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相続にあたり被相続人の借入金債務はどうしたらよいのでしょうか?

相続財産の中に借入金債務がある場合、この借入金債務の管理や承継にあたりどのような点に注意すべきでしようか。今回はこのことについて解説します。

借入金債務の存否の確認

被相続人が負担していた借入金債務があるかどうかについて、次のような方法で確認します。
①相続人、受遺者、被相続人の生前に被相続人の介護をしていた者等、被相続人の生活状況をよく知る者に面会し、事情聴取します。
②被相続人宛に届いた郵便物、被相続人が保管していた書類を確認します。請求書・督促状等の郵便物、金銭消費貸借契約書等の書類により、借入金債務の存在が分かることがあります。
③被相続人が保管していたカード明細、預金通帳等を確認します。カード明細、預金通帳等に、定期的に返済の記録がある場合に、借入金債務の存在が分かることか あります。
④金融機関・クレジットカード会社・消費者金融等の貸金業者からの借入金債務については、個人信用情報の開示を受けることにより、借入金債務の存在が分かることがあります。
⑤被相続人が不動産を所有していた場合には、不動産の全部事項証明書を取得して抵当権等の設定の有無を確認します。
⑥被相続人が税務申告をしていた場合には、被相続人の税務申告書類等を確認します。

借入金債務の内容・残高・返済履歴等の確認

被相続人が負担していた借入金債務の存在を確認できた場合、この借入金債務に関する金銭消費貸借契約書、借用書、領収書の控え、借入金残高証明書、被相続人が死亡するまでの返済履歴が分かる資料等の書類を収集し、借入金債務の内容・残高・返済履歴等を確認します。
このとき、過払金が発生するかどうかも確認します。過払金が発生する場合には、相続人が過払金返還請求をすることができます。相続財産を承継するか否かを判断する重要な考慮事由となりますので、慎重に確認してください。

消減時効の確認

借入金債務が時効によって消滅している可能性があるため、消滅時効期間を確認し借入金債務が令和2年3月31日以前に発生したものである場合は、原則として10年の消滅時効にかかります。ただし、借入金債務が商行為によって生じたものである場合は、この借入金債務は、原則として5年の消減時効にかかります。
借入金債務が令和2年4月1日以後に発生したものである場合は、改正された民法の消滅時効の規定が適用されるため、①債権者か権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は②権利を行使することができる時から10年間行使しないときのいずれか早い時期に、時効により消滅します。
消滅時効が完成している場合、相続人は、時効を援用する旨を通知する文書を配達証明付き内容証明で送付し、時効の援用の手続を行います。これにより、借入金債務の返済義務がなくなります。ただし、時効の援用の手続を行う場合には、仮に時効の援用が認められなかったとしても相続財産を処分したと判断される可能性があり、相続の放棄や限定承認ができなくなるおそれがありますので、時効の援用をするか否かを慎重に検討する必要があります。
また、消滅時効が完成しているにもかかわらず、債権者から督促がきたとき等に借入金債務を返済してしまった場合や、借入金債務を認めてしまった場合には、これにより債務の承認をしたことになってしまいますので注意が必要です。

借入金債務の評価

相続財産に債務があるときは、調停で遺産分割をする場合、遺留分を算定する場合、遺言執行で債務弁済をする場合などにおいて、借入金債務の評価が問題となります。借入金債務の評価は、相続開始時の債務額が評価額となりますが、具体的な評価方法については、相続税法上の取扱いが参考になります。なお、相続税法上は、債務は遺産総額から差し引くことができますが、債務控除の対象となる債務は、相続開始時に被相続人の債務として確実に存在している債務である必要があります。被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことはできません。

新借入金債務を承継するか否かの検討

相続財産を調査・確認した結果、借入金債務等の消極財産が積極財産より多い場合、相続人は、相続の放棄や限定承認の手続をすることにより、債務の負担を回避することができますので、被相続人の積極財産と消極財産を踏まえ、相続するか否かを検討します。
相続の放棄や限定承認の手続は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として3か月以内にしなければなりません。そのため、相続財産を早めに調査し、相続の放棄や限定承認の手続を行うかどうかを判断する必要があります。

借入金債務の承継

相続人は、被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に帰属した一切の権利義務を承継しますので、借入金債務のような消極財産も承継されます。
共同相続の場合、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します。そして、借入金債務のような可分債務は、相続開始によって法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人に承継されます。そのため、借入金債務は、遺産分割の対象にはなりません。しかし、住宅ローン等は、被相続人の積極財産である不動産の分割に当たり考慮を要するものであり、その負担者を定めることが相当と認められる場合もあります。この場合は、相続人全員の同意があり、かっ、債権者が承諾したときに限り、遺産分割と異なる同意の効果(免責的債務引受)として、特定の相続人のみに当該借入金債務を負担させることもあります。具体的には、相続人全員と債権者である金融機関等との間で免責的債務引受契約を締結する方法や、遺産分割調停の場合には、債権者である金融機関等を利害関係人として調停に参加させ、調停調書に免責的債務引受に関する条項を規定する方法などがあります。なお、相続人全員の同意があっても、審判手続に移行した場合には、債務は審判事項ではないことから、その負担者等について判断することはできない点について注意が必要です。

遺言による相続分の指定があった場合

被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、被相続人の遺言により共同相続人の相続分の指定がある場合であっても、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができます。ただし、その債権者が共同相続人の1人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、法定相続分に応じた権利の行使をすることはできなくなります。なお、民法902条の2は、民法改正により新設された条文です。同条本文は、遺言による相続債務についての相続分の指定は債権者の関与なくされたものであり、債権者に対してはその効力が及ばないとする判例を明文化したものであり、同条ただし書は、「相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し、各相続人に対し、指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げられない」として、債権者が承認した場合については上記の例外とする余地を認めた同判例の趣旨を踏まえて規定されたものです。

まとめ

被相続人の借入金債務の管理や承継するにあたり管理や承継は次の点を注意します。
(1)被相続人が借入金債務を負担していたかどうかを確認する。
(2)被相続人が借入金債務を負担していた場合には、借入金債務の内容・残高・返済履歴等を確認する。
(3)借入金債務が時効により消滅している場合があるため、消滅時効期間が経過していないかを確認する。
(4)遺産分割をする場合(相続債務を含める合意がある場合)、遺留分を計算する場合、遺言執行で債務弁済をする場合などには、借入金債務を評価する必要がある。
(5)借入金債務を承継するか、相続の放棄や限定承認の手続をするかを検討する。
(6)借入金債務は、相続開始によって法定相続分に応じて当然に分割され、各共同相続人に承継される。
(7)被相続人の遺言により共同相続人の相続分の指定があった場合であっても、債権者は、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができる。
今回は、借入金債務の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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