相続財産である家屋にかけていた火災保険は、保険契約者の死亡によりどのようになるのでしようか。また、相続財産である家屋が火災になり、これによって火災保険金請求権が発生したような場合、この火災保険金請求権について遺産分割の対象となるのでしようか。損害保険契約に関する権利の管理・承継について解説します。
損害保険等の調査方法
損害保険等の種類
保険業法では保険は生命保険、火災保険や自動車保険等の損害保険、傷害保険や医療保険等の生命保険と損害保険双方の性質を併せ持つ第三分野の保険の三種に分類しています。
ここでは損害保険のうち、火災保険を念頭に解説しますが、保険契約者又は被保険者の死亡にかかわるものとして傷害保険など第三分野の保険にも言及します。
ここでは損害保険のうち、火災保険を念頭に解説しますが、保険契約者又は被保険者の死亡にかかわるものとして傷害保険など第三分野の保険にも言及します。
損害保険等の調査方法
被相続人が加入していた損害保険等の調査方法については、保険証券、通帳、保険会社からの郵送物(保険料や契約の継続に関する書類)、遺言
等によって確認します。
例えば、被相続人が建物を所有していれば火災保険、自動車を所有していれば自動車保険、事業者であった場合は事業に関する保険に加入していた可能性が高いでしよう。また、被相続人が死亡前に事故や病気で入院していた場合は、それらの費用をカバーする医療保険等に加入していないかを確認する必要があります。
なお、住宅ローン付の建物に火災保険がかけられている場合、金融機関が火災保険金に質権等の担保権を設定していることがありますので、その点も確認が必要です。
等によって確認します。
例えば、被相続人が建物を所有していれば火災保険、自動車を所有していれば自動車保険、事業者であった場合は事業に関する保険に加入していた可能性が高いでしよう。また、被相続人が死亡前に事故や病気で入院していた場合は、それらの費用をカバーする医療保険等に加入していないかを確認する必要があります。
なお、住宅ローン付の建物に火災保険がかけられている場合、金融機関が火災保険金に質権等の担保権を設定していることがありますので、その点も確認が必要です。
損害保険等契約に関する権利の相続財産性
保険契約者たる地位の相続財産性
被相続人が自己所有の建物について火災保険に加入し、火災等の保険事故の発生前に被相続人が死亡した場合、被相続人の死亡によって、火災保険契約は終了せず、その承継が問題となります。そして、当該火災保険契約の保険契約者たる地位は、保険契約者の財産であるため、相続財産であり、遺産分割の対象となります。相続人が複数の場合は、遺産共有になります。
なお、相続開始後、遺産分割前に火災が発生した場合、火災保険金は火災保険契約の代償財産であって相続財産ではないので、相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とはならず、共同相続人が各持分に応じて当該保険金を取得するとするのが実務の取扱いです。
なお、相続開始後、遺産分割前に火災が発生した場合、火災保険金は火災保険契約の代償財産であって相続財産ではないので、相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とはならず、共同相続人が各持分に応じて当該保険金を取得するとするのが実務の取扱いです。
損害保険金の相続財産性
被相続人の所有建物が火事に遭い、被相続人が火災保険金の受領前に死亡した場合、当該火災保険金は、一旦被相続人に帰属して被相続人の財産を構成し、死亡によって相続財産となります。また、保険金は可分債権であるため、相続人が複数の場合は、原則として相続分に応じて共同相続人が分割取得します。
建物に住宅ローンがついていると、火災保険金に質権が設定されていたり、抵当権に基づく物上代位がされる可能性があるので注意が必要です。
なお、建物が全焼して保険金額の全部が支払われた場合には当該火災保険も終了しますが、一部滅失に留まり、支払われた保険金が保険金額に満たない場合には、保険契約も継続します。
したがって、保険契約が継続する場合には、保険契約者たる地位の承継が併せて問題となります。
建物に住宅ローンがついていると、火災保険金に質権が設定されていたり、抵当権に基づく物上代位がされる可能性があるので注意が必要です。
なお、建物が全焼して保険金額の全部が支払われた場合には当該火災保険も終了しますが、一部滅失に留まり、支払われた保険金が保険金額に満たない場合には、保険契約も継続します。
したがって、保険契約が継続する場合には、保険契約者たる地位の承継が併せて問題となります。
死亡による保険金の相続財産性
傷害保険等においては、被相続人が傷害や疾病により死亡した場合に死亡保険金が支払われる保険商品があります。生命保険は、死亡を保険事故とするものですが、これらの保険は、傷害又は疾病を保険事故とするものとして、保険法において傷害疾病損害保険又は傷害疾病定額保険に分類されます。傷害疾病損害保険は、損害てん補方式の保険で、損害保険の一種に位置付けられ、傷害疾病定額保険は、定額給付方式の保険で、損害保険と生命保険の中間的な性格を持つ保険として位置付けられています。
傷害疾病定額保険の相続財産性
被保険者死亡の場合に給付される保険金が相続財産となるかについては、傷害疾病定額保険では、生命保険金とおおむね同様に受取人が誰かによって異るものと考えられます。すなわち、保険金は、受取人として指定又は変更された者が、固有財産として当該保険金を取得し、相続財産にはなりません。
傷害疾病損害保険の相続財産性
傷害疾病損害保険は、損害保険の一種であることから、被保険利益を有する者すなわち被保険者が保険金請求権を取得することになり、保険法上は受取人に関する規定はありません。
したがって、保険金請求権は、一旦被保険者に帰属し、これが相続財産として相続人に承継され、また相続人が複数の場合は可分債権として相続分に応じて分割取得されるものと考えられます。
したがって、保険金請求権は、一旦被保険者に帰属し、これが相続財産として相続人に承継され、また相続人が複数の場合は可分債権として相続分に応じて分割取得されるものと考えられます。
高度障害保険金の相続財産性
害保険等において、被保険者が高度障害状態となった場合に、高度障害保険金が支給されるものがあり、その後、被保険者が死亡した場合には、その相続財産性が問題となります。
高度障害保険金の受取人は、約款により被保険者に限定され、被保険者が請求できない場合には予め指定された指定代理人による請求が認められていることが一般的です。
このような場合は、被保険者が取得した保険金は、被保険者の財産といえるため、その後被保険者が死亡した場合は相続財産となります。
高度障害保険金の受取人は、約款により被保険者に限定され、被保険者が請求できない場合には予め指定された指定代理人による請求が認められていることが一般的です。
このような場合は、被保険者が取得した保険金は、被保険者の財産といえるため、その後被保険者が死亡した場合は相続財産となります。
失効返戻金の相続財産性
傷害疾病保険において、保険事故以外の事由によって、被保険者が死亡すると、保険契約は失効し、失効返戻金か発生することがあります。
この失効返戻金は相続財産となり、相続人が複数の場合は、可分債権として、相続分に応じて当然分割され、相続人全員の同意がない限り、遺産分割の対象とはならないことになります。
この失効返戻金は相続財産となり、相続人が複数の場合は、可分債権として、相続分に応じて当然分割され、相続人全員の同意がない限り、遺産分割の対象とはならないことになります。
損害保険契約の保険料支払、更新手続等
損害保険契約を解約せずに相続人が承継して継続する場合、遺産分割協議等が成立するまでの間、保険料の支払や更新手続が行われないと、保険会社による解除等により契約が終了してしまうこともあり得ます。そのため、相続人としては、なるべく早く保険会社に連絡をとり、保険料の支払方法や更新手続の要否について確認しておくべきでしょう。
損害保険契約を解約する場合、保険契約者たる地位は相続人全員の準共有となりますので相続人全員の同意が必要です。火災保険の場合、保険金請求権に金融機関を質権者とする質権が設定されていると、解約には質権者の同意も必要です。
損害保険契約を解約する場合、保険契約者たる地位は相続人全員の準共有となりますので相続人全員の同意が必要です。火災保険の場合、保険金請求権に金融機関を質権者とする質権が設定されていると、解約には質権者の同意も必要です。
損害保険金の消減時効
損害保険金請求権の消滅時効は、生命保険と同じく、権利を行使することができる時から3年とされています。消減時効の起算点については、約款に定めがあるのが通常であり、約款の定めを踏まえて、消滅時効の完成に注意することが必要です。
損害保険契約の評価
損害保険契約の評価は、解約返戻金が発生する場合には相続開始時点の解約返戻金の額となります。
損害保険金等として現実化していた場合には保険金等の額となります。
損害保険金等として現実化していた場合には保険金等の額となります。
損害保険契約者たる地位の承継
損害保険の契約者が死亡し、契約が失効しない場合は、契約者たる地位は相続財産となります。そして、遺言がない場合には、遺産分割により、保険契約の承継者を決定し、承継者は保険会社に通知して名義変更等の手続を行います。火災保険の場合、建物を取得する者が保険契約も承継することが通常です。遺言がある場合、遺言に従って承継され、名義変更手続を行います。遺言執行者がいる場合には、執行者が名義変更手続を行います。
発生した保険金の承継
被相続人所有の家屋に火災保険が掛けられており、相続発生前に火災により火災保険金請求権か発生した場合、この火災保険金請求は、被相続人の財産ですので、相続財産となり、被相続人の相続人が保険金請求権を承継取得します。そして、火災保険金請求権は、通常の金銭債権なので、相続人が複数の場合は、満期保険金と同様、各共同相続人がその相続分に応じて当然に分割取得し、遺産分割の対象とはなりません。もっとも、相続人全員の合意により、遺産分割の対象に含めることが可能であることも満期保険金と同様です。遺言がある場合は、遺言に従って承継取得します。
遺産分割又は遺言により保険金を取得した場合、遺産分割協議書や遺言書をもって、保険会社に保険金を請求します。遺言執行者がいる場合、遺言により、死亡と同時に相続されることから、金銭債権の移転について執行の余地がないともいえそうですが、保険金を実際に受領するまでには様々な手続が必要となり、執行の余地があるとの指摘もあります。実務的には、保険会社の対応に応じて判断する必要があろうかと思われます。
遺産分割又は遺言により保険金を取得した場合、遺産分割協議書や遺言書をもって、保険会社に保険金を請求します。遺言執行者がいる場合、遺言により、死亡と同時に相続されることから、金銭債権の移転について執行の余地がないともいえそうですが、保険金を実際に受領するまでには様々な手続が必要となり、執行の余地があるとの指摘もあります。実務的には、保険会社の対応に応じて判断する必要があろうかと思われます。
まとめ
損害保険契約者が死亡した場合、損害保険契約に関する権利の管理・承継に当たって次の点を注意します。
(1)損害保険契約及び損害保険金等の存否は、保険証券、通帳、郵送物等により確認する。
(2)損害保険契約の契約者たる地位は、相続財産であり遺産分割の対象となる。被相続人死亡前に発生していた損害保険金請求権は、相続財産となるが、相続分に応じて当然分割され、相続人全員の同意がない限り遺産分割の対象とはならない。
(3)損害保険契約を解約せずに継続する場合、遺産分割協議が成立するまでの間、保険料の支払い、更新手続に注意する。
(4)損害保険金請求権の消滅時効は、権利を行使することができる時から3年とされている。
(5)損害保険契約の評価は、解約返戻金が発生する場合には相続開始時点の解約返戻金の額により、保険金等として受領する場合には保険金等の額となる。
(6)損害保険契約の契約者たる地位は相続財産となるため、遺言がない場合は遺産分割により、保険契約の承継者を決定し、遺言がある場合は遺言の内容に従って承継され、名義変更手続を行う。
(7)被相続人死亡前に発生していた損害保険金は、相続財産となり、遺言がなければ被相続人の相続人が、遺言があればその内容に従って保険金請求権を承継する。
今回は、損害保険契約に関する権利の管理・承継について、解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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(1)損害保険契約及び損害保険金等の存否は、保険証券、通帳、郵送物等により確認する。
(2)損害保険契約の契約者たる地位は、相続財産であり遺産分割の対象となる。被相続人死亡前に発生していた損害保険金請求権は、相続財産となるが、相続分に応じて当然分割され、相続人全員の同意がない限り遺産分割の対象とはならない。
(3)損害保険契約を解約せずに継続する場合、遺産分割協議が成立するまでの間、保険料の支払い、更新手続に注意する。
(4)損害保険金請求権の消滅時効は、権利を行使することができる時から3年とされている。
(5)損害保険契約の評価は、解約返戻金が発生する場合には相続開始時点の解約返戻金の額により、保険金等として受領する場合には保険金等の額となる。
(6)損害保険契約の契約者たる地位は相続財産となるため、遺言がない場合は遺産分割により、保険契約の承継者を決定し、遺言がある場合は遺言の内容に従って承継され、名義変更手続を行う。
(7)被相続人死亡前に発生していた損害保険金は、相続財産となり、遺言がなければ被相続人の相続人が、遺言があればその内容に従って保険金請求権を承継する。
今回は、損害保険契約に関する権利の管理・承継について、解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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