匿名組合契約を利用したファンドやプロジェクトの出資者が死亡した場合、管理や承継はどのような点に注意すればよいでしょうか。今回はこのことについて解説します。
匿名組合とは
匿名組合とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約です。なお、損失が生じたときに分担するかどうかについては、商法は特に定めておらず、匿名組合契約の内容によります。
実務上は、匿名組合契約を利用して複数の出資者で出資し、航空機や船舶などを購入し他者にリースしたり、研究開発を共同で行ったり、ーロ馬主や各種ファンドに用いられたりする例がみられます。
もし、被相続人が匿名組合を利用している可能性があるときは、匿名組合契約の有無を調査したり関係者にヒアリングしたりして、被相続人が匿名組合員であったかどうかを確認します。
実務上は、匿名組合契約を利用して複数の出資者で出資し、航空機や船舶などを購入し他者にリースしたり、研究開発を共同で行ったり、ーロ馬主や各種ファンドに用いられたりする例がみられます。
もし、被相続人が匿名組合を利用している可能性があるときは、匿名組合契約の有無を調査したり関係者にヒアリングしたりして、被相続人が匿名組合員であったかどうかを確認します。
匿名組合員の地位
匿名組合契約に係る出資は、「金銭その他の財産」(金銭のほか、動産、不動産、有価証券、債権、使用権その他財産的価値のあるもの)である必要があり、例えば、労務や信用の出資は認められません。
匿名組合員は、出資をするだけで、営業者の行う業務を執行し又はその者を代表する権限はありません。対外的な営業には何ら関与しないので、営業者の営業行為の結果、第三者に対して権利義務を有することはありません。
匿名組合契約が終了した場合には、営業者は匿名組合員にその出資の価額を返還しなければなりません。ただし、出資額が損失の分担により減少している場合には、その残額を返還すればよいとされています。
匿名組合員が死亡した場合、匿名組合契約に別段の定めがない限り、匿名組合契約は終了せず、匿名組合員の地位は相続人らに承継されることになります。
匿名組合員は、出資をするだけで、営業者の行う業務を執行し又はその者を代表する権限はありません。対外的な営業には何ら関与しないので、営業者の営業行為の結果、第三者に対して権利義務を有することはありません。
匿名組合契約が終了した場合には、営業者は匿名組合員にその出資の価額を返還しなければなりません。ただし、出資額が損失の分担により減少している場合には、その残額を返還すればよいとされています。
匿名組合員が死亡した場合、匿名組合契約に別段の定めがない限り、匿名組合契約は終了せず、匿名組合員の地位は相続人らに承継されることになります。
匿名組合の財産状況の調査等
相続人は匿名組合員の地位を承継しますが、匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、貸借対照表が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求、貸借対照表が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録されている事項を法務省令の定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができます。また、匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の業務及び財産の状況の検査をすることができ、さらに、重要な事由があるときは、いつでも、裁判所の許可を得て、営業者の業務及び財産の状況を検査することができます。
匿名組合員の地位の評価の方法
匿名組合員の地位の相続税法上の評価方法については、法令及び通達による定めはありませんが、東京国税不服審判所の裁決例等により、次のように取り扱われています。
まず、営業者はその各営業年度末において、匿名組合員に対し、匿名組合の営業により生じた利益を分配すべき義務を負い、匿名組合員は営業者に対し、匿名組合の営業から生ずる利益の分配を受ける権利を持ちます。
また、匿名組合契約が終了した場合、営業者は匿名組合員に匿名組合出資の価額を返還する必要があり、営業者はその財産状態を計算して、匿名組合員に対しその出資の価額を返還することになります。
したがって、匿名組合契約継続中に匿名組合員が営業者に対して有する権利は、営業者に対する利益配当請求権と匿名組合契約終了時における出資金返還請求権が一体となった権利と認めることができます。
その価額は出資金を含めた匿名組合契約に基づく営業者の全ての財産及び債務を対象として、課税時期において、その匿名組合契約が終了した場合に匿名組合員が分相続配を受けることができる清算金の額に相当する金額と解するのが相当であるとされています。
そして、この清算金の額を算出するに当たっては、財産評価基本通達を準用し、課税時期における営業者のその匿名組合事業に係る全ての財産の相続税法上の評価額から、同事業に係る全ての負債の金額を差し引いて計算すべきといえます。
まず、営業者はその各営業年度末において、匿名組合員に対し、匿名組合の営業により生じた利益を分配すべき義務を負い、匿名組合員は営業者に対し、匿名組合の営業から生ずる利益の分配を受ける権利を持ちます。
また、匿名組合契約が終了した場合、営業者は匿名組合員に匿名組合出資の価額を返還する必要があり、営業者はその財産状態を計算して、匿名組合員に対しその出資の価額を返還することになります。
したがって、匿名組合契約継続中に匿名組合員が営業者に対して有する権利は、営業者に対する利益配当請求権と匿名組合契約終了時における出資金返還請求権が一体となった権利と認めることができます。
その価額は出資金を含めた匿名組合契約に基づく営業者の全ての財産及び債務を対象として、課税時期において、その匿名組合契約が終了した場合に匿名組合員が分相続配を受けることができる清算金の額に相当する金額と解するのが相当であるとされています。
そして、この清算金の額を算出するに当たっては、財産評価基本通達を準用し、課税時期における営業者のその匿名組合事業に係る全ての財産の相続税法上の評価額から、同事業に係る全ての負債の金額を差し引いて計算すべきといえます。
承継の対象となるか否か
匿名組合員の地位は相続の対象となる以上、遺言や遺産分割の対象になります。
したがって、遺言や遺産分割協議の結果に基づき匿名組合員の地位を相続する者に、当該地位を承継させる必要があります。承継の具体的手続は、契約の定めによりますが、相続により承継した場合、その事実を営業者等に届け出る必要がある旨契約で定めているケースが一般的です。また、組合員の死亡を契約終了事由とするものや 契約の解除を認める定めを置くケースもありますので、契約書をよく確認してください。
したがって、遺言や遺産分割協議の結果に基づき匿名組合員の地位を相続する者に、当該地位を承継させる必要があります。承継の具体的手続は、契約の定めによりますが、相続により承継した場合、その事実を営業者等に届け出る必要がある旨契約で定めているケースが一般的です。また、組合員の死亡を契約終了事由とするものや 契約の解除を認める定めを置くケースもありますので、契約書をよく確認してください。
まとめ
匿名組合契約を利用したファンドやプロジェクトの出資者が死亡した場合には、次の点に注意しましょう。
(1)匿名組合を利用している可能性があるときは、匿名組合契約の有無を確認する。
(2)匿名組合契約に別段の定めがない限り、匿名組合員の地位は、死亡により相続人に承継される。
(3)匿名組合員は、営業者の業務及び財産の状況の検査等をすることができる。
(4)匿名組合員の地位の評価については、匿名組合契約が終了した場合に匿名組合員が分配を受けることができる清篁金の額に相当する金額と解される。
(5)匿名組合契約の内容に従い具体的な承継手続をとる匿名組合員の地位は遺言や遺産分割の対象になる。
今回は、匿名組合員の地位の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
具体的なご相談をご検討の方はこちらをご覧ください
(1)匿名組合を利用している可能性があるときは、匿名組合契約の有無を確認する。
(2)匿名組合契約に別段の定めがない限り、匿名組合員の地位は、死亡により相続人に承継される。
(3)匿名組合員は、営業者の業務及び財産の状況の検査等をすることができる。
(4)匿名組合員の地位の評価については、匿名組合契約が終了した場合に匿名組合員が分配を受けることができる清篁金の額に相当する金額と解される。
(5)匿名組合契約の内容に従い具体的な承継手続をとる匿名組合員の地位は遺言や遺産分割の対象になる。
今回は、匿名組合員の地位の管理や承継について解説しました。わからない点がありましたら専門家である司法書士に相談されることをお勧めします。当事務所は、相続に関する相談や手続について多数の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
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