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生命保険契約の満期保険金を遺産分割する場合に注意することは?

被相続人の財産に生命保険契約の満期保険金がある場合、遺産分割の対象となるでしょうか。また、管理・承継にあたってどのような点に注意すべきでしょうか。このことについて、管理と承継について解説します。

満期保険金の相続財産性

 養老保険などの貯蓄型の保険では、被保険者が保険期間内に死亡したときは生命保険金が、保険期間満了時まで生存していたときは満期保険金が支払われ、保険契約者は保険金の受取人を指定・変更することができる内容のものがあります。
 満期保険金の受取人が被相続人と指定されており、満期到来後に被相続人(受取人)が満期保険金を請求しないまま死亡した場合、その満期保険金請求権は、被相続人に帰属していた財産(金銭債権)にあたるため、相続財産となります。

満期保険金請求権の消滅時効

 満期保険金請求権は、保険給付を請求する権利に該当するため、保険法95条1項により、行使することができる時から3年間で消滅時効にかかります。(平成22年3月31日以前に成立した保険については旧商法663条、683条1項が2年と定めていますが、約款では3年とされていることが多いようです。)
 満期保険金は、保険金期間満了により行使することができますので、消滅時効の起算点は、約款に別の定めがない限り、保険期間満了日の翌日と考えられます。
 したがって、被相続人が満期保険金を請求していなかった場合、相続人は、被相続人死亡時ではなく、保険期間満了から3年以内に請求する必要がありますので注意が必要です。

満期保険金請求権の評価

 満期保険金請求権の評価は、保険契約により定められた満期保険金の請求金額となります。
 保険金が一時金の場合には、その一時金の額となりますが、定期金の場合は、相続税における評価方法(相続税法29条では①有期定期金、②無期定期金、③終身定期金に分け評価することとしている)等を参考に評価することとなります。

満期保険金の承継

 満期保険金請求権は、被相続人が有していた財産(債権)ですから、相続財産になります。
 そして、満期保険金請求権は、金銭債権(可分債権)なので、相続人が複数人の場合は、当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継取得し、遺産分割の対象にはなりません。もっとも、相続人全員の合意により、遺産分割の対象に含めることは可能です。
 これに対し、満期保険金の受取人である被相続人が、満期保険金請求権について遺贈または特定財産承継遺言(相続させる遺言)を作成していた場合は、当該遺言に従って満期保険金が承継されます。

共同相続人の一部による満期保険金の請求

 満期保険金請求権は、相続分に応じて当然に分割承継され、相続人全員の合意がない限り、遺産分割の対象とならないと考えられます。したがって、共同相続人の1人が遺産分割協議を経ずに、自己の相続分に応じて満期保険金を保険会社に請求することは可能ということになります。
 もっとも、保険約款では、被相続人の相続人が複数いる場合、代表者1名を定め、その者が相続人全員を代理して請求することを定めていることが通例です。
 この場合に、共同相続人の1人が、遺産分割協議を経ずに、自己の相続分に応じた満期保険金を請求することができるか、問題となることがあります。
 簡易保険の満期保険金について、簡易生命保険法36条1項に上記約款と同様の定めがある事案について、東京地裁平成18年9月29日判決は、「簡易生命保険の満期保険金及び配当金の各請求権は金銭債権であり、遺産分割の対象とはならないから、仮に、相続人らの間で代表者選定の話し合いがつかない限り、請求することができないとすると、永遠に請求できない事態が発生することがあり得る」「法は不可能を強いるものではないというべきであるから、簡易生命保険法36条1項は、何らかの客観的な事情により代表者を定めることができないことが明らかである場合にも、各保険金受取人からの個別的な請求を排除するものではない」と判示しています。
 したがって、遺産分割協議または代表者の選定が困難な事情がある場合には、共同相続人は、自己の相続分を戸籍等で証明して、分割された満期保険金を請求することができます。もっとも、保険会社の対応としては、約款に基づき、個別の請求には応じないことが予想されますので、まずは遺産分割協議または代表者の選定を試み、協議の成立や代表者の選定が困難な事情がある場合に、個別の請求を検討することになると思います。

まとめ

 被相続人の財産に生命保険契約の満期保険金がある場合、満期保険金請求権は、被相続人に帰属した財産(金銭債権)にあたるため、相続財産になります。また、満期保険金請求権は、保険給付を請求する管理に含まれるため、保険法95条1項により、行使することができる時から3年間で消滅時効にかかります。
 これらのことから、満期保険金請求権の評価は、保険契約により定められた満期保険金の請求金額となります。
 満期保険金請求権は、金銭債権(可分債権)なので、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継取得し、遺産分割の対象にはなりません。そのため遺言がなければ、生命保険契約の満期保険金は相続分に応じて当然分割承継されますが、相続人全員の合意で遺産分割の対象に含めることはできます。
 なお、共同相続人の一部による満期保険金の請求は、約款により制限されていますが、自己の相続分の限度で請求することは可能となります。
 今回は、生命保険契約の満期保険金の管理と承継について、解説しました。遺産分割協議において、満期保険金が被相続人の相続財産になるケースが考えられますが、遺産分割協議をスムーズに進めるためにも専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続や遺言など多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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