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死後事務委任契約

委任者は、受任者と自己の死後の事務を生前に委任する死後事務委任契約を結ぶことが可能です。今回は、死後事務委任契約について解説します。

死後事務委任契約

委任者は、受任者と自己の死後の事務を生前に委任する死後事務委任契約を結ぶことが可能です。
遺言に定めても法的効果が生じない事項や遺言になじまない事項について、契約に定めることで、自己の希望通りの方法を指定することもできます。
死後事務委任契約は、内縁関係など親族関係以外の者にこれらの死後事務の手続を行ってもらう必要がある場合、親族がない人や親族と疎遠である人の場合、親族がいても、高齢のため事務を任せるのが困難な場合や負担をかけたくない場合などで、希望する受任者によって死後事務が執行されることが期待でき、死後の不安を解消することができます。

死後事務委任契約の効果

家族に頼ることができない人が死亡後に発生する事務を第三者に任せることができ、法定の遺言事項以外の幅広い事項について委任契約の内容とすることによって、自己の希望通りの死後事務を委任することができます。
ただし、①遺言事項は委任事務とすることができない。②費用の預託等の方法を検討しなければならない。③報酬を受ける場合は契約で定めておかなければならない。④当事者が意思能力や行為能力があることが必要である。⑤他の制度との抵触する委任事務を定めた場合、相続や祭祀承継と抵触し、効力や受任者の権限が認められない場合があるなどのことを注意してください。

死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、委任者が受任者に対し、死後の事務を生前に依頼する契約のことをいいます。委任する事務は法律行為でない事務が中心となるもので準委任契約
となります。
委任者の死亡は、委任終了事由になっていますが、委任者が死亡した場合でも契約が終了しない特約を設けた死後事務委任契約を締結することで、委任者の地位を相続人が引き継ぐことなります。なお、裁判例でも、契約履行させることが不合理であるという特段の事情がない場合には、委任者の死亡によって当然には終了することのない委任契約の存在を認めています。
受託者は、契約締結時から善管注意義務を負い、委任者から預り金の保管状況等の報告義務
を負います。
委任者が死亡すると、受任者は、契約で定められた死後の事務を執行することになります。

契約の形式

死後事務委任契約は、準委任契約として契約の成立に一定の様式が要求されておらず、口頭による合意も可能ですが、委任者の生前の意思を明確にするため書面で作成
しておくべきでしょう。
紛争の防止の観点から、実印による押印をして印鑑証明書を添付する方法や公正証書による方法で作成しておくのもよいでしょう。

委任事務の内容

死後事務は、委任者死亡後の以下の事務を内容とすることが想定されます。
①医療費の支払に関する事務、施設利用料の支払と入居一時金等の受領に関する事務
②通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
③菩提寺の選定、墓石建立に関する事務
④永代供養に関する事務
⑤家賃・地代・管理費等の支払と敷金・保証金等の支払、賃借建物明渡し等住居の処理に関する事務
⑥行政官庁等への諸届の事務(死亡届の提出、健康保険証の返還、年金の受給資格抹消申請、住民税・固定資産税の納付等)
⑦ペットの処遇
⑧SNSのアカウントの清算等・相続財産管理人の選任申立
死後事務委任契約の内容は私的自治の原則が及ぶため、広範な事項について定めることができますが、成年後見制度、財産管理契約、遺言などの他の制度との内容が矛盾抵触する場合には、効力問題が生じる恐れ
があり、これらの制度の利用内容と抵触を起こさないよう注意する必要があります。特に、相続させる遺言や遺贈がされている場合に、死後事務委任契約でそれと異なる者への贈与の執行事務が定められている場合、遺言の効力との抵触が生じることになります。

預託金、費用の負担、報酬等

委任事務の執行費用は、委託者及びその相続人が負担し、相続人がいない場合は、相続財産法人が負担します。
受任者の報酬は特約がなければ発生しないため、報酬を希望する場合は特約によりこれを定めておくことか必要です。また、報酬の支払時期について定めかない場合は、業務終了まで支払を受けることができないので、注意が必要です。生前に執行費用を預からない場合、相続人に対し受任者の費用の前払請求を行うか、受任者が支出した後、執行費用の清算を相続人等に求めなければなりません。そのため、執行費用を預託金として預かっておくと執行費用の不足による執行費用を避け円滑な処理が可能となります。預託の目的、預託金額、死後事務契約が終了した場合の清算方法等を契約に記載しておくことが紛争予防に役立ちます。

委任契約の遂行と報告

委任者の死亡により、受任者は、契約内容に記載の委任事務を遂行することになり相続人がいる場合は、相続人が委任者である被相続人の地位を包括的に承継し、相続人との関係が悪化して紛争に発展しないよう注意が必要です。報告の仕方について、契約書で定めている場合は、その方法によりますが、定めかない場合は、事務の執行を行う際には、相続人に対して、その旨及び進捗状況の報告を行い、事務の遂行後は、その内容を報告し、預り金の残額等の財産の引渡し等を行います。ただし、委任者が遺言を作成し、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が相続財産に関する権利義務を有するため、遺言執行者に対しても報告し、財産は、遺言執行者に引き渡すことになります。一方、相続人が不存在の場合は、相続財産管理人が選任されている場合は、相続財産管理人に報告、引渡しを行うことになります。

死後事務委任契約の解除

相続発生前の契約解除

死後事務委任契約は、準委任契約のため、委任者・受任者は、いつでも契約解除することでき、合意による中途解約も可能です。契約により、解除できる場合を、信頼関係が破壊された場合、執務が著しく困難になった場合等のやむを得ない事由があった場合に限定することも可能で、この場合は、その事由がなければ解除できないことになります。

相続発生後の契約解除

相続発生後は、相続人が委任者の地位を引き継ぐことになり、受任者に債務不履行などの事由があり、相続人が相当期間の定めを置いて解除することは可能です。このような事由がない場合でも、委任者の地位を引き継いだ相続人からの解除が可能かどうかが問題となるため、死後事務委任契約書に、委任者が死亡した場合も契約が終了せず、相続人が委任者の権利義務を承継すること、相続人が解除をできる事由を限定して規定して、相続人の解除を制限する規定を置いておくことが多いです。

まとめ

死後事務委任契約について、次の点に注意が必要です。
(1)家族に頼ることができない人が死亡後に発生する事務を第三者に任せることができる。
(2)法定の遺言事項以外の幅広い事項について委任契約の内容とすることによって、自己の希望通りの死後事務を委任することができる。
(3)遺言事項は委任事務とすることができない。
(4)費用の預託等の方法を検討しなければならない。
(5)報酬を受ける場合は契約で定めておかなければならない。
(6)当事者が意思能力や行為能力があることが必要である。
(7)他の制度との抵触する委任事務を定めた場合、相続や祭祀承継と抵触し、効力や受任者の権限が認められない場合がある。
(8)公正証書等の文書で明確に定めておかなければ、委任契約の内容が、委託契約の内容が、委託者の生前の意思通りであったか問題となることがある。
(9)相続人からの解除を制限する条項を定めておかないと、委任者の地位を承継した相続人から契約の解除を主張されることがある。
今回は、死後事務委任契約について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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