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自己株式の合意取得について

自己株式の取得は、2006年の会社法施行においてその方法が緩和され、より機動的に取得できるようになりました。会社が自己株式を取得することで、会社の株主を整理し、経営者の議決権比率を高めることができ、相続対策の一環として有効に活用していくことができます。また、非上場株式の場合、相続をしても換金性は低い一方相続財産としては比較的高額に評価されるため、会社に買い取ってもらうことで納税資金を確保することもできます。今回は自己株式の合意取得についてについて解説します。

今回の事例

株式会社●●●の代表取締役甲は、会社の45 %の普通株式を保有していますが、先代の相続の際に甲の兄弟らにわたった株式を回収し、自分の長男(丁)に経営権を集中させたいと考えています。今年、会社の20 %の普通株式を保有していた甲の兄(乙)が死亡し、その子(戊)らが納税資金を捻出するため甲に会社の株式を買い取ってほしいと言ってきました。丁にはそれらの株式を買い取る経済的余裕はありませんが、株式会社●●●には20 %の株式を買い取るだけの余裕資金はあります。これを機に、甲は経営権を 丁に集約させる方法を考えています。その対策として株式を譲渡しようとする特定の株主との合意に基づいて会社が自己株式を取得する場合の方法・効果とリスク及び注意点について解説します。

効果とリスク及び注意点

効果

(1)株主を整理でき、経営者の議決権比率を高めることができる。
(2)株式を相続した者にとっては納税資金を確保できる。

リスク

(1)高額所得者から自己株式を買い取った場合、みなし配当課税により譲渡者の税負担が重くなるおそれがある。
(2)時価よりも低額又は高額で買い取ったときには、特別な課税関係が生じる場合がある。

注意点

(1)剰余金の分配可能額を超える買取りはできない。
(2)特定の株主から取得する場合は、株主総会の特別決議による承認を得なければならない。
(3)特定の株主から取得する場合、他の株主に対し売主追加請求権を付与しなければならない。

自己株式の取得

内容

会社が自ら発行する株式を株主から取得することを、自己株式の取得といい、金庫株とも呼ばれています。従来、会社が自己株式を取得することは、会社の内部資金の減少を招くことから原則禁止とされていました。しかし、企業再編等の活用に自己株式保有の必要性が高まり、平成13年には商法改正により自己株式の保有が認められるようになりました。平成18年の会社法施行では、さらに年1度の定時株主総会であらかじめ必要事項を決議しておかなければ自己株式の買取りができなかったところを、臨時株主総会決議においても自己株式取得の決議ができるようになり、会社はいつでも何度でも自己株式の買取りを行うことができるようになりました。また、株式を売却する株主(譲渡人)を指定しない方法も新設され、全ての株主から会社が平等に自己株式を買い集めることができるようになり、自己株式の取得方法が多様化されより取引しやすくなりました。
ただし、自己株式の取得は、会社法では剰余金の分配として整理されたため、配当等と同様に、買取金額は買取りの効力が生じた日の剰余金の分配可能額以下であることが必要となりますので、財源規制には注意が必要です。

効果

自己株式を会社自身が取得することで、株主を整理したり配当の負担を軽減したりすることができます。また、オーナー経営者としては、分散している株式を会社に戻すことにより実質的に株式の所有比率を上昇させて会社の経営権を集中できるという効果もあります。例えば、オーナー経営者の親族に分散している株式を、会社が買い取れば、必然的に経営者の保有する株式の比率が上がります。
一方、譲渡する側の株主にとっても、会社に売却することにより、株式を換金することができ、株式を相続により取得した場合には相続税の納税資金の確保ができるというメリットもあり、様々な場面で自己株式の取得を有効に活用することができます。

事業承継に有効な株主との合意による取得

株主総会の普通決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で可決)により、①取得する株 式の数、②株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額、③取得することができる期間について定め、取締役(取締役会設置会社においては取締役会) に授権します。この株主総会は、定時株主総会に限られておらず、臨時株主総会でも決議可能です。
その後、会社は、取締役(取締役会設置会社においては取締役会)の決議で買取りの都度、①取得する株式の数、②株式1株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法、③株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額、④株式の譲渡しの申込みの期日を定め、株主に通知します。通知を受けた株主で保有株式を会社に売却したい者は、会社に対して保有する株式の買取りを申し込むことになります。

特定の株主から自己株式を取得

既に売主が決まっている場合は、株主総会の特別決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上で可決)が必要となります。決議事項は、譲渡人となる株主のほか、あらかじめ譲渡人を指定せずに自己株式を取得する場合と同じで、それらを定めて取締役(取締役会設置会社においては取締役会)に授権します。この場合、当該売主である株主は、議決権を行使することはできません。そして、特定の株主からの取得の場合、他の株主は、自己を売主に加えるように株主総会の日の5日前までに、会社に請求することができます。これを売主追加請求権といい、会社は当該売主以外の株主に対し、そのような請求ができることを、株主総会の2週間前までにあらかじめ通知しておく必要があります。

発行会社における税務上の取扱い

会社が株主から自己株式を取得する場合、税務上の評価は時価によるものとされています。しかし、非上場会社の場合、自己株式の売主が経営者や経営者親族であるときに時価とかけ離れた取引金額が設定される場合があり、そのため税法上はこれらの場合に時価の計算方法を特別に定めています。
自己株式の取得は、発行会社にとっては資本取引となりますので、原則として課税関係は生じません。取得対価のうち資本金等の額に対応する部分については資本金等の額から減算し、利益積立金等の額に対応する部分については利益積立金額から減算します。ただし、買取価額が時価より低額であった場合、受贈益として課税される可能性があります。また、買取価額が時価より高額であった場合、時価を超える部分については寄附金として判断される可能性があります。


まとめ

今回の事例の解決策としては、「自己株式の合意取得」が考えられます。事例では、甲の兄(乙)の子(戊)が売主となりますので、特定の株主から自己株式を取得する場合に該当します。会社は、財源規制に抵触しない場合は、株主総会を開き、特別決議により①取得する株式の数、②株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額、③ 取得することができる期間、そして、④売主である戊を定めます。可決した場合は、取締役である甲が、①取得する株式の数、②株式1株を取得するのと引き換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法、③ 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額、④株式の譲渡しの申込みの期日を定め、株主に通知します。このとき、譲渡人である戊は乙の相続人となりますので、売主追加請求権を他の株主に与える必要はありません。これらの手続を経たのち、株式会社●●●は、戊から自己株式を買い取ることができます。今回は、相続発生前の対策として自己株式の合意取得について解説しました。
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