相続財産の中に、税金の還付金請求権、高額療養費及び高額介護サービス費の支給を受ける権利がある場合、管理・承継にあたってどのような点に注意すべきでしようか。今回は、税金の還付金請求権や高額療養費の支給を受ける権利の管理や承継について解説します。
還付金請求権の相続財産性
所得税や消費税のように、国税として納付された金額の超過納付額及び納期の開始前における国税としての納付額を国税の過誤納金といい、源泉徴収等による国税の過誤納金は、法令に別段の定めがある場合を除き、その国税を納付した源泉徴収義務者又は特別徴収義務者に還付されます。
還付金は、金銭債権ですので還付を受けるべき者につき相続があった場合において相続財産になります。この点、判例は、被相続人が所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基づき所得税、過少申告加算税及び延滞税を納付するとともにこれらの各処分の取消訴訟を提起していたところ、その係属中に被相続人が死亡したため、相続人が同訴訟を承継したという事案において、上記所得税等に係る過納金の還付請求権は、被相続人の相続財産を構成し、相続税の課税財産となると判示しています。
そして、相続人が2人以上あるときの還付金等は、以下の方法によって還付されます。
①還付金等について遺産の分割がされていないときは、その還付金等は、民法900条から903条までに規定する相続分に応じて按分して計算した額がそれぞれの相続人に還付されます。
②還付金等について遺産の分割がされているときは、その分割されたところによりそれぞれの相続人に還付されます。
還付金は、金銭債権ですので還付を受けるべき者につき相続があった場合において相続財産になります。この点、判例は、被相続人が所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基づき所得税、過少申告加算税及び延滞税を納付するとともにこれらの各処分の取消訴訟を提起していたところ、その係属中に被相続人が死亡したため、相続人が同訴訟を承継したという事案において、上記所得税等に係る過納金の還付請求権は、被相続人の相続財産を構成し、相続税の課税財産となると判示しています。
そして、相続人が2人以上あるときの還付金等は、以下の方法によって還付されます。
①還付金等について遺産の分割がされていないときは、その還付金等は、民法900条から903条までに規定する相続分に応じて按分して計算した額がそれぞれの相続人に還付されます。
②還付金等について遺産の分割がされているときは、その分割されたところによりそれぞれの相続人に還付されます。
税金の還付金請求権の調査方法
被相続人が事業を行っており予定納税をしているような場合や売上げが減少し赤字となった場合、被相続人は所得税や消費税の還付金請求権を有している可能性があります。そこで、相続人としては、被相続人が税金の還付金請求権を有しているか否かを調査するため、①被相続人の通帳を確認し、過去、所轄の税務署から還付金が振り込まれていないかを確認することが考えられます。
仮に、毎年のように税務署から還付金が振り込まれていることが確認できれば、被相続人が死亡した年にも税金の還付金が発生している可能性があると考えられます。また、②確定申告を行っている事業者には、税務署から郵便物が届くこともありますので、税務署からこのような郵便物が送られてきた場合には、税金の還付金請求権の有無を調査すべきです。そのほか、③被相続人の通帳に税理士事務所の名前が記帳されていたり、税理士事務所から被相続人宛の郵便物が届いたりする場合には、税金の還付金請求権が発生しないのか当該税理士事務所に確認することも考えられます。さらに、④被相続人の過年度の確定申告書を確認してみることも有用です。
仮に、毎年のように税務署から還付金が振り込まれていることが確認できれば、被相続人が死亡した年にも税金の還付金が発生している可能性があると考えられます。また、②確定申告を行っている事業者には、税務署から郵便物が届くこともありますので、税務署からこのような郵便物が送られてきた場合には、税金の還付金請求権の有無を調査すべきです。そのほか、③被相続人の通帳に税理士事務所の名前が記帳されていたり、税理士事務所から被相続人宛の郵便物が届いたりする場合には、税金の還付金請求権が発生しないのか当該税理士事務所に確認することも考えられます。さらに、④被相続人の過年度の確定申告書を確認してみることも有用です。
高額療養費や高額介護サーヒス費の支給を受ける権利の相続財産性
健康保険法その他の法令において、被相続人の高額療養費の還付請求権者に係る定めはありませんので、高額療養費の支給を受ける権利は、金銭債権として相続財産となります。
ここで、高額療養費制度とは、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で一定の上限額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度です。
なお、高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効期間は、診療月の翌月の1日から起算して2年とされていますので、留意が必要です。
また、高額介護サービス費とは、介護保険のサービスを利用したときは、原則としてサービス費用の1割を利用者が負担し、残りの9割は介護保険から支給されますが、同じ月に利用したサービスの1割の利用者負担の合計額が一定額を超えたときは、高額介護サービス費として超えた分を申請により利用者に払い戻しています。被相続人死亡前の高額介護サービス費の支給を受ける権利も金銭債権として相続財産になります。
なお、高額介護サービス費の支給を受ける権利の消滅時効期間は2年とされていますので、留意が必要です。
ここで、高額療養費制度とは、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で一定の上限額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度です。
なお、高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効期間は、診療月の翌月の1日から起算して2年とされていますので、留意が必要です。
また、高額介護サービス費とは、介護保険のサービスを利用したときは、原則としてサービス費用の1割を利用者が負担し、残りの9割は介護保険から支給されますが、同じ月に利用したサービスの1割の利用者負担の合計額が一定額を超えたときは、高額介護サービス費として超えた分を申請により利用者に払い戻しています。被相続人死亡前の高額介護サービス費の支給を受ける権利も金銭債権として相続財産になります。
なお、高額介護サービス費の支給を受ける権利の消滅時効期間は2年とされていますので、留意が必要です。
高額療養費や高額介護サービス費の支給を受ける権利の調査方法
被相続人が、高額療養費の支給を受ける権利を有しているかを調査するには、まず、①被相続人の通帳を確認し、過去に高額療養費の支払がされているかを確認することが考えられます。過去に高額療養費の支払がされている場合には、被相続人は高額療養費の支給を受ける権利を有している可能性が高いからです。また、②被相続人宛に高額療養費支給申請書が郵送されており、同書から被相続人が高額療養費の支給を受ける権利を有しているか判明することがあります。
また、被相続人が、高額介護サービス費の支給を受ける権利を有しているかを調査する上で、高額介護サービス費が支給される該当者に、高額介護サービス費支給申請書が送られ、一度申請すれば、以後はその都度申請する必要はなく、高額介護サービス費が支給される運用になっていますので、被相続人の通帳等の入金記録を確認すれば、従前から高額介護サービス費の支給を受けているか否かが分かります。
また、被相続人が、高額介護サービス費の支給を受ける権利を有しているかを調査する上で、高額介護サービス費が支給される該当者に、高額介護サービス費支給申請書が送られ、一度申請すれば、以後はその都度申請する必要はなく、高額介護サービス費が支給される運用になっていますので、被相続人の通帳等の入金記録を確認すれば、従前から高額介護サービス費の支給を受けているか否かが分かります。
税金の還付金の支払を受ける方法
被相続人の有する税金の還付金請求権の還付の方法は、上記のとおりです。各相続人が所得税の還付金を受け取る場合には、準確定申告の際に確定申告書付表を提出する必要があります。この確定申告書付表に、相続分ごとの還付金額や還付先の金融機関名等所定の相続人等に関する事項を記入します。また、準確定申告は原則として相続人全員が共同で行うこととなっていますので、確定申告書付表には相続人全員の押印が必要となります。
高額療養費の支給を受ける方法
相続人が高額療養費の支給を受ける場合には、健康保険高額療養費支給申請書に被相続人である被保険者との続柄が分かる戸籍全部事項証明書等を添付して支給の申請をします。
高額介護サービス費の支給を受ける方法
上記のとおり、被相続人が高額介護サービス費支給申請書を提出し、一度支給申請をすれば、以後はその都度申請する必要はないとされています。そのため。高額介護サービス費の支給について、承継手続きは不要です。
まとめ
相続財産の中に、税金の還付金請求権や高額療養費の支給を受ける権利がある場合、管理や承継は次の点を注意します。
(1)税金の還付金請求権は相続財産の対象となる。
(2)被相続人の通帳の確認、税務署からの郵便物の確認、税理士事務所への問合せ等により被相続人の税金の還付金請求権を確認する。
(3)高額療養費や高額介護サービス費の支給を受ける権利は相続財産となる。
被相続人の通帳の確認、高額療養費・高額介護サービス費に係る申請書等の郵便物の確認等により被相続人の高額療養費や高額介護サービス費の支給を受ける権利の有無を確認する。
(4)所得税の還付金を受け取る場合には、準確定申告に確定申告書付表を添付する。
(5)高額療養費の支給を受ける場合には、健康保険高額療養費支給申請書を提出する。
(6)高額介護サービス費の支給は一度支給申請すれば、その都度申請する必要はない。
今回は、相続財産の中に、税金の還付金請求権や高額療養費の支給を受ける権利の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください
(1)税金の還付金請求権は相続財産の対象となる。
(2)被相続人の通帳の確認、税務署からの郵便物の確認、税理士事務所への問合せ等により被相続人の税金の還付金請求権を確認する。
(3)高額療養費や高額介護サービス費の支給を受ける権利は相続財産となる。
被相続人の通帳の確認、高額療養費・高額介護サービス費に係る申請書等の郵便物の確認等により被相続人の高額療養費や高額介護サービス費の支給を受ける権利の有無を確認する。
(4)所得税の還付金を受け取る場合には、準確定申告に確定申告書付表を添付する。
(5)高額療養費の支給を受ける場合には、健康保険高額療養費支給申請書を提出する。
(6)高額介護サービス費の支給は一度支給申請すれば、その都度申請する必要はない。
今回は、相続財産の中に、税金の還付金請求権や高額療養費の支給を受ける権利の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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