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期限や条件付特定財産承継遺言はどのように行うでしょうか?

期限や条件付遺贈、期限や条件付特定財産承継遺言による承継とはどのような承継方法でしょうか。遺言において、期限や条件を設定する際に注意すべき点について解説します。

期限・条件付遺贈、期限・条件付特定財産承継遺言(相続させる遺言)

期限付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)とは、遺贈等の効力の発生ないし消減が将来発生することが確実な事実に係る遺贈等のことをいいます。
これに対して、条件付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)とは、将来発生するか否か不確定な事実に遺贈等の効力発生をかからせる遺贈等のことをいいます。
条件付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)がなされた場合には、当該遺贈等の効力が発生するかどうか不確実となりますので、相続人や遺言執行者においては、
遺言に条件を付す旨の記載がある場合には、当該遺言の効力について、特に留意する必要があります。

期限付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)

期限付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)の種類

期限付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)は、まず、その「期限」に遺贈等の効力が発生するか失われるかで区分され、①将来のある時期に効力が発生するものを「始期付遺贈・特定財産承継遺言」、②将来のある時期に効力が失われるものを「終期付遺贈・特定財産承継遺言」といいます。
また、「期限」の到来時期か確定的か否かでも区分され、③確定した時期を期限としたものを「確定期限付遺贈・特定財産承継遺言」、④到来することは確実であるが、いつであるか分からないという不確定な時期を期限としたものを「不確定期限付遺贈・特定財産承継遺言」といいます。

始期付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)について

始期付遺贈・特定財産承継遺言は、例えば、遺言者が、自分の孫に対して、成人祝いとして一定の財産を遺贈するような場合に利用されます。孫が、成人したときという確定した時期を期限としていますので、確定始期付遺贈となります。
このような始期付遺贈等を実現するためには、遺言執行者が指定されている場合には、遺言執行者において、設定された期限までの間、対象財産やその原資を維持・管理した上で、期限が到来した時点で、受遺者らに対象財産等を交付する必要があります。
始期付遺贈・特定財産承継遺言がなされた場合、受遺者らは、期限が到来するまでの間、始期付権利を取得することになりますが、期限が到来するまでは、これを請求することはできません。なお、期限付遺贈がなされた場合に、遺言者の死亡後その期限の到来前に受遺者が死亡したときは、当該遺贈の効力には影響がないと解されています。
そのため、この場合、遺言書において別段の意思表示がなされていない限り、受遺者の相続人が受遺者としての地位を承継することになります。相続人又は遺言執行者としては、遺言書において、受遺者が遺言者よりも先に死亡した場合の取扱いについても同時に定められている場合がありますので、遺言書の内容を確認する必要があります。

終期付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)

終期付遺贈・特定財産承継遺言は、例えば、遺言者が近親者等の生活費や養育費等を支援する目的で、毎月一定金額を遺贈するような場合に利用されます。たとえば遺言者が、弟に対して、毎月一定額を遺贈することを内容とする不確定終期付遺贈です。
終期付遺贈の場合、受遺者は、遺言者の死亡により権利を取得し、終期が到来したときに、遺贈はその効力を失うことになります。終期の到来後は、遺贈の目的物は相続人に帰属することになります。

条件付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)

条件付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)の種類・内容

条件付遺贈・特定財産承継遺言は、①条件とした事実が発生したときに、遺贈等の効力が発生する「停止条件付き遺贈・特定財産承継遺言」と、②条件とした事実が発生したときに遺贈等の効力が失われる「解除条件付遺贈・特定財産承継遺言」に区分されます。

「負担」付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)との区別

「負担」は、遺言者によって受遺者らに課された法的義務を意味するため、受遺者らの行為を内容とするものだけが「負担」となり得ます。他方で、受遺者らの行為を内容とするかどうかにかかわらず、「条件」とすることができます。また、「負担」が付された遺言については、その遺言の効力は、相続開始と同時に発生しますが、「条件」が付された場合は、遺言の効力の発生が一定の条件の成就・不成就によることとなりますので、「条件」が付された場合の方が、法律関係が不安定な状態が継続することになります。
遺言に付された付款が「負担」か「条件」であるかは、当該遺言の解釈の問題になりますが、遺言者の意思か必ずしも明らかでない場合は、遺贈等の効力を不安定な状態にしておくことは望ましくないため、負担と推定すべきと考えられます。

停止条件付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)

停止条件付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)とは

停止条件付遺贈・特定財産承継遺言は、例えば、遺言者が、受遺者が結婚した場合に相続財産を与えたいと考えているような場合に利用されます。また、遺言者が将来、不動産を取得することが予定されているような場合に、その取得予定の不動産を特定の相続人に相続させたいと考えているようなときに、遺言者が当該不動産を取得していることを条件として、相続させる遺言をすることも可能です。
遺言に停止条件を付した場合、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、当該遺言は、条件が成就したときから効力
を生じます。

停止条件の成就・不成就

停止条件付遺贈・特定財産承継遺言がなされた場合、対象財産は、遺言者の死亡後、停止条件が成就するまでの間、遺言に特段の記載がない限り、共同相続人間の共有に属する
ことになります。
遺言者の死亡後、停止条件が成就した場合には当該遺言の効力が発生し、その内容通りに対象財産が承継されることになりますので、遺言執行者としては、遺言に停止条件が付されている場合には、停止条件が成就した場合にはそれを速やかに確認・把握することができるよう準備をしておく必要があります。他方で、停止条件が成就しなかった場合には、当該遺言の効力は発生せず、対象財産は、共同相続人の共有に属することが確定します。この場合、共同相続人は停止条件の不成就が確定した時点で遺産分割手続をすることが必要となりますが、遺言者の死亡後、一定期間が経過した後に改めて遺産分割手続を行うことになると、相続人に大きな手間・負担がかかります。そのため、遺言書においては、停止条件が成就しなかった場合に備えて、同時に予備的遺言がなされている場合があります。相続人又は遺言執行者は、停止条件が成就しなかった場合、遺言書において予備的遺言がなされているときは、当該遺言に従って、改めて遺産の承継手続を進める必要があります。

受遺者らが停止条件の成就前に死亡した場合について

受遺者らが停止条件の成就前に死亡したときは、遺言者が別段の意思表示をしていない限り、停止条件付遺贈・特定財産承継遺言の効力は生じません。また、遺言書の作成後、遺言者が死亡するまでの間に条件か 成就した場合には、当該遺言は無条件で効力が生じることになり、遺言者が 死亡するまでの間に条件が成就しないことが確定した場合には、当該遺言は無効となります。

解除条件付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)

解除条件付遺贈・特定財産承継遺言(相続させる遺言)について

解除条件付遺贈・特定財産承継遺言は、例えば、遺言者が妻に対して、その所有する不動産等を相続させるが、同人が再婚した場合には当該遺言の効力を失わせたいというような場合に利用されます。
遺言に解除条件を付した場合、受遺者らは、遺言者の死亡により権利を取得し、条件が成就した時から当該遺言は効力を失います。

解除条件の成就・不成就

解除条件の不成就か確定した場合は、受遺者らは遺言によりすでに承継した権利を確定的に取得することになるだけであり、受遺者らや遺言執行者において、当該権利の承継手続等が新たに問題になることはありません。
他方で、解除条件が成就した場合には、当該遺言の効力が失われますので、当該遺言の対象財産は共同相続人の共有に属することになります。法定相続人が複数いる場合には、解除条件が成就した時点で改めて遺産分割手続をすることは相続人に大きな負担を強いることになるおそれがありますので、遺言書においては、解除条件が成就した場合に備えて、同時に予備的遺言がなされている場合があります。相続人又は遺言執行者は、解除条件が成就した場合に、遺言書において予備的遺言がなされているときは、当該遺言に従って、改めて遺産の承継手続を進める必要があります。

受遺者らが解除条件の成就前に死亡した場合について

停止条件付遺贈・特定財産承継遺言とは異なり、解除条件付遺贈・特定財産承継遺言がなされた場合、受遺者らがその条件成就前に死亡したときは、遺言書に別段の意思表示のない限り、当該遺贈等の効力には影響がないと解されています。また、遺言書の作成後、遺言者が死亡するまでの間に条件が成就した場合は、当該遺言は無効となり、 言者が死亡するまでの間に条件が成就しないことが確定した場合は、当該遺言は無条件で効力が生じることになります。

後継ぎ遺贈

後継ぎ遺贈とは

後継ぎ遺贈とは、一般に、受遺者の受けている遺贈(第1遺贈)の利益を、ある条件が成就したか、あるいは期限の到来した場合に、他の者に移転させることを内容とする遺贈(第2遺贈)のことをいいます。

後継ぎ遺贈の効力

後継ぎ遺贈の効力について、第1遺贈が有効であることについて争いはありませんが、第2遺贈については、現行法上は明文の記載がないため、有効説と無効説の争いがあり、無効説も有力に主張されています。
遺言執行者としては、遺言書において後継ぎ遺贈がなされている場合には、当該遺言の他の条項や、遺言書作成時の事情等を踏まえ、遺言の効力及び趣旨を確定して執行を進める必要があります。


まとめ

期限や条件付遺贈、期限や条件付特定財産承継遺言(相続させる遺言) による承継手続は、次の点に注意しましょう。
(1)期限・条件付きの遺贈、期限・条件付きの特定財産承継遺言(相続させる遺言)は、相続財産の承継に「期限」や「条件」が付された遺言による承継方法であり、遺言の効力に影響があるため注意する。
(2)遺言に期限が付されている場合、遺言執行者は期限が到来するまでの間、対象財産やその原資を適切に管理・保管しなければならない。
(3)遺言に付されている付款が「負担」か「条件」か、遺言者の意思が明らかでない場合には、「負担」であると推定する。
(4)遺言に停止条件が付されている場合、遺言執行者としては、停止条件の成就・不成就を適切に確認・把握することができるように準備する。
(5)遺言に解除条件が付されている場合、解除条件が成就した場合を想定した予備的遺言の有無及び内容を確認する。
(6)後継ぎ遺贈の記載がある場合は、遺言書の全記載及び遺言書作成時の事情等からその遺言の効力及び趣旨を慎重に確定する。

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今回は、期限や条件付遺贈、期限や条件付特定財産承継遺言(相続させる遺言)による承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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