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相続財産に税金債務があった場合はどのようにしたらよいのでしょうか?

相続財産の中に税金債務がある場合、この税金債務の管理・承継に当たってどのような点に注意すべきか解説します。

税金債務の有無と内容の確認

税金には、国が賦課・徴収する国税と、地方公共団体が賦課・徴収する地方税があり、地方税は、道府県税と市町村税に分かれています。相続の際に管理・承継が必要となる税金債務には、主に、国税である所得税・相続税・贈与税・消費税、地方税である住民税(道府県民税・市町村税)・事業税・固定資産税・都市計画税等があります。
被相続人が負担していた税金債務を調査する方法としては、次のような方法があります。
(1)相続人、受遺者、被相続人の生前に被相続人の介護をしていた者等、被相続人の生活状況をよく知る者に面会し、事情聴取します。
(2)被相続人宛に届いた郵便物、被相続人が保管していた書類を確認します。被相続人が所得税の予定納税義務者の場合には、所轄の税務署長から予定納税額の通知書が届いていることがあります。また、被相続人が税金債務を滞納していた場合には、税務署、市役所等から督促状が送付されていることが一般的です。このように、郵便物等の書類から税金債務の存在を知ることができます。
(3)被相続人が税務申告をしていた場合には、被相続人の税務申告書類の控えを確認することにより、税金債務の存在を確認できます。
被相続人が負担していた税金債務があることが確認できた場合、この税金債務の内容・金額等を、税金を課した税務署、市役所等に問い合わせて確認します。

主な税金ごとの調査・管理方法

所得税

所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた個人の所得に対して課される国税です。被相続人が確定申告をしていた場合には、被相続人の確定申告書類を確認することにより所得税額を確認できます。
また、被相続人が年の中途で死亡した場合、相続人が、1月1日から死亡日までに確定した被相続人の所得金額とこれに対する税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告し、納税しなければなりません。これを準確定申告といいます。

相続税

相続税は、相続又は遺贈によって取得した財産及び相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の価額の合計額(債務等の金額を控除し、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加算します。)が基礎控除額を超える場合に、その超える部分に対して課される国税です。被相続人が、死亡する前に他の者の相続人となっていた場合、相続税を納付していないことがあります。この場合、当該他の者の相続財産等を調査し、被相続人が負担する相続税額を確認する必要があります。

贈与税

贈与税は、毎年1月1日から12月31日までの間に個人から合計110万円を超える財産を贈与されたときに課される国税です。被相続人の預金の入金履歴等を調査し、被相続人が納税すべき贈与税がないか確認する必要があります。

消費税

消費税は、国内取引の場合において、非課税取引を除き、事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供について事業者に課される国税です。被相続人が個人事業者である場合には、消費税が課されることがありますので、被相続人の税務申告書類等を調査し、被相続人か納税すべき消費税がないか確認する必要があります。

住民税(道府県民税・市町村税)

住民税は、毎年1月1日の居住を基準として、前年の所得に対して課される地方税です。被相続人が亡くなった年の前年の被相続人の所得に対して課された住民税の一部が未納となっていることが一般的です。住民税額が決定すると毎年6月頃に納税通知書・納付書か送付されますので、納税通知書・納付書を確認することにより住民税額を確認できます。
なお、被相続人が1月2日以降に亡くなった場合、亡くなった年の前年の所得に対する住民税も課税されます。例えば、令和4年1月2日に亡くなった場合には、前年(この場合には、令和3年1月から12月まで)の所得に対する住民税(令和4年度の住民税)を納める必要があります。なお、納税通知書・納付書が送付されるのは亡くなった年(この例では令和4年)の6月頃になりますので、注意してください。

事業税

事業税は、個人が営む事業のうち、地方税等で定められた事業に対して課される地方税です。被相続人が個人事業者である場合には、事業税が課されることがありますので、被相続人の納税通知書や納付書の控え等を調査し、被相続人が納税すべき事業税がないか確認する必要があります。

固定資産税・都市計画税

固定資産税は、毎年1月1日現在の土地、家屋及び償却資産(以下、総称して「固定資産」といいます。)の所有者に対し、その固定資産の価格を基に算定される税額をその固定資産の所在する市町村に納める地方税です。
また、都市計画税は、都市計画事業又は土地区画整理事業に要する費用に充てるため、毎年1月1日現在の土地又は家屋の所有者に対し、都市計画区画として指定されたもののうち市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し、その価格を課税標準として、当該土地又は家屋の所有者に課される地方税です。
年度途中に所有者が死亡した場合でも、これらの納税通知書・納付書は当該所有者宛に送付されてきますので、この納税通知書・納付書を確認することにより固定資産税・都市計画税の額を確認できます。そして、相続登記が完了するまでの間、相続人全員が連帯して納税義務者となり、その固定資産税・都市計画税を納付する必要があります。
なお、1月1日より前に被相続人が亡くなった場合は、1月1日時点の所有者は既に法定相続人、受遺者ということになりますので、被相続人名義で納税通知書・納付書が送付されてきたとしても、被相続人の債務ではなく法定相続人、受遺者固有の債務となります。

税金債務を承継するか否かの検討

相続財産を調査した結果、税金債務等の消極財産が積極財産より多い場合、相続人は、相続の放棄や限定承認の手続をすることにより、債務の負担を回避することができますので、被相続人の積極財産と消極財産を踏まえ、相続するか否かを検討します。
そして、相続人が限定承認をした場合には、その相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の国税や地方税を納付する義務を承継することになります。
相続の放棄や限定承認の手続は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として3か月以内にしなければなりません。そのため、相続財産を早めに調査し、相続の放棄や限定承認の手続を行うかどうかを判断する必要があります。
また、相続の放棄や限定承認をした場合、そのことは税務署、市役所等には通知されませんので、自ら税務署、市役所等に対し相続の放棄や限定承認したことを伝える必要があります。

税金債務の承継

税金債務を承継する場合には、相続人は、被相続人に課されるべき、又はその被相続人が納付し、若しくは徴収されるべき税金(その滞納処分費を含みます。)を納める義務を承継します。
相続人が2人以上いる場合は、各共同相続人が承継する税金債務の額は、原則として、被相続人の税金債務の額を法定相続分により按分して計算した額となります。
ただし、同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税については、当該財産を取得した全ての者は、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯して納付する義務を負うことになります。
また、相続人は、被相続人の租税法上の地位をそのまま引き継ぎますので、承継した納税義務について、申告義務、質問検査受忍義務等の各種の義務を引き継ぐことになります。

相続人代表者の指定

相続人が2人以上いる場合は、共同相続人は、そのうちから税金債務に関する書類を受領する代表者を指定することができます。代表者を指定する共同相続人は、その旨を税務署長その他の行政機関の長や地方公共団体の長に届け出なければなりません。
納税申告書第1表付表1などにおいては書類を受領する相続人代表者指定に関する項目が設けられていることや、各地方公共団体で「相続人代表者指定(変更)届」の書式が用意されていることがありますので、これらを用いて届け出ることになります。地方公共団体の方から「相続人代表者指定(変更)届」を提出するよう求められることもあります。
この届出をすると、納税通知書等の書類が相続人代表者宛に送付されることになります。なお、この届出をしたからといって、相続する資産の所有権等が決定するわけではありません。
固定資産税・都市計画税の場合、この届出をした後に、遺産分割協議等により土地又は家屋を承継する者が決まり、土地又は家屋の相続登記がなされると、この届出の効力は消滅します。そして、翌年度から新たな登記上の所有者に納税通知書が送付されるようになります。

まとめ

相続財産の中に税金債務がある場合、この税金債務の管理・承継に当たっては、次の点を注意します。
(1)税金債務を負担しているか、負担している場合はその内容・金額等を確認する。
(2)税金の種類に応じて、被相続人が納税義務を負う税金債務を調査・管理する必要がある。
(3)税金債務を承継するか、相続の放棄や限定承認の手続をするかを検討する。
(4)相続人が2人以上いる場合、各共同相続人が承継する税金債務の額は、原則として、被相続人の税金債務の額を法定相続分により按分して計算した額となる。
(5)相続人が2人以上いる場合、相続人は、相続人代表者を指定することができる。
今回は、相続財産の中に税金債務がある場合、この税金債務の管理・承継について、解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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