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供託って何?どんな制度ですか?

「供託」とは、法務局や地方法務局などの供託所に、金銭・有価証券またはその他の物品を寄託することです。最終的には、その財産をある人に取得させることで、法律上の目的を達成しようとするための制度です。 今回は、供託の内容と手続きなどについて解説します。

供託とは

 供託とは、国の機関である「供託所」にお金などを預けることで、地代などを「支払ったこと」と同じ効果になる制度です。たとえば、地主や大家が行方不明になるなど、地代や家賃を支払えない状態になった場合、そのまま放置しておくと、借地権や賃貸借契約が解除されることにもなりかねません。そこで、「供託所」に地代や家賃を預け、その後の適切な対処をしてもらいます。供託所とは、法務局、地方法務局とその支局、法務大臣が指定する出張所などになります。
 「供託」には、その機能により「弁済供託」「担保保証供託」「執行供託」「保管供託」「没取供託」の5つがあります。「供託」することで、債務者は債務を免れ、債務不履行の責任を問われることはありません。
 ただし、「供託」が認められるのは、民法や商法、民事訴訟法、民事執行法などの法律の規定により、「供託」が義務付けられている場合や、「供託」をすることが許されている場合に限られます。

弁済供託

「弁済供託」は、金銭その他の財産の給付を行うとしても、債権者が受領を拒んだり、債権者の住所不明によりその受領を受けることができない、債権者の死亡により相続人が不明であるなどの理由により、債務の履行ができないとき、供託所に供託することによって債務を免れることができます。

担保保証供託

 「担保保証供託」とは、宅地建物取引業、割賦販売業、旅行業等のように、取引の相手方が不特定多数で取引活動も広範である場合、取引の相手方に対して取引上の損害を与えるおそれのある営業について、一定の金銭などの供託を行うことです。営業活動によって損害を被る被害者を保護するために設けられています。

執行供託

 「執行供託」とは、裁判所から差押命令を受けた場合、債務者は金銭債権の全額に相当する金銭を供託することができます。例えば、従業員の給与が差し押さえられた場合に用いられます。

没収供託

 「没取供託」とは、一定の額の金銭等を供託し、供託物に対する供託者の所有権をはく奪して国家に帰属させることとする供託のことをいいます。例えば、選挙などで候補者が一定の得票数に満たなかった場合や、途中で立候補を辞退した場合での供託金没取がこれにあたります。

保管供託

 「保管供託」とは、散逸の防止のために保管・保全を目的としてされる供託です。例えば、銀行や保険会社などの業績が悪化して資産状態が不良となったとき、その財産の散逸を防止するために監督官庁は財産の供託を命じます。

供託所とはどこにある

「供託所」は、供託事務を取り扱う国の機関で、金銭や有価証券、振替国債などの供託は、法務局や地方法務局、これらの支局で取り扱っています。供託すべき供託所は,供託の種類によって異なります。

弁済供託>>> 債務履行地に所在する供託所
営業上の保証供託>>>主たる営業所または事務所の最寄りの供託所
裁判上の保証供託>>>担保を立てるべきことを命じた裁判所または執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所
執行供託の場合>>>債務履行地の供託所


供託の手続きはどうするのか

 「供託」をするには、「供託」の種類に従って定められた様式による供託書に必要事項を記載し、供託物を添えて「供託所」に提出します。また、パソコンからインターネットを利用して「供託」の申請もできます。
 「供託」の申請は、代理人やご家族の方、会社の従業員などによる申請も認められています。また、郵送により申請をすることも認められています。
 これらの「供託」の申請自体に手数料は必要ありません。ただ、郵送や振込制度を利用して供託の申請をする場合には、郵券や供託金を振り込むための振込手数料が必要です。
ここでは、地代や家賃の弁済供託の手続きについて説明します。次のような場合、弁済供託ができます。

弁済供託ができる主な例

(1)支払日に地代・家賃を持参したが、地代・家賃の値上げや土地・建物の明け渡し要求などの理由で受領を拒否された場合(受領拒否
(2)地主・家主と争いが続いていて、あらかじめ地代・家賃の受領を拒否され、地代・家賃を持参しても受け取ってもらえないことが明らかな場合(受領拒否
(3)地主・家主等受取人が行方不明の場合(受領不能)
(4)地主・家主であると称する複数の者から地代・家賃の支払請求を受け、いずれの者に支払ってよいかわからない場合または地主・家主が死亡し、その相続人が誰であるか不明の場合(債権者不確知

供託に必要なもの

供託には概ね次のような書類が必要となります。
(1)供託書・・・用紙は供託所でもらえます。
(2)資格証明書・・・会社・法人等が供託する場合、成後3か月以内の代表者の資格を証する書面(登記事項証明書等)が必要です。
(3)委任状・・・代理人の方が申請する場合に必要となります。
(4)封筒及び郵便切手・・・弁済供託等の通知を要する場合に必要となります。

供託金の納入

 供託金の納入については、直接供託所の窓口で取り扱う供託所と日本銀行又はその代理店に納める供託所とがあります。また、納入の方法については,現金の納付のほかに,電子納付を選択することもできます。

供託物の払渡し

供託物の払渡請求は,還付請求取戻請求の2種類があります。

還付請求

 供託関係に基づく権利者すなわち被供託者からの払渡請求をいい、これにより供託関係は本来の目的を達して終了します。
 供託物の還付請求には概ね以下のような書類が必要となります。
(1)供託物払渡請求書・・・供託所に備え付けてあります。
(2)実印と印鑑証明書・・・印鑑証明書は作成後3か月以内のものが必要です
(3)資格証明書・・・会社・法人等が請求する場合は、作成後3か月以内の代表者の資格を証する書面(登記事項証明書等)が必要です。
(4)配当証明書・・・裁判所等の官公署からの配当による払渡請求の場合には、官公署が発行する証明書が必要です。
(5)委任状・・・代理人の方が請求する場合に必要となります。
(6)変更証明書・・・供託書記載欄の被供託者の住所・氏名が変更している場合には、住民票や戸籍抄本等が必要です。
(7)反対給付があったことを証する書面・・・反対給付の約定等がある場合に必要です。

取戻請求

 供託後に供託原因が消滅したこと、当該供託が無効であること等による供託者からの払渡請求をいい、これにより供託関係は本来の目的を達しないまま終了します。
 供託物の取戻請求には概ね以下のような書類が必要となります。
(1)供託物払渡請求書・・・供託所に備え付けてあります。
(2)実印と印鑑証明書・・・印鑑証明書は作成後3か月以内のものが必要です。
(3)資格証明書・・・会社・法人等が請求する場合は,作成後3か月以内の代表者の資格を証する書面(登記事項証明書等)が必要です。
(4)委任状・・・代理人の方が請求する場合に必要となります。
(5)変更証明書・・・供託書記載欄の供託者の住所・氏名が変更している場合には,住民票や戸籍抄本等が必要です。

供託による抵当権単独抹消について

 住宅ローンを完済されたら抵当権の抹消登記を申請することになりますが、このような抵当権抹消ではなく、特殊な抵当権抹消があります。休眠抵当権と呼ばれるもので、明治時代や大正時代に設定された登記が抹消されないまま現在も残っている抵当権を抹消する場合です。
 通常であれば抵当権の抹消は、抵当権者と所有者の共同で登記申請をしなければなりません。抵当権者が死亡されている場合は、抵当権者の相続人と登記申請しますが、休眠抵当権の場合、明治や大正に設定されているため、抵当権者が亡くなっている場合が多く、相続人の調査や抹消登記の協力が難しくなります。
 このような場合に、不動産の所有者が単独で抹消できる特例が定められています。

不動産の所有者が単独で抹消できる特例(不動産登記法70条3項)

 この特例をつかうには次の要件があります。完済した証明書(領収書等)の有無によって手続きが変わりますが、契約書と領収書などの書類が残っていることはめずらしく、ほとんどが供託による抵当権単独抹消をされます。
 要件として、「抵当権者が行方不明であること」「弁済期から20年以上経過していること」「登記された金額及び利息・損害金の全額を供託すること」の3つをすべて満たすことが必要です。

抵当権者が行方不明であること

 抵当権者の所在を知らないというだけでは足りず、不在籍・不在住証明書の取得や書類を郵送したけど返送されてきた封筒など、調査はしたけど所在がわからなかったという証拠を提出しなければなりません。

弁済期から20年以上経過していること

 弁済期から20年以上経過していることは、弁済期が登記されていれば容易に判断できます。また、弁済期が登記されていない場合は、債権成立の日を弁済期として弁済期を判定してもらいます。

登記された金額及び利息・損害金の全額を供託すること

 登記簿に記載された金額と、現在までの利息や損害金の全額を支払わなければなりません。ただ、明治や大正時代に設定された抵当権は10円とか100円とか少額です。現在の貨幣価値に換算すれば相当の金額になりますが、休眠抵当の抹消に関してはそのままの金額で計算します。
 なお、この金額を抵当権者に支払わなければなりませんが、抵当権者の所在が不明のため法務局に供託することで、相手に支払ったこととなります。その場合、供託手続は、抵当権者の住所を管轄する法務局にしなければなりません。

供託による抵当権単独抹消の流れ

抵当権者に弁済受領催告書を送付

 登記簿謄本の情報をもとに、配達証明付き本人限定郵便で登記簿上の抵当権者あてに「弁済受領催告書」を送付します。弁済受領催告書とは、所有者から抵当権者あてに元金、利息、損害金合計を弁済するので受け取りを催告する旨の書面です。
 この書面が、「宛所に尋ね当たりません」と記載されて返送された場合は、その封筒が「登記義務者の所在が知れないことを証する書面」として登記申請の添付書類になります。

供託金の計算

 登記簿謄本の債権額、利息、弁済期などの情報をもとに、被担保債権の成立の日から供託申請の日までの元金、利息、損害金を計算します。なお、法務省のホームページに計算ソフトが公開されていますので、活用してください。

遅延損害金計算ソフトウェアのダウンロードについて

供託申請

 供託申請は、債権者の住所地を管轄する法務局になります。供託申請し、その日のうちに供託金を納付します。供託が受理されると供託書正本が交付されます。
供託をしたことによって、弁済したことになるので、被担保債権が消え、抵当権も抹消することができるようになります。

抵当権抹消登記申請

 供託書正本、登記義務者が行方不明であることを証する書面(抵当権者あてに送り返送された封筒)、被担保債権の弁済期を証する書面(閉鎖登記簿謄本)を添付し、所有者から単独で抵当権抹消登記申請を行います。

まとめ

 今回は、供託の内容や手続き、供託による抵当権単独抹消について解説しました。
 供託とは、債権者が弁済を受領しない場合に、弁済者が弁済の目的物を債権者のために供託所に寄託して、債務を免れる制度です。弁済の提供をすれば、受領されなくても債務不履行の責任を負うことはありませんが、債務が消滅するわけではないので、債務を消滅させるために供託という制度を利用することになります。また、弁済者に何の過失もなく、誰が債権者か分からないときにも供託できます。
 一般の方にはなじみのない制度でもありますが、家賃支払いに関連しての「弁済供託」、営業保証金に関連しての「担保供託(担保保証委託)」、従業員の給料差し押さえに関連しての「執行供託」など有用な制度となっています。司法書士は、供託手続きの専門家として業務を行っております。当事務所においても多数供託業務をご依頼いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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