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相続にあたり被相続人の連帯債務はどうしたらよいのでしょうか?

相続財産の中に連帯債務がある場合、この借入金債務の管理や承継にあたりどのような点に注意すべきでしようか。今回はこのことについて解説します。

連帯債務の有無・他の連帯債務者等の確認

連帯債務とは、債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人の債務者が連帯して債務を負担し、そのうちの1人がその債務全額を支払うと全ての債務者の債務が消滅するというものです。
被相続人が負担していた連帯債務があるかどうかについては、次のような方法で確認します。
①相続人、受遺者、被相続人の生前に被相続人の介護をしていた者等、被相続人の生活状況をよく知る者に面会し、事情聴取します。
②被相続人宛に届いた郵便物、被相続人が保管していた書類を確認します。請求書・督促状等の郵便物、金銭消費貸借契約書等の書類により、連帯債務の存在が分かる場合があります。
③被相続人が保管していたカード明細、預金通帳等を確認します。カード明細、預金通帳等に、定期的に返済の記録がある場合に、連帯債務の存在が分かることがあります。
上記方法などにより被相続人が負担していた連帯債務があることが分かった場合には、この連帯債務に関する金銭消費貸借契約書、借用書、領収書の控え、借入金残高証明書、被相続人が死亡するまでの返済履歴が分かる資料等の書類を、債権者や他の連帯債務者から収集し、連帯債務の内容や、他の連帯債務者を確認します。

他の連帯債務者について生じた絶対的効力事由の有無の調査

連帯債務については、他の連帯債務者の1人について生じた事由が、他の連帯債務者に対して効力を生じる場合があります。例えば、他の連帯債務者の1人によって弁済、代物弁済、供託がなされれば、その限度で債務が消滅します。
他の連帯債務者について生じた絶対的効力事由によっては、連帯債務において負担 すべき金額が変わる場合がありますので、他の連帯債務者について絶対的効力事由が生じていないか調査する必要があります。
連帯債務に関する絶対的効力事由については、主に以下のとおりです。平成29年の民法改正において絶対的効力事由が改正されており、連帯債務の生じた時期によって適用される法令が異なりますので、注意が必要です。

連帯債務者の1人との間の更改

連帯債務者の1人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅します。

連帯債務者の1人による相殺等

連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅します。

連帯債務者の1人に対する履行の請求

令和2年3月31日以前に発生した連帯債務については、連帯債務者の1人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対して、その効力を生じます。よって、債権者から被相続人に対して履行の請求がなかったとしても、債権者が他の連帯債務者に対して履行の請求をしていた場合には、履行遅滞に陥っていたり、時効が中断されていたりすることがあります。
これに対し、平成29年の民法改正により民法434条が削除されましたので、令和2年4月1日以降に発生した連帯債務については、連帯債務者の 1人に対して履行の請求がなされたとしても、他の連帯債務者に対して、その効力は生じません。

連帯保証人の1人に対する債務の免除

令和2年3月31日以前に発生した連帯債務については、連帯債務者の1人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生じます。よって、被相続人の負担していた連帯債務の金額が減額されていることがあります。
これに対し、平成29年の民法改正により民法437条が削除されましたので、令和2年4月1日以降に発生した連帯債務については、連帯債務者の1人に対して債務の免除がなされたとしても、他の連帯債務者に対してその効力は生じません。

連帯債務者の1人についての時効の完成

令和2年3月31日以前に発生した連帯債務については、連帯債務者の1人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分につき、他の連帯債務者も、その義務を免れます。よって、被相続人の負っていた連帯債務の金額が減額されていることがあります。
これに対し、平成29年の民法改正により民法439条か 削除されましたので、令和2年4月1日以降に発生した連帯債務については、連帯債務者の 1人のために時効が完成したとしても、他の連帯債務者に対してその効力は生じないこととなります。

連帯債務の評価

相続財産に連帯債務があるときは、調停で遺産分割をする場合、遺留分を算定する場合、遺言執行で債務弁済をする場合などにおいて、連帯債務の評価が問題となります。連帯債務の評価は、相続開始時の債務額が評価額となりますが、具体的な評価方法については、相続税法上の取扱いが参考になります。
相続税法上は、債務は遺産総額から差し引くことができますが、債務控除の対象となる債務は、相続開始時に被相続人の債務として確実に存在している債務である必要があります。したがって、連帯債務については、連帯債務者のうちで被相続人の負担すべき金額が明らかとなっている場合には、当該負担金額を控除することができます。また、連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある者があり、かつ、求償して弁済を受ける見込みがなく、当該弁済不能者の負担部分をも負担しなければならないと認められる場合には、その負担しなければならないと認められる部分の金額も当該債務控除を受けようとする者の負担部分として控除することができます。

連帯債務を相続するか否かの検討

相続財産を調査・確認した結果、連帯債務等の消極財産が積極財産より多い場合、相続人は、相続の放棄や限定承認の手続をすることにより、債務の負担を回避することができますので、被相続人の積極財産と消極財産を踏まえ、相続するか否かを検討します。
相続の放棄や限定承認の手続は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として3か月以内にしなければなりません。そのため、被相続人の相続財産を早めに調査し、相続の放棄や限定承認の手続を行うかどうかを判断する必要があります。
なお、相続放棄をすると、他の親族が相続人になり、連帯債務を負担することもありますので、この点も考慮して判断する必要があります。

連帯債務の承継

相続人は、被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に帰属した一切の権利義務を承継します。そして、共同相続の場合、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します。
連帯債務者の1人が死亡した場合においても、共同相続人は、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解されています。
この場合において、共同相続人相互間においても連帯関係が生じるか否かについては、最高裁決は判示していません。下級審の裁判例には、これを肯定したものと否定したものがあり、判断が分かれています。

法定相続分と異なる割合で承継したい場合

法定相続分とは異なる割合で承継したい場合や、もともとの連帯債務者の1人に相続した連帯債務も引き受けさせたい場合は、共同相続人間での合意だけではなく、債権者の承認を得た上で、共同相続人全員と債権者との間で免責的債務引受契約を締結するなどの方法をとる必要があります。

遺言による共同相続人の相続分の指定があった場合

被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、被相続人の遺言により共同相続人の相続分の指定があった場合であっても、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができます。ただし、その債権者が共同相続人の1人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、法定相続分に応じた権利の行使をすることはできなくなります。

まとめ

被相続人の連帯債務の管理や承継するにあたり管理や承継は次の点を注意します。
(1)被相続人が連帯債務を負担していたかを確認し、負担していた場合はその内容・他の連帯債務者等を確認する。
(2)他の連帯債務者について生じた絶対的効力事由により、負担すべき金額が変わる場合がある。
(3)遺産分割をする場合、遺留分を計算する場合、遺言執行で債務弁済をする場合などには、連帯債務を評価する必要がある。
(3)連帯債務を承継するか、相続の放棄や限定承認の手続をするかを検討する。
(4)共同相続人は、法定相続分に基づき、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解されている
(5)共同相続人全員と債権者との間で免責的債務引受契約を締結する方法などにより、法定相続分と異なる割合で承継させることができる。
(6)被相続人の遺言により共同相続人の相続分の指定があった場合であっても、債権者は、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができる。
今回は、連帯債務の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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