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清算型遺贈や清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)どのように行うでしょうか?

清算型遺贈や清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)による承継とはどのような承継方法ですか。また、承継手続は、誰が、どのように行うのでしょうか。今回は、注意点も含めて教えて解説します。

清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)

清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)とは、遺産を換価処分し、被相続人の債務等を清算した上で、その残余金を受遺者ないし相続人に分配することを内容とする遺産の承継方法をいいます。
清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)がなされた場合、通常は、同時に遺言執行者が指定されますので、その場合、相続財産の管理、相続財産の換価処分、被相続人の債務の支払、及び残余金の相続人らへの交付など、当該遺言の内容を実現するために必要な行為は、遺言執行者が行うことになります。

清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)の内容と遺産承継の態様

遺言者(被相続人)は、清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言) の内容として、換価すべき遺産の対象・範囲、清算すべき債務の対象等を指定することができます。そのため、残余金の分配方法を指定することもでき、その分配方法については、①「各〇分の1ずつ」といった数量的割合で指定することもできますし、②「〇〇には金〇万円を相続させ、その残余金を△△と××に各2分の 1ずつ相続させる。」といった形で指定することもできます。
また、遺言の内容・遺産承継の態様として、①相続財産の全てを換価して、債務等を清算・控除した後の残余金を相続人に相続させるだけでなく、②特定の財産を特定の相続人に相続させた上で、その余の財産について換価 し、債務等を清算・控除した残余金を一定の割合で相続人に相続させるものや、③相続財産の全てを換価して、債務等を清算・控除した後の残余金について、合計金額が金〇万円以下の場合にはその全額を特定の受遺者に遺贈し、金〇万円を上回る場合には、その上回る部分を一定の割合で分配するなど、様々なものが考えられます。

清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)と遺言執行者

清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)がなされた場合、遺産の換価処分、債務の清算及び残余金の分配等が必要となりますが、これらの全てを相続人に共同して実行させることには困難が伴います。
特に、相続人が複数存在し、かっ、協調関係にないような場合には、共同相続人が協力して遺産を換価・清算し、換価金を適切に管理することは期待できません。
また、遺言執行者が指定されている場合には、相続人には相続財産の管理処分権かないため、相続人が当該財産を処分した場合、原則として無効となりますが、遺言執行者の指定がない場合には、各相続人による相続財産の処分は無効とはならず、遺産が無断で処分された場合には、遺言の内容の実現に支障が生じます。
したがって、清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)をする場合には、遺言の内容を実現するために、同時に、遺言執行者を指定しておかなければなりません。遺言執行者の指定がなかった場合には、相続人らは速やかに遺言執行者選任申立てを行うことを検討します。

不動産の処分における留意点

清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)の執行において、換価すべき遺産の対象に不動産が含まれている場合には、当該不動産を処分するに当たり、登記手続と課税関係に留意する必要があります。

登記手続

遺言執行者は、不動産を処分する場合、相続人全員の相続登記をした上で、当該不動産を相続人の名義で売却し、遺言執行者と買受人との共同申請で買受人への移転登記を行うことになります。登記実務上、被相続人から買受人に対して直接、移転登記をすることはできないとされていますので留意が必要です。また、遺言書の作成に当たり、遺言執行者の権限に疑義が生じないよう、遺言執行者に対して、不動産の売却処分及び登記手続に関する権限を与える旨が明記されていることが一般的です。
また、相続人のいない遺言者が清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)を残して死亡した場合に、遺言執行者が指定されているときは、相続財産管理人を選任するまでもなく、遺言執行者の単独申請により遺産である不動産について相続財産法人名義への登記名義人表示変更の登記をした上で、遺言執行者と買受人との共同申請により買受人への所有権移転登記をすることができるとされています。

課税関係

清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)の執行において不動産を売却した場合、課税実務上、譲渡所得税は、登記された事項に基づいて、登記簿上、売主となる法定相続人に課税されています。そのため、例えば、相続人以外の第三者が受遺者になる場合には、法定相続人は何ら遺産を承継しないにもかかわらず譲渡所得税が課税されてしまうという問題が生じます。
遺言執行者としては、受遺者の税務申告手続がきちんと行われるようにしたり、納税資金を保管しておくなど して、実質的に収益を享受していない法定相続人に対する課税がなされないよう配慮しながら、慎重に遺言執行業務を行うことが望ましいと考えられます。

まとめ

清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言) による承継手続は、次の点に注意しましょう。
(1)清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)とは、遺産を換価し、債務を清算した上で、その残余金を受遺者ないし相続人に分配する承継方法をいう。
(2)遺言者は、換価すべき遺産(積極財産)の対象・範囲、清算すべき債務の対象及び残余金の分配方法等を指定することができる。
(3)清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)をする場合には、遺言の内容を実現するために、同時に、遺言執行者を指定しておく必要がある。
(4)遺産に不動産が含まれる場合、登記手続及び課税関係について留意が必要である。
今回は、清算型遺贈・清算型特定財産承継遺言(相続させる遺言)による承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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