当該建物を賃貸した場合の相続税評価額は以下の計算式のとおりになります。
相続税評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
例えば、1億円を投じて賃貸マンションを建築した場合は、以下のようになります
(固定資産税評価額6,000万円、借家権割合:30 %、賃貸割合:100 %とします。)
6,000万円×(1-0.3×1)= 4,200万円
よって、相続財産は( 1億円-4,200万円)= 5,800万円減となり、節税対策となります。
相続税評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
例えば、1億円を投じて賃貸マンションを建築した場合は、以下のようになります
(固定資産税評価額6,000万円、借家権割合:30 %、賃貸割合:100 %とします。)
6,000万円×(1-0.3×1)= 4,200万円
よって、相続財産は( 1億円-4,200万円)= 5,800万円減となり、節税対策となります。
賃貸建物所有者の違いによる資産圧縮
賃貸建物を建てるとしても誰がどこに建てるかによって、その資産圧縮に対する効果には、次のような違いがあります。
①土地所有者である甲が、自ら賃貸建物を建てた場合
土地と建物は、賃貸建物の建築により資産は圧縮される。賃貸建物による資金の蓄積は、賃料などによる資産が増加します。
②甲の土地に、子の乙が賃貸建物を建てた場合
建物は、乙が建てるので、甲の資産圧縮には影響しない。土地は、乙に無償で貸した場合は、甲の自用地になるため、賃貸建物を建築していても甲の資産圧縮にはならない。賃貸建物による資金の蓄積は、賃料などは乙が得るため、甲の資産増加には影響しない。
①土地所有者である甲が、自ら賃貸建物を建てた場合
土地と建物は、賃貸建物の建築により資産は圧縮される。賃貸建物による資金の蓄積は、賃料などによる資産が増加します。
②甲の土地に、子の乙が賃貸建物を建てた場合
建物は、乙が建てるので、甲の資産圧縮には影響しない。土地は、乙に無償で貸した場合は、甲の自用地になるため、賃貸建物を建築していても甲の資産圧縮にはならない。賃貸建物による資金の蓄積は、賃料などは乙が得るため、甲の資産増加には影響しない。
まとめ

(1)借人れをして賃貸建物を建てることで、土地は貸家建付地となり評価額が下がり、建物は建築価格に比べて低く評価され、借人金は債務控除として相続財産から差し引けるため、課税対象額が減少する。
(2)親の所有地に子の子が賃貸建物を建てた場合、不動産所得分(家賃収人)の現金を子に移転する効果がある。
(3)賃貸建物があることにより、小規模宅地などの減額特例の適用がある。
(4)借入れによる金利や負担地価の下落、金利の見直しなどのリスクがある。
(5)空室対応、貨料引下げ、滞納、修繕費用などの賃貸経営が難しい。
(6)建物完成前に相続が発生すると、貸家建付地の評価減は適用できない。
(7)親が建てた場合、家貨収入により相続財産が増加する。
(8)収益性が十分に見込めるか慎重に検討する必要がある。
今回は、相続発生前の対策として借入れによる賃貸建物の建築について解説しました。当事務所は、相続や遺言について、多数の実績がありますのでお気軽にご相談ください。
具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください
(2)親の所有地に子の子が賃貸建物を建てた場合、不動産所得分(家賃収人)の現金を子に移転する効果がある。
(3)賃貸建物があることにより、小規模宅地などの減額特例の適用がある。
(4)借入れによる金利や負担地価の下落、金利の見直しなどのリスクがある。
(5)空室対応、貨料引下げ、滞納、修繕費用などの賃貸経営が難しい。
(6)建物完成前に相続が発生すると、貸家建付地の評価減は適用できない。
(7)親が建てた場合、家貨収入により相続財産が増加する。
(8)収益性が十分に見込めるか慎重に検討する必要がある。
今回は、相続発生前の対策として借入れによる賃貸建物の建築について解説しました。当事務所は、相続や遺言について、多数の実績がありますのでお気軽にご相談ください。
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