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譲渡制限株式の相続人に対する売渡請求について

譲渡制限のある株式を保有する株主に相続が発生した場合、会社は当該相続人に対し、その株式について売渡しを請求することができます。相続による株式の移転を阻止することができることから、譲渡制限株式の相続人に対する売渡請求は会社にとって好ましくない者が株主となることを防止するとともに、株式分散の防止への有効な対策となります。今回は売渡請求の活用について解説します。

今回の事例

株式会社●●●の株式は、甲(50%)、乙(25%)、丙(25%)が保有しており、会社の定款には株式について譲渡制限が付されています(売渡請求の条項は定めていません。)。最近、高齢の丙に代わって丙の子の丁が会社の経営に口をはさむようになりました。戊は、これまで会社経営には携わっていないにもかかわらず、会社の増資や設備投資を決めるに当たり、甲(代表取締役)や乙(取締役)の意向に反対の意見を丙を通して主張してくるようになりました。丙が亡くなれば、丙の株式を相続した戊が会社の株主となりますが、会社運営に支障を来すおそれがあるので、事前に廃除しておきたいと考えています。その対策として売渡請求の活用した場合の効果とリスク及び注意点について解説します。

効果とリスク及び注意点

効果

(1)会社にとって不都合な者が株式を保有することを防止することができ株式の分散を防止することができます。

リスク

(1)売渡請求に係る株主総会において、利害関係人が有する議決権は行使できないため、残りの株主が支配株主となり、会社の経営権を奪われる可能性があます。
(2)売買価格の決定申立てには時間とコストがかかります。
(3)買取後期末までに生じた損失により期末に欠損が生じた場合、業務執行者に補填責任がかかります。

注意点

(1)あらかじめ定款に定めをしておかなけれはなりません。
(2)相続があったことを知った日から1年以内に請求しなければなりません。
(3)当事者間で協議が調った場合を除き、請求の日から20日以内に売買価格の決定の申立てを行わなければなりません。
(4)剰余金の分配可能額を超える買取りはできません。

譲渡制限株式の売渡請求

内容

株式を譲渡する場合に、会社の承認を要する旨の定めがある場合、その株式を「譲渡制限株式」といいます。株式の譲渡制限は、会社にとって好ましくない者が株主になることを防止することができる制度ですか、旧商法では譲渡制限をする場合には全ての株式が対象となっていました。また、株式の「譲渡」を制限するものであったため、相続や合併等の一般承継についてはその制限の対象とされていませんでした。
会社法においては、譲渡制限株式を種類株式の一つとして規定したことから、定款に定めることにより種類株式として特定の株式に譲渡制限を付すことができるようになり、非公開会社において事業承継等の場面で使いやすくなりました。また、相続や合併等により株式を取得した一般承継人に対しては、その株式を会社に売り渡すことを請求することができるようになりました。

効果

譲渡制限株式を相続により取得した者に対し、会社は、あらかじめ定款に定めておくことにより、会社に当該株式を売り渡すように請求することができます。売渡請求を行い、自己株式を買い取ることにより、相続により株式を取得した反対株主らが会社を支配することを防止することができます。まな、自己株式を取得することにより、株式を分散させないように防止することが可能となります。

譲渡制限株式の売渡請求手続

売渡請求の特別決議

会社は、株主総会の特別決議により、売渡請求の対象となる株式の数及び当該株式を有する者の氏名又は名称を定めます。この決議には、当該承継人は議決権を行使することができません。
株主との合意により会社が自己株式を取得する場合、会社が自己株式を取得するに当たって、当該株式の売主以外の株主に対し、売主追加請求権のあることを通知しなければなりませんが、相続により株式を取得した株主から自己株式を取得する場合には、公開会社の場合等を除き、他の株主への通知は不要です。


売渡請求の実行

会社は、特別決議による売渡請求決定後、当該株式を有する者に対し、売渡しを請求することができます。この請求は、会社が相続があったことを知った日から1年以内に行う必要があります。なお、会社は、いつでも売渡しの請求を撤回することができます。

売買価格の決定

売渡請求における株式の売買価格は、会社と売渡請求を受けた者との間で協議により定めます。当事者間で協議が調わない場合は、会社または売渡請求を受けた者は、裁判所に対し、売渡請求があった日から20日以内に、売買価格の決定の申立てをすることかできます。20日以内に申立てがなされなかった場合は、売渡請求は効力を失うため、会社は再度株主総会決議を経て請求を行う必要があります。
売買価格は、自己株式の取得となることから取得財源規制の対象となるため、買取りの効力が生じた日の剰余金の分配可能額を超えることはできません。買取り後に事業年度内に損失が生じ、期末に欠損が生じた場合は、買取りに際して注意を怠らなかったことを証明しない限り、業務執行者に補填責任か生じます。

譲渡人の税務上の取扱い(所得税の特例措置)

株主が発行会社に株式を買い取ってもらう場合、売却価額が自己株式の取得に対応する資本金等の額を超える部分については、みなし配当があったものとして配当所得とされますが、相続により非上場株式を取得した個人が当該株式を会社に売却した場合、所得税の特例措置が適用され、配当とみなされません。

まとめ

今回の事例の解決策としては、「定款の変更」と「相続開始後の売渡請求」が考えられます。
会社●●●の株式は、全て譲渡制限が付されていますが、売渡請求についての定款がないため、丙が亡くなり相続が発生するまでに定款を変更し、売渡請求の条項を定める必要があります。
定款の変更は、株主総会の特別決議が必要となりますので、甲と乙の賛成により変更を行うことになります。
定款変更をした後に、丙が亡くなった場合、丁が丙の保有していた株式を相続することになりますので、会社は、株主を招集して売渡請求に関する議決を行い、丙が亡くなってから1年以内に丁に対して売渡請求を行うことになります。
今回は、相続発生前の対策として売渡請求の活用について解説しました。当事務所は、相続や遺言、会社手続きについて、多数の実績がありますのでお気軽にご相談ください。

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