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保険契約者が死亡した場合、生命保険契約はどのようになるのでしようか?

第三者を被保険者とする生命保険契約の保険契約者が死亡した場合、生命保険契約の保険契約者たる地位はどのようになるのか解説します。

保険契約者たる地位の法的性質

生命保険契約の中には、保険契約者が第三者を被保険者と指定しているものがあります。配偶者が他方配偶者を被保険者とする場合、親が子を被保険者とする場合、会社が役員を被保険者とする場合などが典型です。
このような保険契約者以外の第三者を被保険者とする生命保険契約については、賭博的な利用の懸念やモラルリスクの問題等が指摘されていますが、日本では、被保険者の同意を効力発生要件として契約することが認められています。このような第三者を被保険者とする生命保険契約において、被保険者生存中に保険契約者が先に死亡することがあります。保険法及び約款上、保険契約者の死亡は保険契約の終了事由とはされておらず、相続による承継が問題となりますが、解約返戻金等の財産的価値がある場合には、当該保険契約者たる地位が相続財産性を有し、遺産分割等の対象となります。
このような保険の存在は、被保険者の同意が効力発生要件となっていることから、保険の存在を把握している被保険者からの連絡等により発覚することがあります。また、保険証券や保険会社からの郵送物等からも、被相続人が第三者を被保険者とする保険を契約していたことが判明することもあります。

相続人全員による準共有と代表者規定

遺産(準)共有

保険契約者たる地位の承継について遺言の定めがなく保険契約者の相続人が複数の場合、保険契約者たる地位は、共同相続人全員による、相続分の割合での遺産共有(準共有)となります。
そのため、遺産共有状態における保険契約者たる地位は、民法の共有に関する規律に従って管理すべきことになります。

約款による代表者の定め

保険契約者たる地位が遺産共有状態にあるときに、当該保険契約の解約、それに伴う解約返戻金の請求、定期型の保険における保険期間満了後の更新、及び保険金受取人の変更などは、共有物(遺産)の処分又は変更に当たり、相続人全員の同意が必要です。
もっとも、保険約款では、保険契約者が複数の場合にその中から代表者1名を定めてその者が生命保険契約に基づく手続や取引を行う旨定めているのが通常です。その場合、代表者1名を選定することにより、その代表者が各種手続や取引を行うことになります。ただし、保険会社からの通知や書類の送付は代表者のみに対してされることになり、また契約者名義の変更、解約、保険金受取人の変更、保険金請求なども代表者が他の相続人を代理して行うことが可能ということになるため、代表者の選定に当たってはその点も踏まえつつ、最終的な遺産分割の内容を見据えながら、慎重に検討すべき場合もあると思われます。また、代表者に選定された相続人も、他の相続人の同意を得ながら各種手続や取引を行うべきでしよう。
また、代表者が定まらないときや、他の相続人の所在が不明なときは、約款により、保険会社が1人に対して行った行為は、事実上、他の保険契約者に対しても効力を生じることが定められているのが一般です。
なお、保険契約者が複数いる場合の保険料支払義務については、保険約款により連帯責任を負わせる旨の定めがあり、保険会社は、契約者である相続人の1人に対して、保険料全額を請求することができるとされていることが通常です。当該生命保険の保険料払込みが満了していない場合、保険料が支払われないと、保険会社により債務不履行に基づく解除がされたり、約款に基づき契約が失効したりすることもあり得ます。したがって、保険契約の存続や自己への名義変更を希望する相続人としては、代表者の有無如何にかかわらず、遣産分割協議等が成立するまでの間、解除や失効がないよう保険料の支払にも注意を払っておくべきでしょう。

保険契約者たる地位の評価

保険契約者たる地位の相続財産としての評価は、保険金の額ではなく、相続発生時点における解約返戻金の額に基づいて評価するのが一般的です。解約返戻金の額は、契約先の生命保険会社から解約返戻金証明書を取得して確認します。証明書の発行に一定期間がかかることがありますので、早めに手続をした方がよいでしょう。

遺産分割による承継

保険契約者たる地位は相続財産性を有し、遺言がなければ遺産分割の対象となります。したがって、遺産分割協議、調停・審判により、保険契約を承継 する相続人が確定したときは、これに基づいて当該相続人が保険会社との間で契約者の名義変更の手続を行うことになります。
遺産分割に基づいて保険契約者となり名義変更を行った相続人は、契約の解約、変更、受取人の変更など保険契約者の権限を行使することができます。また、被保険者にも、保険契約者に対し保険契約の解除を請求する権利が定められており、契約者や受取人が変更された場合に解除請求される可能性があることにも留意する必要があります。
なお、受取人の変更については、保険で契約者の地位を承継した相続人が受取人の変更権を行使することを認めています。受取人の変更を希望する相続人としては、事前に保険約款を確認する必要があります。
また、遺産分割により保険契約者の地位を複数の相続人が共同で相続することとなった場合は、約款により代表者を定める必要があります。

遺言による承継

保険契約者(被相続人)が、当該保険契約者たる地位について第三者に承継させる遺言を作成していた場合は、その遺言に従って、保険契約が承継されます。
もっとも、遺言がある場合、一般的な遺言の有効性や撤回・抵触行為の有無の確認が必要なことはもちろんですが、保険契約の特定がされているか、またそもそも保険契約者たる地位を遺贈又は相続させる遺言と解釈できるのかが問題になることもあり得るので、注意が必要です。遺言執行者が指定・選任されている場合は、遺言執行者が名義変更手続及び保険証券等の必要書類の引渡しを行うことになると考えられます。
なお、保険契約者(被相続人)の遺言により、保険金受取人の変更がされていた場合は、遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人による保険会社への通知が保険会社への対抗要件とされています。したがって、保険契約者の相続人としては、遺言の有効性や撤回・抵触行為の有無などを踏まえて通知すべきかを判断することになると思われます。この通知は、遺言執行者でも可能と解されているので、受取人が相続人以外の場合は、遺言執行者の選任手続が必要になることもあります。

まとめ

第三者を被保険者とする生命保険契約の保険契約者が死亡した場合、生命保険契約に関する権利の管理・承継に当たって次の点を注意します。
(1)保険契約者たる地位は、相続財産であり遺産分割等の対象となる。
(2)保険契約者たる地位の承継について遺言がない場合、保険契約者たる地位は相続人全員の準共有となるが、通常は約款により代表者1名を定めてその者が保険契約を管理する。
(3)保険契約の評価は、相続開始時点における解約返戻金額である。
(4)保険契約者たる地位の承継について遺言がない場合、遺産分割によって定める。
(5)保険契約者たる地位の承継について遺言がある場合、遺言に従って承継される。遺言執行者は名義変更手続等を行う。
今回は、生命保険契約に関する権利の管理・承継について、解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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